裏原宿のDIY精神、夜の社交場のゆくえは?地価高騰とカルチャー衰退のジレンマ
(2021/08/23)
寄稿者:稲葉総一郎
メイン画像協力:Club&Disco ミュージアム
パワーのある土地は必ず地価が上がる。ロンドン、サンフランシスコ、アムステルダム、ベルリンといった都市のここ10年の状況を見れば一目瞭然だ。しかし、1人部屋に月3,500ドルの家賃をはらえる若者がどれぐらいいるだろうか?都市の魅力の高まりと比例するように、生活コストも上昇する。結果的に若者は住めなくなり、どこか他の街を探す。
事実、海外のスタートアップ企業や若手アーティスト達の状況を見ても、ジョージアのトビリシなど、物価が安く移民の受け入れにも寛容な都市に新天地を見つけているようだ。
スタートアップやナイトクラブが盛り上がりを見せるジョージアのトビリシ
実はこの流れを当時の表参道や原宿は一度経験している。そもそもなぜ「裏原系」というブームが出現したのか?いくつか要因はあるが、ひとつは原宿のメインエリアの家賃が高かったせいだと言える。当時のDCブランドや若手クリエイターが裏原に事務所を構えていたのは、裏原という土地を流行させようと狙ったわけではない。単にメインエリアより裏原のほうが家賃が安かったからだ。そして結果的にはその場所に集まった者たちから独自のカルチャーが生まれた。しかし、裏原に人気が出てくると同時に、家賃高騰や大手資本の参入が進み、街の持つ空気は変化していった。街の洗練度が全体的にあがると同時に、アナーキーな酔狂、没頭を求める人種が集まらなくなる。これは都市成熟のプロセスの一部である。
裏原ブーム勃発から時が経ち、今では大手資本の参入も進んだ「成熟した街」となっている裏原エリア