
“ドリーム ファクトリー”FENDERが贈るミュージアム級のギターショップ
2023年6月30日(日)に楽器メーカーのフェンダー(FENDER)が、世界初となる旗艦店「FENDER TOKYO FLAGSHIP」をオープンした。B1F〜地上3階まで全4フロア構成と、気合いの入り方がハンパじゃない。一体どんな空間になっているのか。メディア向け内覧会に招待いただいたので足を運んだ。
内覧会はグループに分かれて、決められた時間毎に各フロアを巡った。レポートでは3Fから、上から順に紹介していこう。何を隠そう、この3F「Fender Custom Shop™」フロアが個人的にいちばん興奮したからだ。
ここでは世界のトップアーティストのギター、ベースを手がけるFENDER随一の職人、マスタービルダー(かっこいい!)に、フルハンドメイドのカスタムオーダーができる。普段はホイホイ入れるわけもなく、完全予約制なので、立ち入ることができたのは貴重。
実演を踏まえながらどんなオーダーができるかを説明してくれた。
高級感あふれるVIPルームには1本何百万円もするギターが博物館のように展示されている。車が買えちゃうよ!
特にあのバイオリンの「ストラディバリウス」を製作した職人一族「ストラディバリ」の製法や素材を再現し、使用感にもこだわったモデルは圧巻。その崇高な存在感に見惚れてしまう。
フロアのそこかしこに、“6本弦(ストラト)の魔術師”と呼ばれたジミ・ヘンドリックスなど著名なギタリストたちのモデルが飾られる。ギター好きには夢みたいな場所。まさにフェンダーが呼ばれる“ドリームファクトリー”を体現されている。
フルカスタムオーダーのギターにはトップギタリストがハードに使用したかのような経年変化、例えば塗装の剥がれや擦れ、ネックの変色、といったエイジングも再現できるというから驚きだ。
日本が世界に誇るギタリスト、MIYAVIとともに並べられたアメリカのシンガーソングライターH.E.R.のモデルが個人的にはいちばんかっこよかった。
エレベーターもあるけれど、階下を行き来する螺旋階段にはフェンダーを愛用するアーティストたちがズラリ。ぜひ階段でフロアを移動してみてほしい。レジェンドから最新アーティストまで、あなたの好きなアーティストもフェンダーを使っているかも。
ちなみにビリー・アイリッシュもフェンダーのウクレレを使っているそう。
2FはUSメイドとジャパンメイドのギター・ベースに加え、アンプエリアでは30種類以上の豊富なラインナップが販売されている。超小型ポータブルアンプ「Mustung Micro™」が設置されているので気軽にサクッとお試しできる。ヘッドホンを付けて自分だけが音を聴くので初心者も安心だね。
大音量で鳴らしたい!というプロユースな人には特設の防音ルームが併設されているのでそこで思う存分試奏することができる。アーティストの取材・撮影なんかでもさっそく利用されたそう。
さらにそこから1Fへ。エントランスとなる空間は周囲を大きなガラスで囲まれており、開放感抜群。内覧会時点はオープン日の前日だったため、まだ目隠しのビニールがかけられていたが、表の通りから中の様子を近くで興味深く覗き込む人たちも大勢いた。
1Fではギターだけでなく本格的なアパレルライン「F IS FOR FENDER」やマグカップやデュフューザー、クッションなどのライフスタイルコレクションなども展開。FENDERのデザインがモダンに落とし込まれたアイテムの数々は、ファンにとってはたまらない代物ではないだろうか。ロック好きな人へのお土産にもおすすめ。
ピック型のテーブルもかわいらしい。1Fフロアをグルりと走る曲線を結び俯瞰すると、フェンダーのストラトのかたち(エレキギターと言われてたぶん一番最初に想像するであろう形)になるよう店舗が設計されているそう。なんともダイナミックな仕掛けだ。
葛飾北斎の「富嶽三十六景」とコラボしたモデルも。しかもこれ、フェンダーが新たに提案している、アコースティックギターとエレキギターのハイブリッドモデル。DJ機器や作曲機材の進化が著しい昨今、ギターもまた進化しているのだと実感した。
フェンダーの「Artists are angels,Our Job is To give them wings to fly.(アーティストは天使であり、彼らに飛ぶための翼を与えることこそが、我々の使命である)」というヴィジョンとミッションが刺繍によるグラフィックで表現されたフラッグは圧巻の迫力。
そして最後は地下1F。ここにはアコースティックギター、そしてウクレレを取り揃えている。
インテリアとしても飾っておけるくらい、ストラト型のウクレレが本当に可愛かった。気になりすぎて店内を全て回ったあと、値段を確認しに行ったくらいだ。20,000円〜30,000円台とギターと比較するとお手頃。
B1Fのもうひとつの目玉はカフェ。フェンダー創業の地でもあるカリフォルニアの人気コーヒーブランド「VERVE COFFEE ROASTERS」監修の「FENDER CAFE powerd by VERVE COFFEE」である。
ちょっと腰を落ち着けての休憩したいとき、カジュアルな打ち合わせ、ちょっとしたデスクワークにも使えそう。クリエイティブなギターに囲まれた空間で、創作のアイデアが沸きそうだ。
実際に内覧会では提供されるコーヒー、サンドイッチ、スイーツなどが振る舞われた。ヴィーガン向けのメニューもあり、とくにコーヒーはこのカフェのために厳選した豆と焙煎度合いを調整した「Fender Orihinal Coffee」は香りも良くとてもおいしかった。アルコールメニューや季節限定のドリンクなども提供するという。
さて、いかがだっただろうか。ここまで読んでもらったなら「FENDER FLAGSHIP TOKYO」が従来の楽器店とは一線を画すショップであることがお分かりいただけただろう。好みは分かれるかもしれないが、初心者や原宿を訪れる観光客にとっても親しみやすく間口の広さが魅力だと感じた。
正直、自分はギターを一本も持っていないし、もちろん弾くこともできないが、それでも店内を巡っていて楽しいと思えた。プロユースはもちろん、これから始めたいという人も思わず手に取りたくなる魅力が詰まっている。
最初は「なぜ原宿にフェンダー?」と疑問符が浮かんだのが正直なところ。しかも、世界初の旗艦店だ。リリースでは「常にエネルギーに満ち溢れ、新たなトレンドを発信し続ける東京・原宿」と書いてあったが考えてみると、もともと原宿はアメリカンカルチャーとは切っても切れない場所である。戦後、アメリカの駐留都市として異文化を取り入れ発展してきた歴史がある街だからだ。
アーティスト・高木耕一郎さんがOMOHARAREALに語ってくれたように、パンクショップの聖地としての側面も過去にはあったし、さらに遡れば、ロカビリーを踊るローラー族がホコ天だった表参道に集まり、一世を風靡した時代もある(流行の一端を担ったピンクドラゴン、ローラー族は未だ健在だ!)。
今はその匂いが薄れてしまっているかもしれないが原宿の歴史を鑑みると、ロックンロールの血、そのDNAが流れている街とも言えるのではないか。そんなことをひとしきり考えながら内覧会を終え、帰る頃には「この場所にフェンダーがあっても面白いのかもしれない」と腹落ちしていた。
ギターというのは不思議なもので見ているだけでもワクワクするプロダクト。楽器というツールであり、アートともいえる存在感を放つ。
いわば「FENDER FLAGSHIP TOKYO」はギターを通じて夢を見させてくれる、ミュージアムのようなショップだ。街のランドマークのひとつとして、新時代の音楽の風を原宿に吹かせてくれるかもしれない。
■FENDER FLAGSHIP TOKYO(フェンダー フラッグシップ トウキョウ)
住所:東京都渋谷区神宮前1-8-10
営業時間:11:00~20:00
定休日:年中無休 (年末年始を除く)
Text & Photo:Tomohisa Mochizuki
