第6章:ここから広がるカルチャー ミュージアム、フード、清掃活動まで
そしてラフォーレにとって、ファッションとは洋服やアクセサリーに限ったものではない。ラフォーレが発信し続ける「ファッション」とは、時代を表現するカルチャー全般のことを指すのだ。
ここでは、ラフォーレによる文化発信事業などに注目してみよう。多岐にわたる取り組みは、ひとつの章でまとめるにはやや散らかった印象になるかもしれないが、ラフォーレという森に息づく多彩な生物相だと思って見つめてみていただきたい。根底に流れる、カルチャー発信への使命感のようなものを感じられるはずだ。
オープン後3年が経った1982年。ラフォーレは、街づくりには文化活動が不可欠であるとして、最上階にあった多目的ホール「ラフォーレプラザ」の改装に踏み切る。そうして複合的アートカルチャーの発信を使命としてオープンしたのが、「ラフォーレミュージアム原宿」だ。
ラフォーレミュージアムでは、横尾忠則、シンディ・シャーマンといった本格アートを身近に親しめる展覧会や、国内外のステージ・イベント、サブカルチャーをテーマとした企画、ファッション・イベントetc.. ジャンルレスな、心躍るコンテンツが世に送り出され続けている。
ラフォーレの文化面への幅広い関心を特によく表すコンテンツとして、1987年〜1993年に開催された人形浄瑠璃「原宿文楽」を挙げてみる。
文楽を知らない人に観に来てほしい、という目的で開催された原宿文楽。初心者向けのアレンジが功を奏してか、全8回の公演は毎回超満員に。実に、その客層の80%以上が文楽を見るのは初めてだったというから、その狙いは大成功であったと言えるだろう。「古いものを踏まえた上で新しい道を開いていく」という意欲において、伝統芸能とファッションラバーのが思いが交差した貴重な例ではないだろうか。
■豆知識その3
ちなみに……ラフォーレミュージアムのこけら落としは筒井康隆氏作・演出・主演の舞台「ジーザス・クライスト・トリックスター」。ミュージアムなのに、いきなり演劇である。1980年代の小劇場演劇ブームをしっかりキャッチしているのが流石だ。
また、2004年〜2008年には、ラフォーレとクリエイティブ会社「ASOBOT」との共同企画で、「ジェネレーションタイムズ」というメッセージ性の強いフリージャーナルが発行される。コンセプトは “新しい時代のカタチを考える”。戦争・貧困など、10号にわたり、さまざまな社会的な事象に真正面から向き合う特集が組まれた。
プロモーションではなくメッセージ発信、という意図をブレさせないため、誌面上にラフォーレの商品が一切載っていないのも特徴的だった「ジェネレーションタイムズ」。ラフォーレ館内に専用ラックを設置するほか、店舗と協力し、若者から絶大な支持を集めるカリスマ店員たちから直接手渡すスタイルも採用された。
普段はファッションに夢中で新聞を読まないような若い世代にとって、スタイリッシュに社会と自分を繋いでくれる媒体があるなんて(しかもラフォーレに)! それはとんでもない幸運だったのではないだろうか。更なる活字離れが進むこの頃……今こそ第11号を発行してほしい! と個人的には思う。
そして、若者は腹が減るもの。腹が減っては買い物はできない……というわけで、フード面の展開も忘れてはならない。ラフォーレは 2015年、フードエリア「GOOD MEAL MARKET」を2階にオープン。ファッションの一部として、「ワンハンドスタイルグルメ」という新たなフードカルチャーを提案した。
ワンハンドスタイルグルメは、その名の通り、片手で持って食べられるもの。美味しさ・食べやすさはもちろん、見た目も重要なポイントだ。
映えるメニューばかり。飲食スペースではWi-FiやUSB電源がフリー利用できるので、気が済むまで写真を撮ってインスタに上げられる
これらの多岐にわたる取り組みから、ラフォーレはただの衣料品販売店の集まりではないということが伝わっただろうか。最先端を駆けるファッションがあって、アートカルチャーを訴求するミュージアムがあって、感覚を満たすフードがあって……ここは新しく夢中になれるものの、トータルでの提案を行う場所なのだ。
さらに、ラフォーレが館内の全ショップのサポートのもと、街の美化活動を実施しているのをご存知だろうか? その名も「Laforet HARAJUKU CLEAN KEEPERS(ラフォーレ・クリーン・キーパーズ)」だ。現在は清掃ボランティアプロジェクト「green bird」とともに、毎週土曜に明治通り〜表参道のごみ拾いを行なっている。
このとても地道な作業は、2001年のスタート以来およそ20年にわたって着実に続けられている。自分たちの手で街を守ろう、大切にしようというラフォーレの真摯な思いを感じられる取り組みだ。
2019年はzuccaがデザインを担当!
活動レギュラースタッフのユニフォームはラフォーレ館内のショップがデザインを手掛けたもので、毎年モデルチェンジされるという。ボランティアスタッフとして清掃に参加すると、ラフォーレオリジナルのお掃除用グローブ&タオルがもらえるのがちょっと嬉しい。
