現代アートと温かいメッセージ
"等身大の社会貢献"を意味する「ソーシャライジング」をコンセプトにしたTRUNK(HOTEL)にて、2020年3月13日(金)〜16日(月)の期間で開催予定だった展覧会「SHINKI, TERAO, NISHIKAWA in TRUNK(HOTEL)」。社会福祉法人 素王会のアートスタジオ「アトリエ インカーブ」に所属する3名の現代アーティストのイベントでしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により中止となりました。アーティストはもちろん、アトリエ インカーブのスタッフ一同が開催に向けて準備をしていた展覧会を、少しでも多くの方に見ていただこうと、ここで再現することになりました。
◼︎「アトリエ インカーブ」とは
アトリエ インカーブは、2002年に設立された社会福祉法人素王会のアートスタジオ。18歳以上の、知的に障がいのある現代アーティストたちの創作活動の環境を整え、彼らが作家として独立することを支援している。所属人数は25名で、2005年にニューヨークでのアートフェアに出品以降、海外・国内の美術館やギャラリーで展覧会が企画・開催されている。
< 新木友行さんの作品&メッセージ >
「元気やパワーを届けられたらうれしい」
「走り高跳び」2020年、ペン、色鉛筆/紙、 860×1780mm
【作品解説】
障がいのある人・ない人が分かれることなく、一緒に競技しているシーンをイメージして描きました。
色は元気になる明るい色を使っている。選手が力いっぱいたたかっている。その力強さを明るい色を使いながら描いた。
作品を通してパラスポーツの素晴らしさや競技の力、選手たちの勇気を感じていただけることを心から願っています。
「ジャンプボール」2019年、ペン、色鉛筆/紙、 960×728mm
【作品解説】
試合を生で観戦して胸に響いた。車椅子バスケットボールを描こうと決めた。
選手同士のあついあつい試合、凄いスピード感や力強さ、その中でもこのシーンを描きました。
「ドロップキック」2019年、ペン、色鉛筆/紙、 860×1780mm
【作品解説】
ドロップキックは試合の終盤に出す技。作品の中に出てくるハートの形はとても気に入っていて、いろんな選手のコスチュームに加えている。作品をみていただき、元気なひとはもちろん、いま元気がないひとにも、さらに元気やパワーを届けられたらうれしいです。
【イベント中止に対する想い】
展示が中止になったことは残念だけど、是非またの機会に作品発表をしたい。今は新型コロナウイルスで苦しんでいる方が多いと思いますが、前を向いて頑張って元気を出してほしいです。
【今後の目標】
東京の大きな美術館で個展をしたい。いつか、独立して一人のアーティストとしてさらに活躍したいです。
新木 友行:作家紹介URL
1982年生まれ。大の格闘技好き。黒の繊細なラインが無骨なファイターたちの隆々とした筋肉の動きと体のもつれを的確にとらえ、大胆にデフォルメされた技の数々は躍動感に溢れる。ロンドンで開催された世界最大の公募展「ロイヤルアカデミー・オブ・アーツ サマーエキシビジョン2018」に選出、さらに「東京2020 オリンピック・パラリンピック公式アートポスター」のアーティストの一人に選ばれるなど国際的な評価を得ている。
東京2020 オリンピック・パラリンピック公式アートポスター関連URL
・アトリエ インカーブ公式サイト・東京2020公式アートポスター紹介ページ
ー
< 寺尾勝広さんの作品&メッセージ >
「この機会にWeb上で作品を見て欲しい」
「アートステージシンガポール+インカーブてん」2016年、ペン/キャンバス、1167×1167mm
【作品解説】
シンガポールのアートフェア出品の際に描いた。モチーフはアートフェア会場の様子。
「ばけものとてつのずめん」2014年、インク、クレヨン、スクラッチ/ベニア板、840×1760mm
【作品解説】
鉄骨の図面の中には三体のばけものがいて、それぞれの模様が違う。
「きりいたデザイン」2006年、ペン、コラージュ/厚紙、250×350mm
【イベント中止に対する想い】
展示が中止されたことは残念だけれども、ぜひこの機会にWeb上で僕の作品を見て欲しい。
【今後の目標】
もっと大きな作品を描いてみたい。ぼくは現在60歳だが、元気なうちに東京に行ってライブアートをしてみたい。
寺尾 勝広:作家紹介URL
1960年生まれ。父親が経営する鉄工所で溶接工として20年間働いた後、鉄をモチーフに制作を開始。本人が「図面」と呼ぶ緻密なドローイングには、鉄骨の柱をあらわす直線と溶接の目印をあらわす記号がひしめく。ニューヨークやシンガポールなどの海外アートフェアにも多数出品。また「東京オペラシティ アートギャラリー」など、国内の美術館・ギャラリーでの豊富な出品経歴をもち、インカーブを牽引する存在。
ー
< 西川遼志さんの作品&メッセージ >
「制作だけは変わらず続けていきたい」
タイトルなし 2017年、紙 380×540mm
「村」2016年、紙 380×540mm
「はし」2016年、紙 380×540mm
【今後の目標】
今のまま制作だけは変わらず続けていきたい。
西川 遼志:作家紹介URL
1986年生まれ。下描きをすることなく、真っ白な画用紙を潔く、かつ繊細な手つきで切り欠いてゆく。本や写真は参照せず、想像や記憶をたぐりよせながら切り出す画面には、ゆったりとした余白を背景に網目状の建造物が浮かび上がる。近年、日本最大級のアートフェアである「アートフェア東京」にも続けて出品し、コレクターが増え続けているアーティスト。
国内外で活躍する3名の現代アーティストのメッセージは、どれも前向きで温かいものばかりで、慰められているような気持ちになりました。この繊細ながらも力強さを感じさせる作品たちが届き、多くの人にパワーを与えられますように。
TRUNK(HOTEL)では、コンセプトである「ソーシャライジング」のフォーカスポイント“DIVERSITY”、“LOCAL FIRST”、“CULTURE”の観点から、様々な日本の作家の作品を館内に常設展示したり、定期的にギャラリーを開催している。正規の美術教育や訓練を受けていない作家の作品も数多く展示するなど表現されるものをジャンルで隔てることなく鑑賞できる場を作ることで、来館者にアートを楽しむことを通して「気づき」が生まれることを目指している。アトリエ インカーブは、これまでホテルエントランス付近の様々な作家を紹介するスペースで何度も作品を展示するなど、TRUNK(HOTEL)とお付き合いが深いアトリエの一つである。
Text:Ayaka Minoda