「I’m donut ? (アイムドーナツ ?)」、「AMAM DACOTAN(アマムダコタン)」のオーナーシェフが語る、表参道・原宿と行列の理由
22歳の平子シェフと『CHUM』
「アイムドーナツ ?」のロゴやショッパー、持ち帰り用のボックスは、ポップでありながらも直感的でミニマルなデザイン性とのバランスが絶妙だ。その点も表参道・原宿エリアには非常に親和性が高いと言える。
「パッケージも全部オリジナルでデザインしています。新しく出るフリーザーバッグも完全にオリジナルですし、制服もパターンから作っています。自分がファッションが好き、というのはもちろんそうなんですけど、やっぱり表参道・原宿はファッションの街。感度の高い人に来てもらいたいというのはありました。なので見せ方にはかなりこだわっています」
鮮度が命という生ドーナツのために開発された新しいフリーザーバッグ。一目で分かるロゴデザインにポップな素材使いとカラーリングが絶妙だ。主張しつつも自然と日常に溶け込むアイテムデザインに、平子シェフのセンスがひかる。
ドーナツやパンのおいしさはもちろん、革新的な商品と、シンプルに訴求するデザイン。言うなればスイーツ界のAppleではないか。平子シェフは言わば小麦粉を操るスティーブ・ジョブズ。そう言えば、ジョブズも魔法の杖を振るという、そんな逸話が語り継がれていたような。さておき、かつて表参道・原宿で働いていたことがある平子シェフに当時の思い出を聞いてみた。
「タレントのちはるさんがオーナーとして経営する『CHUM(チャム)』*という店が当時、青山にあったんですけど、そこで働いていました。」
*2005年に青山からJR目黒駅近くに「CHUM APARTMENT(チャム アパートメント)」として移転。2022年に武蔵小山に移転し、2023年1周年を迎えた。
『CHUM』で働くことになったのも平子シェフの一目惚れからだったという。知人からカフェが可愛いと聞いて、足を運んだ際、店内の可愛い世界観を見て働きたいと思い飛び込んだ。そこで、飲食を通じて間近で見る最先端のファッションやカルチャーを享受し、自らの感性を育んでいく。当時の平子シェフに原宿の街はどう映っていたのだろうか。
「振り返ると、当時の原宿は若い子達が古着だったりファッションをもっと楽しんでいたかな。表参道には、今よりももう少しだけ街のパン屋さんだったり、八百屋さん的なローカルのエッセンスが混在していてたような気がしますね。だけど20年前とはいえ、やっぱり今と同じようにファッションの街としての存在感がありました。」
そんな風にオモハラの街を眺めながら働いていた『CHUM』は業界の方を中心にクリエイティブな方が多く訪れる店でもあったそうだ。そこでの毎日はきっと刺激的だったに違いない。特に印象深い出来事はどんなものだったのだろう。
「グリーンアーティストの川本諭さんと仲良くなったんですね。いろいろと当時の表参道・原宿のイケてる物事を教えてもらっていましたね」
川本諭さんは『GREEN FINGERS』というプラントアートプロジェクトを行い、ニューヨークやミラノにもショップを開くグリーンアーティストだ。現在は拠点をミラノに置いているそうだが、平子シェフとの交流は今でも続いているという。2005年当時の、オモハラのイケてる場所とは一体どこだった?
「カフェの走りと言われる、山本宇一さんのLOTUS(ロータス)に連れて行ってもらったことは、印象的でした。川本さんのビッグスクーターの後ろに乗せてもらってつれて行ってもらったんですが、22歳だった自分にとってはとても刺激的でした。その流れから行くカフェの、作り込まれた最先端の空間は、なおさらカッコよく感じましたよ!東京って洒落てるなー!と思いました(笑)」
現在も人気のカフェ「LOTUS」は当時最先端のスポットとして注目を集めていた。今もなおクールな東京を凝縮した場所だ。
(編集部撮影)
時を経て、表参道・原宿に店舗を構える平子シェフが今、街を眺めて思うことを聞いてみた。
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