受け継がれる「同潤会青山アパートメント」の歴史と表参道の原風景
メイン画像協力:松岡 伸一(株式会社アット/AT WORK STUDIO 代表)
外壁や屋上に緑が敷かれ、参道沿いのケヤキ並木とともに建ち並ぶ表参道ヒルズ。街を象徴する通りの名を冠するこの複合施設は、森ビルが運営する“ヒルズ”においても六本木ヒルズのようにそびえたつことはない。並木の高さを配慮して地上3階建ての低層を保ち、自然との調和を意識してつくられた。
そんな表参道ヒルズの東端には、外壁に蔦の絡まった特徴的な建物がある。カフェやショップなどが入った、本館のモダンな印象と一線を画すたたずまいの棟「表参道ヒルズ同潤館」。これはかつてこの場所にあった同潤会青山アパートメントの名称が受け継がれている。
ケヤキ並木と調和するように建ち並ぶ、表参道ヒルズと表参道ヒルズ同潤館。同潤館は本館とは明確に趣が違うことが分かる。
同潤会青山アパートメント。名前に馴染みがない人も多いかもしれない。しかし、その建物は、表参道ヒルズが生まれる以前の表参道を象徴していた。
緑豊かなケヤキと並ぶ、コンクリート造りのレトロな外観。築年数80年を超える歴史ある建造物にはツタや木が茂り、1990年代にはハイセンスなブティックやギャラリーが入居していた。
現在の表参道ヒルズと同様に、ケヤキ並木とともに建ち並んでいた旧同潤会青山アパートメント(2002年)。
写真:裏辺研究所 日本の旅 同潤会青山アパート~東京都渋谷区〜
歴史を感じさせる姿は街の顔ともいえる象徴的なルックスで、表参道の景観を彩っていた。この建物が存在していた当時、表参道といえば「同潤会青山アパートメント」の名を口にする人も多く、多くの人たちに愛される存在だった。表参道の中心地ということもあり、出店するテナントからも憧れの地として名高かったほどだ。
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