【私の表参道】クレヨンハウス主宰・落合恵子がむすぶ、幸せの道
落合恵子(おちあい けいこ)
1945年生まれ。作家。子どもの本の専門店「クレヨンハウス」と女性の本の専門店「ミズ・クレヨンハウス」、オーガニックレストラン等を東京と大阪で主宰。総合幼児教育誌『月刊クーヨン』、オーガニックマガジン『いいね』発行人。著書に『明るい覚悟 こんな時代に』『老いることはいやですか?』(朝日新聞出版)、など。最新刊は、友情を紡ぎながらそれぞれの「わたし」を生き抜いてゆく女性4人を描いた小説『わたしたち』(河出書房新社)。その他、絵本の翻訳やラジオの構成作家・語りなど活動は多岐に渡る。ビルの老朽化による建て替えのため、表参道で46年間親しまれたクレヨンハウス東京店を吉祥寺へ移転。2022年12月18日(日)にオープンした。 メイン写真:©神ノ川智早
「道をむすぶ」
何度となく観た映画に、バーブラ・ストライザンㇳとロバート・レッドフォードが主演した『追憶』がある。1973年制作。原題は『The Way We Were』。監督はシドニー・ポラック。
学生時代に出合い、恋に落ちた(たしかに恋とは “fall in”落ちるものだ)ケイティとハベル。権力にアンチの姿勢を貫き通す彼女と、政治的主義にはさほどとらわれない彼。
違いに惹かれあいながら、やがてその違いは溝になっていく。別れ。そして、20年後の束の間の再会。ラストにも流れるのが、バーブラが歌うテーマソング『The Way We Were』だった。
春でも夏でも秋でも冬でも、表参道の欅並木を意識的にゆったりとした歩調で歩くとき、なぜかこの曲が甦ってくる。
今は裸木に近いが、イルミネーションをまとったクリスマスウィーク。春の芽吹きの時。6月の雨の中。麦わら帽子が似合う炎天下。そして秋。と、欅のどこか孤高にして、けれど柔らかな佇まいは、四季を通して、わたしにとって表参道の象徴でもある。青山通りに面した信号の角にある、「山陽堂書店」の存在もまた。
表参道で46年間やってきたクレヨンハウス。子どもの本の専門店をはじめ、有機食材を集めた八百屋や、オーガニックレストラン、木育がテーマの玩具店、ジェンダーセンシティブな本の専門フロア。雑誌や単行本の出版社等。これらの部門を丸ごと吉祥寺へと移転した。
理由は表参道のビルが老朽化し、建て替えがあるためだ。
クレヨンハウスが誕生した表参道から、第二章を踏み出す吉祥寺。
わたしの内側では『The Way We Were』。欅並木から続く、一本の道である。
Text:Keiko Ochiai