ラフォーレ原宿が聖地である理由(後編) 愛あるセール、歴代の攻めた広告、カルチャー…止まらない発信基地
この記事では、ラフォーレ原宿(以下、親しみを込めてラフォーレと表記)を特集し、様々な角度からその魅力を考察する。前編ではファッションの街・原宿の歴史と、そこでラフォーレが担ってきた役割に焦点を当てた。後編では、ラフォーレの開催する多様なイベントや、ジャンルを横断した情報発信に注目してみよう。
第4章:愛あるセール! 「ファッションラバーズファースト」の想い
ラフォーレと言えば、グランバザール。オープン翌年の1979年にはすでに第1回が開催され、以来ラフォーレはグランバザールと共に歩んで来たと言えるだろう。そのキャッチコピーは、“日本一遅く始まる、日本一お得な” セールだ。
グランバザールは、夏・冬の年2回開催される大バーゲンセール。地方や海外からも買い物客が集まり、初日のオープン前には数千人規模の行列ができる。過去には、入店待ちの行列が原宿駅近くまで続いたこともあるという。
なぜそんなにも多くの人が行列を作るのかというと、まずは期間のことが挙げられる。グランバザールは他のショッピング施設のバーゲンよりも2〜3週間遅く始まり、しかも、5日間という短期決戦だ。
とはいえ早朝からなぜこんなに……?と思ったら、開店前に並んだ人限定の「朝チケ」なる割引券があるらしい。納得!
そして何より……安い。値引き価格のうえに、会期中はタイムセールや学割、サンプル大放出といった更なるセール企画がどんどん実施される。中でもグランバザール恒例と言われる「爆発タイム」は時間限定で超ロープライスを実現するもので、その最大割引率は、なんと驚異の90%オフ! ネーミングに偽りのない爆発ぶりだ。
何重にも用意された仕掛けに、買い物客のテンションは心地よく酔ってヒートアップ。かくして工夫と戦略に満ちた祭典・グランバザールは、行列も含めて原宿の風物詩となった。
なお、ラフォーレの40周年を記念した鼎談企画において、原宿育ちのファッションプロデューサー・松本ルキ氏は、グランバザールについてこう語っている。
「グランバザール期間は全国で一番最後になるよう設定されています。売れ残りが多く集まるのではなく、そのシーズンに一番多く売れて一番多くつくった商品がラフォーレに集まってくる。それを少ないお小遣いを握りしめた全国の高校生をはじめ、様々なお客様が買いに来るわけです。(中略)うれしそうな笑顔で帰っていった若者たちが、そのときの喜びを地元に持ち帰ってずっと大切にしながら、やがて大人になっていく。そうやって、ラフォーレ原宿とともに時代がつくられてきたのです。」
ラフォーレが応援する “若い世代” とは、才能ある若き生産者のことだけでなく、ファッションへの愛ある若き消費者のことでもあるのだろう。ラフォーレの基本方針の中にある “ファッションラバーズファースト” というキーワードは、なるほどすごくしっくり来る。
グランバザールのタイムセールでもみくちゃになっていた遠いあの日、自分もラフォーレから応援されていたのか……そう考えると感慨深い。眩しかった70%オフの値札は、「もっとファッションでワクワクしよう!」という館からのメッセージだったのかもしれない。