自由になるための平和的手段
アニエスベー ギャラリー ブティック(AGNÈS B. GALERIE BOUTIQUE)にて、2023年12月16日(土)から2024年1月21日(日)まで、水戸部七絵の個展『座る人 “Sit-in”』が開催される。開催に先駆け、12月15日(金) 18:00よりオープニング・レセプションを予定している。
水戸部は、画家の視点で社会をリアルタイムに捉え、時にはポップに、時には⽪⾁的に⼤胆かつ独創的なスタイルで時代を表現するアーティスト。2022年からオーストリアのウィーン美術アカデミーに交換留学し、帰国。油絵具を一斗缶から直接豪快に掴み取る、重厚感あふれる厚塗りの絵画が特徴だ。ポップカルチャーを下地に、これまで主に「顔」をモチーフとした絵画作品を通して、人種及び性別への差別に端を発する社会問題や現代における社会構造の問題を映し出してきた。
本展は水戸部が帰国後、自身初となる本格的な立体作品に取り組んだ「座る人」と、レコードジャケットのコラージュを土台として描かれた平面作品、そしてインスタレーションで構成される。今回のメインとなる「座る人」は、水戸部がウィーン滞在中に日本国外から見聞きした「沖縄・辺野古での座り込みによる抗議活動(=Sit in)」の話題から着想を得たもの。更に、1960年にアメリカで行われた「座り込み」という非暴力的な抵抗運動の歴史をリンクさせることで、コミュニティやジャンルを超えて進化し続けるヒップホップ・カルチャーの歩みを織り交ぜ、平和的な方法で自由になることを示唆する作品となっている。
「私は⽇本に帰国し、座る⼈をつくった。この場所から動けないほど、重く重く、⽴ち退けられないほど、重く。 私は、座る⼈を作った。」
と今回の展示に寄せたアーティストステートメントを締め括る水戸部の言葉も印象的だ。圧倒的な絵の具の物質感と重量感を有する「座る人」の胸には、ヒップホップ界のスーパースターの名前が、そして、コラージュされたレコードジャケットの上には、韻を踏むトラッシュ・トーカーとしても有名だったボクシング界の英雄が描かれる。
多様な人種、世代、性別、文化が入り混じる表参道・原宿の街。しかし、当たり前と思っているそんな日常の景色の中で、声なき声を上げている者がいるかもしれない。水戸部の作品を通じ行動によって社会に意思を訴えてきた勇敢な者たちの、重厚な姿に思いを馳せてみては。
■画像クレジット
©Nanae Mitobe
■概要
水戸部七絵 個展『座る人 “Sit-in”』
開催期間:2023年12月16日(土)~ 2024年1月21日(日)
オープニング・レセプション:2023年12月15日(金) 18:00〜21:00
開催場所:アニエスベー ギャラリー ブティック
住所:東京都港区南青山5-7-25 ラ・フルール南青山2F
電話番号:03-3406-6010
営業時間:12:00〜19:00
休廊日:月曜
冬季休暇:2023年12⽉27⽇(水)〜2024年1⽉5⽇(金)
>>EDITOR'S VOICE
アニエスベー ギャラリー ブティックから骨董通りを背に歩くこと5分程で到着するプラダ青山店では、田名網敬一にによる個展「PARAVENTI: KEIICHI TANAAMI」が開催中。水戸部が本展で表現する「座り込み抗議」が行われたのと同じ、1960年代に頭角を表した田名網。日本とアメリカの歴史や文化を融合させた表現を用いている点でも『座る人 “Sit-in”』と通ずる部分が見出せるかもしれない。ぜひ併せて立ち寄ってみて。
Text:Rumi Hasegawa
Edit:Tomohisa Mochizuki
INFORMATION
南青山・アニエスベー ギャラリー ブティックにて、水戸部七絵の個展『座る人 “Sit-in”』が開催
- 住所
- 東京都港区南青山5-7-25ラ・フルール南青山2F
- 電話
- 03-3406-6010
- 営業時間
- 12:00〜19:00
- 定休日
- 月曜/冬季休暇:2023年12⽉27⽇(水)〜2024年1⽉5⽇(金)
- 開催期間
- 2023年12月16日(土)~ 2024年1月21日(日)
