
はいいろオオカミ+花屋 西別府商店による冬のブーケ
表参道・原宿には花が似合う。有名店から個性あふれるお花屋さんが点在しているためか、花束を持って街を歩く人の姿も珍しくない。その手にブーケがあるだけで、いつも歩く見慣れた景色も違って見える。表参道・原宿という街のフレームが一層、花の魅力を際立たせてくれるような気もする。気持ちを咲かせる、花と街の風景。
手のひらに広がる森
Made by はいいろオオカミ + 花屋 西別府商店
表参道/キャットストリート付近
テーマ:人の意思が介在しない、小さな森
使った花:パフィオ(ラン)、バンクシア、人参、針葉樹、ハケア、ユーカリ、ビブルナムティナス
「冬にピッタリな針葉樹を中心に、日本だけでなくヨーロッパやオーストラリアの植物もミックスして、束ねました。見もの枝もの、いくつかありますが、今回は冬のブーケということで、9月〜12月に出回る植物を主に使っています。
ブーケの中に森が広がるような、そこには人の意思が介在しない方がいいですね。できるだけ植物たちの自然なかたちのままブーケにしています。多様な植物が入り混じる冬の森の景色を、手のひらの中に想像してもらえると嬉しいですね。
撮影に協力してくれたお店:はいいろオオカミ + 花屋 西別府商店
南青山の住宅街の一角。建築士として働いていた佐藤克耶さんが2011年に古道具屋『はいいろオオカミ』をオープン。2014年に近所の花屋で働いていた西別府さんが加わった。古道具屋と生花という「古」と「生」が共存する一風変わったショップ。実際に現地まで赴き古道具を買い付け、花は海外から輸入されているネイティブフラワーや原種に近い生花を中心にセレクトしている。レトロなマンションの一室、扉を開けると古道具と花が並び、良い香りが漂う。洗練された野生を肌で感じ、時間がゆっくりと流れる、安らぎを感じる店。
ブーケができるまで:Behind the scene
西別府商店店主・西別府 久幸さんが選んだ花を無造作に束ねていく。花と言っても木や植物といった向きが近い。それも世界各国の原生種=ワイルドフラワーと呼ばれる品種が主になる。市場で買うものがほとんどだが、時には自分たちで山に入り、花材を集める。
取材の最中、山で収穫したヤドリギ(宿り木)を予約して、引き取りに来たお客さんがいた。半寄生植物で高い樹木の上に広がる植物なので、地元の人はとってくれると喜ぶのだという。木の上にのぼって宿木を集めてくれたのは山の木々の特殊な手入れをする「空師」と呼ばれる人たちだったり、青山でそんな話を聞ける場所はここ以外、そうそうないのではないか。
さて、ブーケができあがった。ワイルドな人参と、おおきなサヤ(豆の)がアクセント。小さな森のようなブーケは、葉が落ち切る前の、シックな茶色い葉を揺らす欅並木にも似合いそう。実は欅並木がいちばん色気があるのは、この季節なのかもと個人的に最近思う。
ブーケを制作してくれたフローリスト:Florist introduction
西別府 久幸(にしべっぷ ひさゆき):鹿児島県出身。ファッションを志して上京し、スタイリストとして修行した後、花に魅せられて花の世界へ。2014年2月から独立。南青山のマンションの一角で佐藤克耶氏のはいいろオオカミとともに、西別府商店の店主として店に立つとともに、植物造形家として花に限らず、木の根やキノコ、古木など、独自の見立てで世界観を表現するほか、自身の作品展を日本各地でも開催している。
■はいいろオオカミ + 花屋 西別府商店
住所:東京都港区南青山3-15-2 マンション南青山102
電話:03-3478-5073
営業時間 11:00〜20:00(日曜日 19:00まで)
定休日 火曜日
URL:はいいろオオカミ + 花屋 西別府商店
Text & Photo:Tomohisa Mochizuki