「I’m donut ? (アイムドーナツ ?)」、「AMAM DACOTAN(アマムダコタン)」のオーナーシェフが語る、表参道・原宿と行列の理由
大ヒットの“生ドーナツ”「本当は行列をつくりたくない」
表参道・原宿に「アイムドーナツ ?」が2店舗できたことで、このエリアらしい高品質で趣向を凝らしたドーナツや新しいドーナツショップも注目を集め、表参道・原宿では“ドーナツブーム”といった様相を呈しているのも事実。一世を風靡した「アマムダコタン」のマリトッツォ*に続き、「アイムドーナツ ?」はオモハラドーナツブームに拍車をかけたと言っていいだろう。当の本人はどう思っているのか?
*表参道店に先駆けて、福岡・六本松にある「アマムダコタン」では2020年に豊富な種類のマリトッツォを開発し、販売した。2021年の「マリトッツォ」ブームの震源と言われている。
「もともとおいしいドーナツを作ろうと言う気は全然なかったんです。でもウチのパン生地のおいしさには自信があったので、いつか揚げてみたいと思っていました。そうしてできたのが看板商品の“生ドーナツ”です。中にカスタードが入っているかのような食感は他に形容しがたい。火はちゃんと入っているけど、あえて“生”と名付けました」
計画的に先を見据えて何かを実現する、というよりはその時の直感と好奇心で決断して行動に移すことが多いと、ヒラコンシェの運営を振り返る。それは自身が作るものに絶対的な自信と自負があるからこそだ。人は、そういうものに惹かれる。
とろけながら、ふんわり、しゅわっと溶けるような、なんとも言えない揚げたての“生ドーナツ”は今まで体験したことがない食感を味わえる。そんな「アイムドーナツ ?」でしか食べられないドーナツを求めて、人々は行列を作る。青山通りだけでも「アマムダコタン表参道」、「アイムドーナツ ? 表参道」、「アイムドーナツ ? 渋谷」と3つの行列を作っており通るたびに興味を引くが、これも平子シェフの作戦なのだろうか。
「よくそう言われるんですけど、本当は行列を作りたくないんですよ(笑)。だけどオペレーションの都合上、並んでいただくほかないんです。レストランのように番号札で待たせる営業スタイルでは成立しません。より多くの人にいちばんおいしい状態で届けるための苦肉の策で、できるだけ行列に並んでいただく時間を短縮する努力をしています」
実際「アイムドーナツ ? 表参道」では事前に注文表への記入をすることで、スムーズに商品の注文と提供を可能にしている。さらに、メニュー数を限定し、イートインスペースを設けたJR原宿駅前の「アイムドーナツ ? 原宿」は特に提供が早いという。並んでいるお客さんはもちろん、周辺に迷惑をかけないような施策を試行錯誤している。
しばらくは表参道・原宿エリアへの出店はひと段落だと語る平子シェフ。2023年10月5日には、世田谷区桜新町にアマムダコタンの姉妹店「dacō」を開店したが、今後は果たして。
「アマムダコタン表参道」をオープン後、「アイムドーナツ ?」として最初の店舗である「アイムドーナツ ? 中目黒」を翌年開店。往年の名作「ドラゴンクエスト」に登場する僧侶をモチーフにした制服が話題となった。
前述の通り、おしゃれな見た目も平子シェフの特徴であり、その感性はダイレクトに「アイムドーナツ ?」の世界観にも落とし込まれている。そのルーツに少なからず表参道・原宿で過ごしたことは影響しているのではないだろうか。せっかくの機会、時代を遡って振り返ってもらおう。