ゼロイチを生み出す街、原宿。アソビシステムが見据える未来
「日本のエンターテイメント業界はいまに至っても、ガラパゴスな側面が強く、国内だけで成立してしまう側面があります。その良さももちろんあるけれど、その特殊性を理解した上で動いていかないと、世界進出はなかなか難しいと思っています。きゃりーの場合もそうでした。彼女がなぜ海外に行けたかといえば、アイドルじゃなくてアイコン、きゃりーが原宿のアイコンになれたからです。海外で売りたいと思ったのではなく、日本以外でも可能性があるんじゃないか、と。その下地には、原宿のポップカルチャー的な要素が海外から注目され始めていたこともありました。YouTubeの存在も大きかった。当時はまだYouTuberという言葉もなかった時代で、日本でいいものを作ったら世界でも伝わるんじゃないか、という見立てもありました。きゃりーのデビューは2011年。当時から海外を視野に入れ、今年も5月から6月にかけ、世界4カ国6都市のワールドツアーを終えたばかりです」
5月にはニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴの3都市で、フランス出身のDJ/トラックメイカーのMoe Shopをオープニングアクトに迎えアメリカツアーを開催。6月にはフランス・パリ、イギリス・ロンドンに加え、ヨーロッパ最大級の音楽フェス「Primavera Sound 2023」でスペイン・バルセロナ、マドリードの4都市を巡るヨーロッパツアーを開催した
世の中に新たな「アソビ」を創造するカルチャープロダクションに成長したアソビシステムは、時代の流れを感じ取りながら、エンターテイメントの力で人々の心に残るコンテンツを日々発信中。アーティストの海外公演や海外フェス出演のほかにも、日本のコンテンツIPを海外に向けて発信し、海外企業との協業プロジェクトも多く実施する最中にある。
海外企業とのコラボレーションをプロデュースする「HARAJUKU COLLECTIVE」の共同運営、海外やZ世代の間で絶大な人気を誇る日本発の音楽ジャンル「City Pop」をモチーフにしたNFTプロジェクト「City Pop TOKYO」の共同運営、キッズ〜中学生のためのダンススクール「ASOBISTUDIO」(原宿)のオープン、日本の地方自治体の観光資源を海外に向けてPRする地方創生事業、デジタル上の文化都市創出&NFTを活用したデジタル文化輸出「Meta Tokyo」プロジェクトなど、その業務内容はじつに多彩だ。
アソビシステムが共同プロジェクトとして手がけるメタバース上の文化都市プロジェクト「MetaTokyo」では様々なクリエイターやコンテンツとコラボレーションを実施
2021年5月には、現実の原宿をバーチャル空間で再現した「バーチャル原宿 au 5G POP DAY OUT 2021」と連携し、バーチャル原宿スペシャルサポーターに就任したきゃりーぱみゅぱみゅと共に、原宿カルチャーの新たな可能性を示した。
「バーチャル原宿は、国内初となる自治体公認配信プラットフォーム「バーチャル渋谷」の1周年を迎えたタイミングで拡張された原宿の新エリア誕生を記念し、渋谷5Gエンターテイメントプロジェクトを運営する、KDDI株式会社、一般社団法人渋谷未来デザイン、一般財団法人渋谷区観光協会の3社によるプロジェクトです。コロナ禍、エンターテイメントやファッションをはじめとした様々なカルチャーが制限を強いられている中、新しい原宿カルチャーの創出、リアルな街の体験価値を高めることを目的として開催されました。原宿カルチャーと最先端テクノロジーをミックスさせた同プロジェクトには、アソビシステムにとっても多くの学びがありましたね」
「バーチャルは時や場所を超えられる」「リアルを拡張するためにバーチャルはある」ーー中川氏のこんな言葉からも、その可能性は言わずもがなだ。
「ラフォーレ前を歩行者天国にしたい。ファッションショーのランウェイにしたい。こういう夢を抱く子たちがいても、リアルで実現することは難しいものです。でも、バーチャル空間では交通を気にする必要はないですし、思い思いのおしゃれをして集まることもできます。原宿という街を愛する子たちの熱量は無限大です。いつの時代にあっても原宿は、オンリーワンを求めてくる人が集まる街だと信じているので、バーチャル原宿での学びを生かし、これからも変わらずにカルチャーを創っていきたいと思っています」
今後もずっと拠点は原宿。こんな風に話す中川氏が見据える原宿の未来とは?
「原宿エリアは大通りから一歩入ると、小さな個人店が多くあり、さらに歩くと住宅街が広がっている不思議な街です。古き良きところを残しながらも最先端が集まり、新陳代謝を繰り返しながら新しい文化が生まれる土壌も、原宿にはあります。若い世代の人たちを筆頭に、情熱を持っていれば誰でも成長できる街であり続けてほしいと思っています。これからもずっと、ゼロイチを生み出す街であってほしいですね」
原宿に会社を設立して16年、アソビシステムと中川氏の「アソビづくり」はまだまだ続く。
Text:Hiroyuki Konya(discot)
Photo:Sakura Nakayama
