【私の原宿】今や伝説のアートZINE『Megane Zine』が繋いだ、花井 祐介と原宿
花井 祐介(はない ゆうすけ)
アーティスト。1978年生まれ。17歳の時にリック・グリフィンが手がけたグレートフル・デッドのアルバムカバーを見てアーティストの道へ。50~60年代のカウンターカルチャーの影響と日本の美的感覚、アメリカのレトロなイラストレーションを融合した独自のスタイルを形成。その作風は国境を越えて多くの人達に支持されアメリカ、フランスなど各国で作品を発表。VANS,NIXON,BEAMS などへのアートワーク提供など、国内外で活動の幅を広げる。現在、日本で6年ぶりとなる個展「PebbLes AND RiPPLes」をGALLERY TARGETで2023年7月8日(土)まで開催中。
2012年3月 GALLERY TARGET『Megane Zine #4』
『Megane Zine』という、小さな波紋
もう10年以上前になる。2011年に長場雄、ジュンオソン、LY、大西真平とZINEを作った。写真は、2012年のGALLERY TARGETでZINEの展示をさせてもらったときのもの。
「みんなでZINEを作ろう!」と当時、音頭を取ってくれたみんなのスケボー仲間でもありmegane zineの発起人、志村義隆がメガネをかけていたことと、世間の『お眼鏡にかなうように』という意味とをかけて、ZINEの名前は『Megane Zine』。第1号から参加させてもらっていて、2011年に出版したのは第3号になる。
その年の「Tokyo Art Book Fair」に『Megane Zine』が出店した際、たまたま隣のブースが「GALLERY TARGET」だった。オーナーの水野(水野 桂一)さんが「君たち面白いね」と気に入ってくれて仲良くなり、「展示させてくださいよ〜」なんて言っていたら翌年、『Megane Zine』のグループ展が実現。GALLERY TARGETは以前の場所で、まだ2Fもなくて1Fスペースだけだった。
当時、アメリカに住んでいたメンバーの一人が、展示が決まってから額縁やら古小物、いろいろなジャンクなものをたくさん買い付けてきた。そのジャンク品に、みんながそれぞれ絵を描いて、空間を埋め尽くすように展示してZINEと一緒に売ったのがTARGETでのいちばん最初。今でこそ、TARGETで馴染みのある面々だけど、この時が水野さんとみんな揃って最初に顔を合わせたタイミングだった。
作品は1点10,000円くらい。友達もたくさん駆けつけてくれたけど作品は全然売れなかった(笑)。最終的には水野さんがいくつか買ってくれたのを覚えている。
『Megane Zine』を初期から扱ってくれていたのは原宿だと、GALLERY TARGETと「ビームスT 原宿」。二つとも、今では長い付き合いになる思い入れのある場所になった。
僕はそもそも横浜出身だからあまり原宿に馴染みがなかったけど『Megane Zine』のおかげでとんちゃん通りや、その先の神宮前2丁目のTARGET周辺の人たち、原宿のアート好きな人たちと繋がれた気がする。
その時は想像もしていなかったけど『Megane Zine』に掲載されていたみんなはちゃんと仕事になっていて、それぞれ活動の幅を広げている。
それこそ石を投げて、すぐ消えてしまうとも分からない小さな波紋が大きく広がっていった。ということなのだろう。場所は変わったけど、僕もこうして新しいGALLERY TARGETで久しぶりに個展をやっていることを嬉しく思う。
Text:Yusuke Hanai
Edit:Tomohisa Mochizuki