同スケールで描いたゲルニカにも注目
神宮前のギャラリー・NANZUKA UNDERGROUNDにて、スペイン人アーティスト、フリオ・アナジャ・キャバンディング(Julio Anaya Cabanding)の新作個展「Wunderkammer」が開催。2023年9月2日(土)〜10月1日(日)まで。
キャバンディングは、1987年スペイン・マラガ生まれ、マラガ在住のアーティスト。地元マラガ市内の廃墟や橋の下、港など人があまり立ち寄らないような場所に、美術史上の著名な絵画を引用した細密な絵画をグラフィティとして描き、その作品はSNSを通して世界中に知れ渡った。また、昨年には、リヨンビエンナーに参加し、Théodore Chassériau(テオドール・シャセリオー)の名作「Le Christ au Jardin des Oliviers」(「オリーブ畑のキリスト」)を引用した大作を発表したことで、大きな話題となっている。
本展はキャバンディングにとって、NANZUKA UNDERGROUNDで初となる大規模個展。展覧会タイトルの「Wunderkammer」は、日本語で「驚異の部屋」と訳され、ルネサンス後期およびバロック期に確立された様々なオブジェクトをその異なる起源で組み合わせて提示するキャビネットを意味している。キャバンディングは、本展のために恐竜の化石、古代エジプトのミイラ、ピカソやマティス、ゴッホや葛飾北斎、ウォーホルやバスキア、はたまたスニーカーから鉄腕アトムのおもちゃ、そして空山基やハビア・カジェハの作品まで縦横無尽に模倣を尽くした作品を制作し、それらをキャビネット方式で陳列。また、1F展示室ではピカソのゲルニカをオリジナル作品とほぼ同じスケールで描いた作品を展示する。
キャバンディングの創作活動は、廃材のダンボールや石膏ボード、板などを拾い集めることから始まるという。そして、誰もが教科書で知っているような美術作品を、捨てられたゴミや荒廃した街の壁に描く。それは、アートを神格化させるシステムへの強烈なカウンターであり、同時にエコシステムの中で生み出される絵画の最終形態とも捉えることができるだろう。
神宮前・NANZUKA UNDERGROUNDに並ぶ、さまざまな著名アートや誰もが知るアイテムを模倣した作品群は、親しみを感じつつもキャバンディングならではの新しい視点から生まれたオリジナリティに驚かされること間違いなし。また、遊び心満点な展示方法にも注目してみてほしい。
■画像クレジット
©Julio Anaya Cabanding
■概要
フリオ・アナジャ・キャバンディング 個展「Wunderkammer」
開催期間:2023年9月2日(土)〜10月1日(日)
時間:11:00〜19:00
定休日:月・火
場所:NANZUKA UNDERGROUND
住所:東京都渋谷区神宮前3-30-10
>>EDITOR’S VOICE
NANZUKA UNDERGROUNDから歩いて約5分の場所にあるワタリウム美術館では、異国の地・トルコへ想いを馳せる「山田寅次郎展 茶人、トルコと日本をつなぐ」が開催中。また、同じ建物のB1F・オン・サンデーズ&ライトシード・ギャラリーでは、現代美術作家・小畑多丘(TAKU OBATA)と、NEIGHBORHOODのコラボ記念展も開催しているので、ぜひ両方チェックしてみて。
※敬称略
Text:miwo tsuji
INFORMATION
NANZUKA UNDERGROUNDでフリオ・アナジャ・キャバンディングの個展が開催 ピカソやゴッホ、バスキア、空山基などを模倣
- 住所
- 東京都渋谷区神宮前3-30-10
- 営業時間
- 11:00〜19:00
- 定休日
- 月、火
- 開催期間
- 2023年9月2日(土)〜10月1日(日)