「革命が終わらない街」建築家・各務太郎が解説する表参道&原宿の歴史
(2016/06/26)
例えば東京をまったく知らない外国の人に、たった一枚の写真で東京を伝えるとしたら、どこを切り取ればいいだろうか。夜景の中でひときわ輝きを放つ東京タワー、無数のひとが往来する渋谷の大交差点、江戸の薫りを残す浅草、寿司詰めになった朝の満員電車に、秋葉原のコスプレ少女たち。どれも東京だが、どれかひとつだけでは、東京は語れない。東京は、世界でも数少ない、中心が存在しない都市なのだ。その副産物と言ってはなんだが、「中心性」はたくさんあることに気付く。渋谷、新宿、下北沢、銀座、六本木等。挙げればキリがないほど、全く異なる求心力を持った街が無数に点在している。なぜこのような混沌とした都市が出来上がったのだろうか。最も大きな要因と考えられるのは戦争だろう。戦後、焼け野原になった東京は、文字通り、広大な更地となった。それは、ありとあらゆる意志や文化を、ありのままに投影できる、映画のスクリーンのような場所でもあった。そこでは、僅かに遺された街の断片や、地形の機微を頼りに、あらゆるところで、同時多発的に様々なカルチャーが産声を上げた。東京という大いなる物語が、銀幕都市に投影され始めたのだ。中でも原宿は、衝撃的なほどカラフルなイメージを映し出し、今日まで異彩を放ち続けることになる。
Text:Taro Kagami