【私の原宿】PARCO、BEAMS、GUCCIも信頼を置くイラストレーター・一乗ひかるの原宿デビュー
一乗ひかる
東京出身。2018年よりイラストレーターとして活動。印刷技法をベースとした色彩表現と、グラフィカルなイラストレーションを心がけている。書籍、広告、パッケージを中心に幅広く活動。最近では、BEAMSの「飲食店応援PROJECT」にも参加。
HP:https://hikaruichijo.com/
Instagram:https://www.instagram.com/ichijo_hikaru_/
学区外
東京都町田生まれ町田育ちである私の主な行動範囲は、長い間JR横浜線の古淵あたりから、小田急線の下北沢までと決まっていた。
小学校の時、友達とあそんでいたらいつのまにか学区域からほんのすこしはずれてしまったというだけで不安で泣いてしまうほどに、もともと保守的で引っ込み思案な私はそれ以上外へ行く勇気がなんとなくでなかったのだ。
下北沢を通り越すきっかけとなったのは高校2年の時に同じクラスになった同級生。おしゃれで明るく人気者だった彼女は、私が密かに『Zipper』や『FRUiTS』を読んでいたと知ると放課後、わたしがそれまで行ったことなかった原宿へ、ひょいと連れて行ってくれた。
この写真はその時に最初に入った路地、旧渋谷川遊歩道路。そこにあったのは、自分好みのショップやファッションを自由に楽しむ人たち。何もかもが初めてで一気に視野が広がっていくのを肌で感じた。なんて狭いコミュニティで生きてきたのかと思うと同時に、やっと外に出れた!という清々しい気持ちになったのを覚えている。原宿は私にとって視野を広げるきっかけをくれた場所となった。
時は経ち、大学にはいってからのグループ展や、イラストレーターになってからの個展はほとんどが原宿ですっかり自分の中に馴染んだ街になった。しかし旧渋谷川遊歩道路付近での活動はなかったので他のエリアほど記憶の塗り替えがない。だからあの路地は高校生の時の気持ちに戻れる唯一のストリートなのだ。今でも、初心にかえるべくあの時連れて行ってくれた道や店をなぞる日がある。
Photo&Text:Hikaru Ichijo