青山通り沿いの気になるあの建物! 国連大学って?:OMOHARA TIPS Vol.5
表参道・原宿エリアの文化や歴史にまつわるちょっとしたネタをご紹介する「OMOHARA TIPS」。今回は青山通り沿いにそびえ立つ国連大学をご紹介!シンメトリックで個性的なフォルムが印象的なこの建物。内部ではいったい何が行われているのだろう?
国連大学の正式名称は国際連合大学本部(United Nations University:英略称UNU)。アジアで唯一の国連機関の本部である。特徴的な建物は代々木体育館や東京都庁を手がけた丹下健三氏の設計で1992年に竣工した。
名だたる建築家が個性を競い合うオモハラエリアにおいて、その佇まいには国連大学の施設らしい貫禄が感じられる。
国連大学はかつて車庫だった
現在国連大学が建つ場所は、都民の城(仮称)として改修が計画されている旧こどもの城やオーバルビルなどとともに、かつては都電の青山車庫だった。渋谷と新橋を結ぶ路線の車庫として、1906年の開業から62年間にわたり運営されていたが、高度経済成長のあおりを受けて廃業することに。
港区の昭和42年(1967)都電青山車庫(現・国連大学本部):TOKYO OPEN DATA CC BY 4.0 DEED
自動車が普及し、都電やバスの需要が減ったことでインフラが見直されたことが要因だ。現代の青山通りを路面電車が走る景色を想像してみると、ちょっと見てみたかったなという気持ちも湧いてくる。
青山車庫前。青山の街には路面電車の線路や電線が張り巡らされていた。今となっては想像し難い姿だ。昭和42年(1967)都電青山車庫(現・国連大学本部):TOKYO OPEN DATA CC BY 4.0 DEED
この場所に国連大学が誘致された背景には、国や都による熱心な協力があったそうな。国際社会における東京の機能を強化し、アジアを牽引するリーダーシップを発揮しようという、政府の強い意思と思惑があったのかもしれない。
国連大学は“大学”なのか?
「大学」という名前がつくものの、いわゆる、学生らしい人が出入りしている様子はあまりない。歴史ある土地に建つ国連大学自体が、そもそもどんな施設で内部で何が行われているかを知っている人は少ないんじゃないだろうか。
2010年まで、国連大学には学生が在籍しておらず実際に在籍しているのは研究者や国連職員のみであった。しかし2009年に国連総会で国連大学憲章が改正され、2010年度(2012年卒生)からは正式に修士(学生)・博士号(院生)の授与がされるようになったのだ。
中庭はこんな感じ。石畳とジオメトリックな外観が厳かな雰囲気が漂う。
世界各国から集まる多くの人材を教育した実績を有する国連大学。履修証明書を発行していたそうだが、現在では正式に修士・博士号を取得できる大学院相当の学術機関とされている。
国連大学は偉大なり。でも結局、何なのさ?
国連大学本部ビルには2つの組織が入っている。ひとつは冒頭にも記述した世界12カ国・13カ所に研究所を置く国連大学の本部。もうひとつはサステナビリティに関わる広い分野の研究と人材育成を行う「サステイナビリティ高等研究所」である。
国連大学憲章によれば、国連大学の目的は「人類の存続、発展および福祉にかかわる緊急かつ世界的な問題」の解決に資する研究を行うこと。持続可能な未来の構築に貢献することを目的とし、国連で議論されるさまざまな問題を解決するための調査研究を行っているそうだ。
国連大学トリビア
現学長はチリツィ・マクワラ氏。2023年3月より国連大学学長に就任。5年間の任期をスタートするとともに、国連事務次長(事務総長、副事務総長に次ぐ3番目の位!)の座に就いた。ケンブリッジ大学で博士号を取得した、昨今陽の目を浴びているAI研究の専門家で、南アフリカのヨハネスブルク大学の副学長を務めていた人物である。
構内は大使館のように不可侵条約が結ばれているそうだ。まさに海外ドラマに出てきそうな特殊な環境下で、開発途上国と先進国から学者と教員が集まり、国連や国連専門機関の業務と直結した研究を行う日々というのは、国連大学以外では味わうことができないだろう。
2階には超穴場な図書館「国連大学ライブラリー」があり、一般の人も閲覧利用が可能だったが、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡大防止対策のため臨時休館が続いている。現在も一般の人は立ち入ることができず、セキュリティ上の理由もあって「今後、このまま一般の人は利用できなくなるかもしれない」と、エントランススタッフの方が言っていた。
こちらの2F部分が「国連大学ライブラリー」コロナ禍以前は一般にも開放されていた。
図書館が使えないのは残念だが、1Fには地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)があり、こちらは一般の人も入ることが可能だ(月曜休館)。SDGsに関連した展示や書籍、チラシ、資料などを自由に観ることができる。
周辺には人気の飲食店がひしめき、すぐ裏にはアートやクリエイティブに関する本がずらりと揃う青山ブックセンターも。土日には広場でファーマーズマーケットなどイベントが賑わいをみせていて、一般の人でも足を運べる気軽さも魅力かもしれない。
青山ファーマーズマーケット @UNU「NAKED~waste less market~」(2020/NEWS記事)より
歴史や背景を知ると、謎のヴェールに包まれていた国連大学が違って見えるはず。構内に立ち入る際は、威厳ある佇まいを堪能しつつ、偉大な存在感をその身に受けてほしい。
Text:Yuya Tsukune
Edit:OMOHARAREAL編集部