立夏の季節、芍薬の花束を
表参道・原宿には花が似合う。有名店から個性あふれるお花屋さんが点在しているためか、花束を持って街を歩く人の姿も珍しくない。その手にブーケがあるだけで、いつも歩く見慣れた景色も違って見える。一方で、表参道・原宿という街のフレームが一層、花の魅力を際立たせてくれるような気がする。花束と表参道・原宿の景色を重ねて、贈る誰かを想像したり飾る場所を考えたり。気持ちを咲かせる、花と街の風景。
芍薬(しゃくやく)だけを束ねた初夏のブーケ
Made by THE LITTLE SHOP OF FLOWERS
at ラルフローレン表参道付近
テーマ:今年はちょっと早い芍薬のブーケ
使った花:芍薬(富士、コーラルチャーム、小島の輝)
「ちょっと時期が例年より早いんだけど、芍薬が出始めたので芍薬だけのブーケにしました。いろいろな種類や咲き方があって束ねると個性的で、豪華な雰囲気になりますよ。
薄いピンクの八重咲きの花が「富士」で市場から仕入れたもの、コーラルピンクの「コーラルチャーム」と濃いピンクで八重咲きの「小島の輝」が足立区の花農家の内田さんが育てた芍薬です。」
撮影に協力してくれたお店:THE LITTLE SHOP OF FLOWERS
明治神宮前駅の近く、裏手の小道から緑溢れる庭先に現れる小さな花小屋。“リトルさん”の愛称で親しまれる同業者を始め、ファッション、アートなどさまざまな分野にファンを持つ原宿・神宮前を代表するフローリストである。店名の由来は映画「THE LITTLE SHOP OF HORRORS」(1986)から。レストラン「eatrip」と隣接する軒先は季節とともにその表情を変えるのが魅力。夏の花々とともに、今の時期は珍しいかたちの山野草も多く取り扱う。新鮮な花の良い香りが原宿の喧騒を忘れさせてくれるフラワーショップだ。
ブーケができるまで:Behind the scenes
ブーケを作りながら、THE LITTLE SHOP OF FLOWERSのオーナー・壱岐ゆかりさんは花について毎回いろいろなことを教えてくれる。今回はブーケに使われている、芍薬の花農家さんについて。
23区や周辺地域で伝統的に栽培されていた野菜を「江戸野菜」というらしいのだが、足立区でその江戸野菜のひとつである千住ネギを栽培している内田(内田宏之)さんという方が畑で育てた芍薬なのだそうだ。もともとが花農家で、その合間に千住ネギを栽培していると言った方が正しいのかもしれない。
「今年は母の日が遅いから、咲いてしまっているものが多いかもしれないけど、タイミングが合えば母の日にも良いかも」
と、まだつぼんでいる芍薬も入れてくれた。初夏の日差しに大輪の花が美しく映える、芍薬のブーケが出来上がった。
花を決めたら、そこからテキパキと束ねていく所作が美しい壱岐さん。「立てば芍薬」と、女性の美しさをその姿に例えた言葉があるけれど、凛とした芯のある芍薬の花は、壱岐さんにも通じる部分があると思った。
ブーケを制作してくれたフローリスト:Florist introduction
壱岐ゆかり(いき ゆかり):インテリアショップ、ファッションプレスなどを経て、2010年に週末だけのフラワーショップを代々木上原にオープン。2013年に現在の原宿・神宮前に移転。2016年にZINE『THE LITTLE SHOP OF FLOWERS』を自費出版し、共著に軒を連ねるeatrip主宰・野村友里との『TASTY OF LIFE』がある。2人は2021年に古来より伝わる、大麻布にフォーカスした展覧会「Life is beautiful : 衣・食植・住 “植物が命をまもる衣となり、命をつなぐ食となる”」を行うなど互いの食と植物を通じて、“暮らし”に関わるトピックにフォーカス。最近は原宿エリアの歴史も掘り下げている。
■THE LITTLE SHOP OF FLOWERS
住所:東京都渋谷区神宮前6-31-10 restaurant eatripのエントランス前の小屋
電話: 03-5778-3052
営業時間:9:00〜17:00
定休日:水曜日・木曜日
URL:THE LITTLE SHOP FLOWERS
Text & Photo:Tomohisa Mochizuki