内と外が錯綜する世界
外苑前のEUKARYOTE(ユーカリオ)にて、菅原玄奨による個展「湿った壁」が、2024年1月26日(金)〜2月18日(日)の期間で開催される。
菅原玄奨は1993年生まれのアーティスト。菅原は、昨年からFRP(繊維強化プラスチック)を主な素材とする従来の制作の傍ら、作陶に用いられる粘土を新たな素材として、素焼き=テラコッタでの表現に取り組んできた。それは菅原自身の原初的な体験をもとに、粘土の触覚的な要素と、作品が成り立つプロセスを可視化することで、彫刻の表面性を再考する試みとなっている。
菅原によるテラコッタの技法は特徴的で、これまでFRPを素材に行ってきた制作プロセスと同じように、一度塑像によって型を成形したのち、最終的に焼成される粘土を型の内側に手で込める作業を行う。それによって、新たな塑像の表面には型と粘土の圧迫によるひび割れ等が生じ、内から外へ水分が蒸発していく自然現象的要素と焼成を伴うコントロール外の現象とが相まり、塑像のリアリティ、内圧と外圧のせめぎ合いをセンセーショナルに成り立たせている。
本展で作家は、新たな技法を探る一方で“中間”というキーワードにも着目。新作の人物像は、貝殻に直接耳を当てているのではなく、これから当てようとしているのか、 あるいは当て終わったのか、定かではない状態で静止している。巻貝を耳に当てると波の音が聞こえるという言説は、実は自分自身の鼓動や血流の音が反響しているとも言われており、ここでも“内と外”の要素が錯綜する菅原のストーリーが織り込まれているのである。
外苑前の街とEUKARYOTEも壁に隔てられ、“内と外”に分かれている。街は、ギャラリーの中は、果たして内なのか外なのか。作品を眺めながら、自分が今いる場所について考えを巡らしてみても良いかもしれない。
■クレジット
画像1:〈Torso 1〉terracotta, 550x360x290mm, 2023-2024
■概要
菅原玄奨 個展「湿った壁」
開催期間:2024年1月26日(金)〜2月18日(日)
開催場所:EUKARYOTE(ユーカリオ)
営業時間:12:00〜19:00
住所:東京都渋谷区神宮前3-41-3
>>EDITOR’S VOICE
EUKARYOTEから原宿に向かって10分ほど歩いた場所にあるデザインフェスタギャラリー原宿 EAST館にて、「笑うアートマンションと10人の住人展」が開催中。EUKARYOTEの個展とはまた雰囲気の違う、さまざまなアートが集まっています。興味のある方はこちらにもぜひ足を運んでみてください。
Text:Arisa Watanabe
INFORMATION
外苑前のEUKARYOTEで菅原玄奨による個展が開催 テラコッタで作られた新作の人物像を公開
- 住所
- 東京都渋谷区神宮前3-41-3
- 営業時間
- 12:00〜19:00
- 定休日
- 月曜日
- 開催期間
- 2024年1月26日(金)〜2月18日(日)
