
旅に出る高揚感を味わえる、「移動」がテーマのヒストリーツアー
言わずと知れた「RIMOWA」はドイツ・ケルンで創業した、スーツケースのグローバルブランド。表参道にも「RIMOWA Store Omotesando」という旗艦店がありオモハラに馴染みがあるが、今回そんなRIMOWAが原宿駅近くのヨドバシJ6ビル(旧JING HARAJUKU)でブランド創立125周年をセレブレイトする大型の展覧会を開催中だ。会期は2023年6月9日(金)〜6月18日(日)まで。
展覧会名は「SEIT 1898」。「SEIT(ザイト)」とはブランド発祥のドイツ語で「〜以来、過去から現在までの期間」を指す言葉。英語では「Since」と訳すのが適切だろう。125周年という歴史の長さにも驚くRIMOWAのアニバーサリー展をレポート。
訪れたのは会期初日のいちばん早い時間帯。当日入場も可能だが事前に予約しておけば優先的に入場が可能だ。雨が降っていたけれど、入り口には入場を待つ人たちがスタンバイ。予約していたので数分で建物内に入ることができた。
エントランスはまるで空港のチェックインカウンターのような空間になっており、本展の「移動」や「旅」をテーマとした展示コンセプトにピッタリ。予約名を伝えると、グランドスタッフの服装に身を包んだ受付の方が搭乗券を模した入場チケットを発行してくれる。ちゃんと名前まで入っていてかなり嬉しい演出。
搭乗ゲートをくぐれば、RIMOWAの歴史の旅が始まる。もちろん展示会場内も空港のコンコースのような雰囲気で統一。案内表示も空港風になっている。その作り込まれた世界観にテンションが上がってしまう。
RIMOWAは航空技術をカバン作りに応用したことで軽量で耐久性の高いプロダクトを開発してきた歴史がある。ブランドにとって飛行機や航空業界との関係性は深いのだ。
RIMOWAと言えばアルミニウム製のスーツケース。波打つようなグルーヴデザインは、耐衝撃性を高めるための仕組み。機能性を持ったデザインは今やRIMOWAの顔となっているというわけ。そんな歴史的プロダクトがズラリと並ぶ。
ヒストリーエリアを抜けると2000年代以降、採用されたポリカーボネイト製のスーツケースをフィーチャー。テクノロジーとともに更なる軽量化と耐久性を実現しながら進化してきたことが分かる。
ステッカーチューンされたRIMOWAやキャンペーンで使用された特別なRIMOWAなど貴重な品々も展示。あらためてブランドの懐の広さを実感。
さらに奥へ進んでいくとさまざまなRIMOWAケースを見ることができる。スーツケースのイメージがあるが、楽器用だったり、プレーオフ進出で注目を集めたレイカーズ所属の八村塁のチームメイトであるNBAスター、レブロン・ジェームスも愛用しているというワインケースだったり。目的別に作られた多様なRIMOWAケースが見られる。
本展示の目玉のひとつと言えるのが「コラボレーション」のコーナー。RIMOWAと言えば、ジャンルの垣根を越えてさまざまなブランドとコラボレーションしていることでも知られる。
「OFF-WHITE(オフホワイト)」や「SUPREME(シュプリーム)」といったストリートブランドから、「FENDI(フェンディ)」、「DIOR(ディオール」といったメゾンブランドまで。ファッションはもちろんだが、世界中のアーティストや同じドイツの高級自動車メーカー「PORSCHE(ポルシェ)」まで多岐に渡るコラボレーションモデルが一挙に展示されている。どれもレアモデルとなっているものばかりなので実物を見られるだけでも嬉しい。
アート作品として展示された、アルミニウム製のRIMOWA小屋は圧巻。中に入ることができ、備えつけられたインテリアまで全てアルミニウム製。ミニマルでソリッドなデザイン性を360°体感できる。
そしてクライマックスには、実際にRIMOWAを使用しているRIMOWAフレンズ&ファミリーのRIMOWAが一同に会した大迫力のひな壇が現れる。
トム・クルーズ主演「ミッション・イン・ポッシブル」に使われたケースや、Netflixドラマ「エミリー、パリへ行く(Emily in Paris)」のトランクはインパクト抜群。
アーティスト・村上隆、フラグメント(fragment design)・藤原ヒロシといった日本を代表する著名人から、先述したレブロン・ジェームス、映画監督のマイケル・ムーア、DJ・プロデューサーとして活躍するPeggy Gou(ペギー・グー)、テニスプレーヤーのロジャー・フェデラーなど海外スターやセレブまで錚々たるメンバーのRIMOWAは壮観。
展示の最後には、25年後の自分へ手紙を書けるスペースが設置されていた。つまり、RIMOWAが150周年を迎える年の自分へ宛てたメッセージというわけ。この一大展覧会は東京を皮切りにNY、創立の地であるドイツ・ケルンと各国を巡回。その後全ての手紙がケルン本社で保管されるそうだ。
RIMOWA125年の旅もいよいよ終わり。想像以上の内容にまるで旅行の帰りのような寂しい気分になって、もう一周してしまったほどだ。
展示を巡り、長い歴史と伝統を持っているブランドながら、一方で柔軟に進化を続けてきたことが分かる。近年ではNIKE傘下の、バーチャルスニーカー制作を手がけるデザインチーム「RTFKT(アーティファクト)」とコラボし、NFT領域にも手を広げている。
RIMOWAは万華鏡のように姿を変えていく表参道・原宿という土地とも共鳴しつつ、この地に集まるブランドとも繋がりを持っている。まるで“ターミナル”のようなブランドだと思った。
RIMOWA125周年の旅は終わっても、これからもヒストリーを紡ぎながらRIMOWAの旅は続いていく。この希少な展示は6月18日(日)まで。ぜひフライト気分で予約して、トランクを巡る旅に出てみては?
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