PRADA 青山店 & MIU MIU 青山店(HdM)/ 対話する建築姉妹。色気のグローバリズム
パーティーに誘われた夜の服選びというのはやはり、どうにも疲弊するものがある。まず誰かとかぶってしまったら一巻の終わりだ。他のメンバーの普段のコーディネートを一人ひとり丁寧に思い浮かべながら、それを巧妙に外していくように服を選び取っていく。かといって、かぶらないだけでは十分ではない。それがあまりに日常の自分とかけ離れたものであれば、服に着せられてしまっていることがすぐに相手に伝わってしまう。背伸びをしていることがバレることほど恥ずかしいことはない。自分らしさが自然ににじみ出るようでなければならないのだ。やや乱暴な考え方ではあるが、ファッションブランドの激戦区で店舗デザインを任された建築家は、実は、パーティーの服選びとまったく同じ問題と対峙している。他のブランドと世界観がかぶらないようにすること。それでいてブランドの哲学はしっかりと守り抜くこと。そして、何よりモテる(人目を引く)ことだ。表参道はそんな建築家たちの死闘の結晶と言えるだろう。
ヘルツォーク&ド・ムーロン(以下:HdM)は、スイス・バーゼル出身の2人組の建築家ユニット。「鳥の巣」と言われた北京オリンピックのスタジアムをはじめ、都市的視点を持った造形力と素材の革新的な使い方において、世界で頭ひとつ抜きん出た巨匠建築家集団である。2003年。南青山のみゆき通りに、彼らが設計した「PRADA青山店」が立ち上がった。
ヘルツォーク&ド・ムーロン設計の「PRADA 青山店」
そして12年の時を経た2015年。通りを挟んだ斜向かいに、MIU MIUの店舗設計を任されることになる。自らがかつてデザインした建築が、今度は自分のライバル(都市のコンテクスト)となって再び目の前に現れたのだ。HdMは、建築家にとって極めて稀有なこのケースに対して、西洋と東洋の色気の違いに目を向けることに解法の突破口を見出した。
Text:Taro Kagami