【私の表参道】謎派手なxiangyuと、原宿・表参道ファッション物語
xiangyu(シャンユー)
2018年9月からライブ活動開始。 2019年5月、初のEP『はじめての○○図鑑』をリリース。また、音楽のみならず2022年7月に上映の映画『ほとぼりメルトサウンズ』では、自身が主演・主題歌を担当した。そのほかファッションデザイナー・半澤慶樹と主宰する、川のごみから衣装を創作するプロジェクト“RIVERSIDE STORY”を立ち上げ、渋谷川編と題し2022年9月に初の個展を開催。同年11月には初の書籍「ときどき寿」を小学館から上梓。23年11月1日にgimgigam(ギムギガム)をサウンドプロデュースに迎え、道に落ちている"落とし物"を題材にしたEP『OTO-SHIMONO』をリリース。23年12月15日に自主企画ライブイベント「bump!」を恵比寿KATAで開催。
表参道ローソン前にて
高校生の頃、「MOC.」というファッションショーイベントが流行っていた。当時のオンラインコミュニケーションの枢軸を担っていた「mixi(ミクシィ)」内に、そのファッションショーに参加するためのチームのコミュニティがあって、私もそのうちの1つに所属していた。このコラムを書くに当たってmixiのコミュニティを検索してみたらまだあったし、Twitterでも【MOC.参加者募集!】のツイートを見つけた。2014年の投稿だった。もうそんな前なんだ。
代々木公園で毎週土曜日か日曜日にチームのミーティングがあった。この時にミーティングのことを「mtg」って略して書くことを覚えた。別に「ミーティング」と書いても良かったんだけど、手帳に毎週のように刻まれてる「mtg」の文字がなんかすごくカッコいいものに感じていた。
毎週の原宿通いは中々に大変なものだった。私は実家が横浜だったからまだ何とか通えたけど、中には茨城とか群馬から来ている子もたくさんいて、常に金欠の高校生にとってかさむ交通費は中々の痛手だった。ミーティングの為に原宿通いをするようになると、以前にも増して自身のファッションが迷走していった。
かばんに一面を埋め尽くすほどの缶バッジをつけたり、首にロープを巻いてみたり。ベルトの代わりに靴紐とかイヤホンのコードなんて普通に当たり前すぎて、とにかく1キロ先でも目立つようなファッションばっかりしていた。
あれがおしゃれだったのかは今ではもうよくわからないが、思い出したくない格好だったことは確かだ。全身蛍光イエローで首にはロープを巻き、缶バッジで埋め尽くされたカバンを持った私は地元の駅では浮きまくりで、年の離れた弟には「頼むから普通の服を着て」と泣いて懇願されたほどだった。私が逆の立場でも同じことを言う気がする。
そんなクソ謎派手ファッション時代に、もう一つやっていたことがある。ストリートスナップのハンターだ。当時は「TUNE」,「FRUiTS」全盛期で、その他にもネットで見れるスナップサイトが乱立。その一つにスナップハンターとして在籍していた。別におしゃれとは言えない、ただの謎派手ファッション野郎だった私が所属できたのはそれこそ謎だったんだけど、結構いろんな団体が常にハンター募集をしていたから、ハンターになること自体は難しくはなかった。
自分が街で見かけたおしゃれだなと思う人に声をかけるのは楽しかった。スナップでよく見かける人に街で会うと芸能人に会ったくらいテンションが上がったし、実際にきゃりーぱみゅぱみゅも、当時はよくスナップで見かける原宿の有名人だった。もう原宿どころか世界の有名人だよね、今じゃ。
声をかけるのに待機していたのは、有名な表参道のローソン前。「ここで腕組んで立ってる人は大体がスナップ関係の人だよ」ってハンターなりたての時、先輩に教わった。あと「何度も何度も通る人はハントされ待ち」って事も。ファッションショーのランウェイばりにキメた顔で颯爽と歩いては引き返し、歩いては引き返しを繰り返してる人に気づきながらも絶対に声をかけなかった先輩。もうあのローソン前に行くことはかなり減ったけど行くと今でもあの光景を思い出す。
私にとってあのローソン前は、謎派手ファッションでおしゃれな人をハントする場所だったけど、今は近くの「CODE +LIM」という美容室で、髪を編んでいる途中にふらっとコーヒーを買いに行く場所になっている。首にはタオル、ダッカールも付けたまま。
今度は、中途半端な編み途中の頭じゃなくバッチリ決めたファッションで、腕を組んで待ち構えてるハンターに声を掛けられるまで、何度も何度でも通りたい。
Text & Photo:xiangyu