「先輩たちに泥を塗らない」アクションし続けるその先
山田蓮の旗本に集まった仲間たちと営むTATTOO STUDIO YAMADAの特徴は彫り師のスタイルが全員違うこと。師匠やオーナーのジャンルに捕らわれず、それぞれが自分の目指す方向性を目指せる柔軟性がある。だからこそ多様なクライアントに対応できるのだ。それは個性が渦巻く原宿の街とどこか通じる部分ではないだろうか。
「僕自身、原宿で遊ぶという習慣が正直なかったんですよ。だから出店の時も『次は原宿か』という軽い感覚で。ただ『次から次へ、新しい文化が生まれる若者の街』というイメージが強く、今はここに来るのが運命だったのかと感じています。このエリアに降り立ったからには僕らも発信側として本腰を入れていかなくてはいけないなと。それに彫り師を志して店を開くまで東京で遊ぶことが他の同世代よりも少なかったので、楽しませる側でもあり、楽しむ側でもある今がすごく楽しい。」
原宿はタトゥースタジオが多く集まる激戦区。近年は外国人旅行者に多いという飛び込みで彫っていく「ウォークイン」の利用も増えている。当然そんな地域性にも山田は意識を持っていた。
「彫り師さんには従来の暗黙のルールがあります。僕はそれをしっかり踏んでいきたいという想いがあるので、原宿にオープンする時は近所で知っている店や検索して出てくる所に挨拶周りに行きました。僕は師匠がいないから先輩方のお話を聞ける機会は価値がありますね。
ステップを踏んで仲良くさせてもらうのは情報を得る上でも大事。発信する側としても先輩たちに泥を塗らないアクションを頭の片隅に置いています。それを踏まえて僕ら世代が原宿のタトゥーシーンを盛り上げるために何ができるのか、それがこのスタジオの課題であり目標です」
型破りで自由。柔軟な発想を持っていながら、しっかりと地に足をつけ守るべきを守る。原宿の街と同様、伝統と革新の両面を重んじているスタンスに思わず感心させられた。最後にこれからの展望について聞いてみる。
「TATTOO STUDIO YAMADAアメリカ進出のために、今年LAに移住予定です。つい最近も視察に行って帰ってきたばかりなんですけど、そのことで頭がいっぱい。目を閉じるとヤシの木が見える(笑)。まずはオーナーである僕がLAに行って、いずれ仲間たちと『TATTOO STUDIO YAMADA LOSANGELS』ができたらいいなと思っています。そして原宿、LA、もっと他にも世界中に広げていけたらいいですね」
山田蓮はアメリカン・トラディショナル・タトゥーの父と称される“セーラー・ジェリー”ことノーマン・キース・コリンズのタトゥーに魅せられて、現在のスタイルを追求し続けてきたとことがGQ JAPANの2021年のインタビュー記事に書かれている。
黒インクと針を持ち、1920年代のアメリカをさすらいながらタトゥーレジェンドの元を訪ねてタトゥーの技術を身につけていったというセーラー・ジェリー。のちに海軍に入り水夫として働いたことがその異名の由来となっているそうだ。まさに水夫(セーラー)のように大海原を越え、アメリカの地へと旅立つ山田は最後にこう付け加えた。
「まだ若い世代だとされている今の僕だからこそ挑戦したい。そしてこれからもアクションを起こし続けたい。僕らが40代、50代になったとき、20代、30代に良い影響を与えられたらいいなと思います。」
原宿の街の一角で脈打つ、新世代タトゥーカルチャーの鼓動。そのコアを担う山田蓮による、ネクストステージ、世界への航海はまもなくだ。
■TATTOO STUDIO YAMADA
住所:東京都渋谷区神宮前 6-15-10
※予約開始時期、状況、方法については各アーティストにより異なる。
※各アーティストのインスタグラムにてアナウンス
LEN: @len.5(予約︰毎月1日前後に予約開始)
URL:TATTOO STUDIO YAMADA OFFICIAL WEB SITE
OMOHARAREALでは2024年4月17日(水)に神宮前交差点にオープンする『東急プラザ原宿「ハラカド」』5-6F飲食フロア「HARAJUKU KITCHEN & TERRACE」のタイアップインタビューとして「TATTOO STUDIO YAMADA」に取材を敢行。
オーナー・山田蓮を始め、スタジオの運営会社である「株式会社 TOKYO HEART」社長を務めるBuna.(細山亮哉)、所属タトゥーアーティストとして店長を務めるEIKI(内藤栄希)の3名に話を聞いた。関係性も魅力的な3人によるインタビューを併せて読んでみてほしい。
「TATTOO STUDIO YAMADA」LEN、EIKI、Buna.が語る“俺たちの話” 原宿の街とメシ
Photo:Takashi Minekura
Interview:Naoya Koike
Text:Tomohisa Mochizuki