ミステリアスな動物たちと“目線合わせ”
神宮前2丁目の「MAHO KUBOTA GALLERY」にて、アーティスト・Atsushi Kaga(加賀温)の個展「眠っている猫に触っているとあなたがそこにいるのがわかるような気がするのです。」が開催中。期間は、2024年4月18日(木)〜6月1日(土)まで。Kagaにとって、当ギャラリーでは3回目の展示となる。
Atsushi Kagaは、1978年東京生まれ。19歳でアイルランドに渡り、ダブリンのアート&デザイン国立大学で学ぶ。アイルランド文化を連想させる風刺的な物語性と、緩やかで個性的なキャラクターを描く作品が特徴的だ。
本展では、6枚のキャンバスに描かれた連作のペインティングが「コの字型」に配置され、まるで和室のようなひとつの世界観を創り出す。天然木の柱と畳で構成された空間展示は、江戸時代の絵師・伊藤若冲の障壁画「葡萄小禽図床貼付」からインスピレーションを得たもの。この障壁画が、本来低い目線で鑑賞されていたであろうことから、本展の新作も、絵画の重心を下げるためキャンバス上の要素の強弱や配置を調整しているのだとか。
ちなみに、この低い目線位置はKagaが「小津目線」と呼び、日本を代表する映画監督・小津安二郎のカメラワークを意識したものだという。「鑑賞者の目線を下げ、伝統様式である”居間”と共にあるアート作品を作ることで、日本絵画の歴史の観点から鑑賞されるのでは」との、Kagaの試みが反映されている。
絵画全体には、春から夏にかけての伸びやかな風景が描かれる。中央には、”deadpan(無表情)”のウサギのキャラクター「うさっち」、左側のキャンバスには近年のKagaの作品に何度も登場するミステリアスな狐など、緩やかなフォルムながらどこか物悲しい表情の生き物たちが登場。それぞれの動物や植物がゆったりと共存した空間は、親密さや悲しみを含んだ繊細な複数の物語が流れているような感覚を覚える。
タイトルからも、寂しさと前を向く姿勢の両方が伝わってくる今回の展示。神宮前2丁目の閑静なエリアに位置するギャラリーでKagaの最新作に触れ、そこに内在するストーリーを複数の視点からゆっくり読み解いてみて。
■概要
眠っている猫に触っているとあなたがそこにいるのがわかるような気がするのです。
開催期間:2024年4月18日(木)〜6月1日(土)
開催場所:MAHO KUBOTA GALLERY
住所:東京都渋谷区神宮前2-4-7
電話番号:03-6434-7716
営業時間:12:00〜19:00
定休日:日曜・月曜・祝日
>>EDITOR’S VOICE
展示会場から徒歩6分。Jinny Street Galleryでは、オランダの写真家マーン・リンブルグによる写真展示「Without Us(人々の残像)」が開催中。こちらの展示、なんと神宮前2丁目に位置する42個の街灯が展示ケースなんです。お散歩日和のこの季節、夜の鑑賞もオススメです。
Text:Rumi Hasegawa
※敬称略
INFORMATION
神宮前・MAHO KUBOTA GALLERYにてAtsushi Kagaの個展が開催 ギャラリーに「和室」が出現
- 住所
- 東京都渋谷区神宮前2-4-7
- 電話
- 03-6434-7716
- 営業時間
- 12:00〜19:00
- 定休日
- 日曜・月曜・祝日
- 開催期間
- 2024年4月18日(木)〜6月1日(土)
- 長谷川瑠美
外部ライター