都市伝説ではない、幻の駅の話:OMOHARA TIPS Vol.4
■メイン画像:銀座線リニューアル情報サイト(東京メトロ)
表参道・原宿エリアの文化や歴史にまつわるちょっとしたネタをご紹介する「OMOHARA TIPS」。今回は表参道エリアの地下に人知れず眠る「神宮前駅」をご紹介!
「神宮前駅?もちろん知ってるけど」
今回のTIPSはそう思った人こそ読んでほしいトピックスだ。私たちが慣れ親しんでいる東京メトロ副都心線「明治神宮前駅」ではなく、「神宮前駅」の話である。もちろん路線図にも見当たらない。
それもそのはず、この駅は、50年以上前に役目を終えた現・表参道駅の前身なのだ。驚くべきは、駅がいまだに取り壊されておらず、地中に存在するということ。しかも、目を凝らせば実際に見ることも可能...!
出典:銀座線リニューアル情報サイト(東京メトロ)/当時の神宮前駅ホーム
そんな幻の神宮前駅のルーツは、昭和13年(1938年)、東京高速鉄道の「青山六丁目駅」として開業したことに始まる。しかし開業の翌年には早速「神宮前駅」に改名されることに。なぜ、たった一年で名前を変えることになったのだろうか?
その理由は隣接する駅の名前にあった。当時、青山六丁目駅の隣には青山四丁目駅、さらにその隣には青山一丁目駅があり、下車駅を間違える乗客が多かったという。時を同じくして青山四丁目駅も外苑前駅に改名され、神宮前駅-外苑前駅-青山一丁目駅の並びになったのだ。
出典:地下鉄博物館 駅名の看板をかけかえている様子
「神宮前駅」の名で33年間にわたり親しまれていた駅は、昭和47年(1972年)、千代田線と統合されて現在の表参道駅が新設されたことで現役生活を終えることになる。
興味深いのはその後。なんと工事上の都合で旧ホームがそのままの形で残されることになった。「神宮前駅」のホームは現在のスパイラル付近に位置。表参道交差点の直下に新設された「表参道駅」の工事には影響がなかったためだ。
出典:銀座線リニューアル情報サイト(東京メトロ)
現在の神宮前駅は関係者のみ出入りできる資材置き場として活用されていて、タバコの吸い殻入れの案内板があるなど、70's当時の空気感がそのまま残っている状態だ。
2017年には地下鉄開通90周年を記念したイベントで、ホームをライトアップする粋な演出も実施されたが、通り過ぎるその一瞬、銀座線の車内から私たちもその姿を確認できるので、ぜひトライしてみてほしい。
当時の神宮前駅を知る人にとっては懐かしく感じるかもしれない。そうでない人も過去の写真を振り返った上で目を凝らせば、当時の賑わいを想像することができるだろう。
出典:銀座線リニューアル情報サイト(東京メトロ)
私見だが、モノや場所には現役を退いたからこその雄弁さがある。表参道エリアの地下に眠る神宮前駅の声に耳をすませて、束の間のタイムトラベルを楽しんでみては?
>>神宮前駅の現役当時を知る人々の貴重な話を収めた、詳細記事はこちら!:【COLUMN】 幻の「神宮前駅」は今も存在⁉︎ 「表参道駅」のヒストリー
Text:Yuya Tsukune
Edit:OMOHARAREAL編集部