【私の原宿】アーティスト・橋爪悠也が見続けた、全ての感情が入り混じる原宿の景色
橋爪悠也(はしづめゆうや)
1983年岡山県に生まれ、現在は東京を拠点に活動。2016年から自主企画による展覧会を通して作品を発表。2018年以降、東京、バンコク、ソウル、ロンドンで個展を開催し、2021年には上海にて大規模な個展も開催。出身地である岡山では、継続的な地域への貢献を目的に展覧会を定期で開催。2022年9月には青山・SPIRALと六本木・Yutaka Kikutake Galleryの2拠点で個展を行った。
「働いていた店を背中に」
20歳で上京し、30までを明治通り沿いのショップで働いて過ごした私にとって、この場所、この画は全ての感情がぐちゃぐちゃに入り混じる。楽しく、辛く、怖く、いろんな感情を抱きながらこの画を目にしていた。
東日本大震災の次の日か、数日後かに同じようにこの場所にきて、店を開ける開けないの話を他のスタッフとして…。
あの時の原宿、明治通りに明かりがついてない光景も強烈に覚えている。
10代から憧れだった原宿で10年近く、毎日のように同じ画をみて生活した。しかし、上京時には“憧れの東京・原宿”はひとつの終わりを迎え、新たな“原宿”がスタートしていた、過渡期だったように思う。
表参道の同潤会アパートは表参道ヒルズになり、裏原と呼ばれていた場所は雑誌で目にしていた「あの時代」の裏原ではなくなり…。
「裏原時代の原宿」から「次の原宿」に変わっていく最中に20代を経験したことで、憧れていた原宿の勢いが無くなったかわりに「何かが変わっていく」というのを強く感じた。
時代に翻弄されながらも、原宿で働いていたことは良い経験だったと思うし、原宿が変わっていく中で、新しく生まれていくものを間近で見ることができた。だからこそ「何かを作り上げる」ということのかっこよさを知り、「自分もやりたい」と思えた、大切な場所だ。
この画に何か特別な意味があるわけではない。ただ、ここから見る画が強烈に、鮮明に、脳にインプットされている。
Text & Photo:Yuya Hashizume