若き14名のテキスタイルと熱い想い
2020年3月11日(水)〜15日(日)の期間、青山の複合文化施設「スパイラル」にて開催される予定であった東京造形大学テキスタイルデザイン専攻領域有志による卒業制作展2020『ot:』。2003年頃から毎年恒例の本卒業制作展は彼ら・彼女らにとって入学時から目標としていた晴れ舞台でしたが、残念ながら新型コロナウイルス感染拡大の影響により中止となりました。この街で披露されるはずであった4年間の集大成となる展示会を、形を変えて多くの方に届けられるよう、ここで再現することになりました。展示会名の『ot:』は「our textile:」の略であり「私たちのテキスタイルはつまり…」という意味。それぞれの若きアーティストが、テキスタイルデザインを通して自分の世界観を表現します。じっくりご覧いただければと思います。
<< ファッションテキスタイル >>
作家:yukinaさん
「いつか作家としてリベンジする」
【作品解説】
大きな柄の布を小さく裁断すると、違った柄が見えてくる。いたってシンプルな事だが、これはテキスタイルデザインの大きな魅力の一つであると考える。切る方向や場所の変化による印象の差を感じてもらいたい。
【イベント中止に対する想い】
悔しくて堪りませんでしたし、しばらく受け入れることができませんでした。しかし、中止という判断は英断であり、どうしても抗えないものであったと思います。この行き場のない悔しさが、これから先の作品制作の原動力となることを信じています。
【今後の目標】
大学で学んだことを基盤に、日々自分なりのスタイルを提案し続けていきたいと考えています。今回中止になってしまったspiralでの展示ですが、いつか作家としてリベンジさせて頂きたく思っております。
yukina
1998年1月13日生まれ、宮城県出身。東京造形大学造形学部デザイン学科テキスタイルデザイン専攻領域 卒業。2019年度東京造形大学卒業研究・卒業制作展において、最優秀賞にあたる「ZOKEI賞」を受賞。現在はy113の名で作家として活動中。
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作家:goさん
「この経験を糧に前へ進みたい」
【作品解説】
「私たちに気づいて」
ファッションに命を吹き込むことをコンセプトにウールと光ファイバーを用いて織物で光る服を制作しました。生地を光らせ点滅させることで生命の呼吸やエネルギー、命を燃やし続けている様子を表現しています。モチーフはヒカリキノコバエという光を放つハエの仲間です。左から幼虫、蛹、成虫をイメージしています。 天然素材であるウールと新しい素材である光ファイバーを組み合わせ、新たなテキスタイル表現を研究しました。
【イベント中止に対する想い】
1年間頑張ってきた卒業制作を発表できる場所だったので中止はとても残念ですが、今では中止となり本当によかったと思います。今回の中止で様々なことを考えさせられました。どのような立場でどのように考え、どのように気持ちを整理するのかとても難しかったです。この経験を糧に前へ進んでいきたいと思います。最後までご対応してくださったスパイラル様や教授、これまで展示に関わってくださった全ての皆様に感謝致します。
【今後の目標】
大学院ではテキスタイルにインタラクションの要素を取り入れ、体験できるテキスタイルを研究し ていきたいと考えています。大変な時期ではありますが、できることから進め、目標に向かって歩 んでいきます。
go
1996年生まれ愛知県出身。東京造形大学造形学部デザイン学科テキスタイル専攻領域 卒業 同大学大学院デザイン研究領域在学中。
Instagram:@go_run_textile
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作家:望月尊世さん
「表参道での展示は4年前から楽しみだった」
【作品解説】
一人でいるときの自分と誰かといるときの自分は同じ様で同じでは無い、自分でも気が付かないうちに演技をしてしまっているのではないかと思う。生活の中で演じているならば日常を舞台と捉えた衣装を作りたいと思った。 普段カジュアルに着ることのできるスウェットのリブだけを残し、他の生地を非日常的なテキスタイルを使用することで日常で着ることのできる衣装を目指した。
【イベント中止に対する想い】
4年間制作していく中で私もいつかは表参道で展示が出来るのだと楽しみにしていたのでイベントが中止になってしまい悲しく悔しいですが、今回この様な機会を頂き沢山の方に作品を見ていただけたら幸いです。
【今後の目標】
今後も作る事をやめず、ゆっくり自分が形にしたい思いを作品として発表していけたらと思ってお ります。
望月尊世
北海道出身。東京造形大学造形学部デザイン学科テキスタイル専攻領域 卒業。
Instagram:@mochi.ta
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作家:一松 岳さん
「とても残念な気持ち」
【作品解説】
世界中から大量に廃棄されるファッションプロダクトを取り上げ、新たな服へとデザインする。不要になった第一世代のファッションプロダクトを一つの素材として捉え直し、その素材の持つ特性や文化背景、意匠性などをもとにして第二世代の服へと蘇らせる。その服が起点となり一人でも多くの人たちと共に、「モノ」と私たちの関係、ファッションと環境の関係を考えていくきっかけを目指す。
【イベント中止に対する想い】
とても残念な気持ちです。
【今後の目標】
素材が服という形を持つことで、 着る人に発見と感動を与えることを目指す。
一松 岳
1995年生まれ。東京出身 東京造形大学大学院 造形研究科 テキスタイル専攻領域。
2017年度 卒業制作展 最優秀賞受賞、2019年度 卒業研究展 最優秀賞受賞。
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作家:岡田谷 有生さん
「4年後のスパイラルでの展示が憧れだった」
【作品解説】
「色をいただき 色をかえす」
昔から空を見るのが好きです。場所、時間、空気感、色、光、どんなことを思いながら見ていたか...様々なことを思い出します。空は毎日変化し、無限の絵の具を持っています。 空の絵の具をいただいて、紡ぎあげた糸で私の中に広がる空を織りあげました。
【イベント中止に対する想い】
高校生の時に初めてスパイラルへ卒業制作展を見に行き、私も4年後のスパイラルでの展示が憧れでした。入学後はテキスタイル専攻の仲間と展示することが目標となりました。このようなことになり、 大好きなみんなの作品を見てもらえず、ただただ残念です。みんなと制作し、準備した時間はかけがえのないものです。
【今後の目標】
大学では作品を生み出す難しさ、大変さを感じながらも、それ以上に創る楽しさと完成した時の喜びを知りました。今後も手仕事と色を大切に、制作を続けていきます。また作品を通じて、テキスタイルについて知らない方にもテキスタイルの美しさ、面白さ、楽しさを少しでも身近に感じていただけたら、嬉しいです。
岡田谷 有生
1997年 神戸市出身 東京造形大学造形学部デザイン学科テキスタイルデザイン専攻領域 卒業 同大学大学院デザイン研究領域在学中
Instagram:@yuki_artwork
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<<ライフスタイルテキスタイル>>
作家:田尾百佳さん
「作ることを続けたいと強く思った」
【作品解説】
日常で遭遇した面白いと思う場面や、 輝いていると思った人など自分のなかの「好き」を見つけるのが日常の中の日課でした。 しかし、そのような 「好き」という感覚は人の趣味嗜好によってかなり異なると思います。 その趣味嗜好の違いを色々な人に楽しんでもらえるものを作りたいと思ったのがきっかけでした。 また私にとってしっかりした睡眠を取ることは、人とコミュニケーションを取れることと密接に繋がっていました。そこで、私の「好き」というものを楽しく体験してもらいたい。また沢山の人の「好き」を知って楽しい会話が生まれたら、という気持ちで布団と枕を制作しました。
【イベント中止に対する想い】
一番は、学外展の展示が開催されなかったことがとても悔しく200文字では表せない憤りすら感じます。 そして憤りを感じるのは、自分の学内展ではやりきれなかったことに対する後悔も含まれているのだと思います。 しかし、今でもあの時卒展を開催しなかったことが正しかったとは言い切れない自分がいます。 コロナが人の命を奪うと今私は怯えています。 大切な人のためにも不要不急の外出も完全に控えています。しかし、頭では理解していても、気持ちの整理が追いつかないこともあるのだと思いました。
【今後の目標】
私は、学内展までに制作している時も同じ作品は二度と作れないのだから悔いのないようにと思って制作していたつもりですが、どこかで次もあると思っていたのかもしれないです。 今回の経験で、当たり前があるとは思わず後悔しないように物事に取り組まなければならないと痛感しました。また皮肉ですが、スパイラル卒展の中止のおかげでどんな理由があろうとまた作ることを続けて行きたいと強く思わせられました。これまで制作してきた熱意を忘れずに、またどこかで私の作品をお披露目することができるように生活していきたいです。
田尾百佳
1997年生まれ、埼玉県出身。東京造形大学造形大学造形学部デザイン学科テキスタイル専攻領域 卒業。
Instagram:@udon_mogg
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作家:野口美晴さん
「少しでも誰かの心に触れられたら」
【作品解説】
「使われない文房具」 綴れ織の作品です。すべて原寸大で文房具を表現しました。テーマはものとの関わりを考えること。 身の回りには色々な物が溢れています。普段何気なく使っているものを素材を変えて表現することで、あえて使えないものにする。そして初めて気づく事が私達にはたくさんあります。 文房具は小さい頃から現在まで、誰もが使ったことのあるものです。何かを思い出したり、見る人それぞれに何を思うか・感じるかを考えてものを大切にして欲しいという思いを込めました。
【イベント中止に対する想い】
この卒業制作展に向けて4年間を歩んできました。特にこの1年は作品を作る傍らで少しずつ準備を進めてきたので、中止になってしまいとても悲しい思いをしました。それでもこうして作品を見てもらえる機会を頂く事が出来たので、少しでも誰かの目に触れ、誰かの心に触れられたらなと思います。
【今後の目標】
大学4年間で出会えたこの綴れ織りは、この先の私の人生にも寄り添ってくれるものだと思ってい ます。どんな形でも、作品を作っていけたらなと思います。
野口美晴
1998年生まれ、東京都出身。
Instagram:@weave.momiji
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作家:向井 小町さん
「私達の大学4年間の集大成を見て欲しい」
【作品解説】
「BABY STYLE」 日本の伝統技法である板締めで染めた布で赤ちゃんのスタイを制作。現代的な服の形にすることで伝統技法を身近に感じられる。伝統技法が次の世代に継承され続けていくことを願い、赤ちゃんが身につけるものにした。
【イベント中止に対する想い】
大学入学前から憧れであったスパイラルでの卒展が中止になると聞いたときは非常に残念な気持ちでいっぱいでした。しかし新型コロナウイスル感染拡大を防ぎ、私達、そして周りの方々の健康を保つためにはやむを得ないことだと思います。卒展は中止になりましたが、私達の大学4年間の集大成である作品を1人でも多くの方に見ていただきたいと思っています。このような機会を与えていただき感謝します。
【今後の目標】
今後はインドという異国の地で精一杯仕事をして、少しでも社会に貢献できるようになりたいです。新型コロナウイルスの影響で赴任時期が大幅に遅れましたが、その分、英語の勉強など頑張り、新生活に備えたいです。インドでは染織が盛んなので仕事をしながら制作活動も続けていきたいと思います。日本とは文化も言葉も何もかもが異なる場所でいろんなことを吸収し、自分自身を成長させたいです。
向井 小町(むかい こまち)
1997年生まれ。三重県出身。東京造形大学造形学部デザイン学科テキスタイル専攻領域 卒業。 卒業後はインドで仕事をする。
Instagram: @komachi_0428
Twitter: @komachi_0428
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<< アートテキスタイル>>
作家:劉瑾瑶(リュウキンヨウ)さん
「仕方ない。健康は何よりも重要だから」
【作品解説】
「テテテ」この作品は繋がっている手を原型とし制作した。糸によって人間関係がある。すべてのものは繋がりがある。人と人、人とものの間に不思議な縁、絆さえがある形を表現するため、作りました。異なる素材、風合いの糸の組み合わせ、掌から手の先までの隆起は異なる触感や視覚を表現する。
「6:4:18」この作品は、生物実験みたいで、シャーレの中で命を創造しすると思う。透明なPVC の部分は細胞、硬い紙は大地、縫う糸は血管みたいです。この一本一本の糸は細胞みたい命の始 めみたい、もっとも基本的、欠かせないものだと考えている。細胞がないと人類も存在しない、 この一本一本の糸がないと以上の作品も存在しない、全てのものは孕むプロセスがあります。
【イベント中止に対する想い】
イベントの中止は甘んじないけど、仕方ないです。健康は何よりも重要なことです。
【今後の目標】
まず好きな仕事を決めて、経験を積みます。その後、作品は新しいアイデアを考えて作ります。
劉瑾瑶(リュウキンヨウ)
1993年6月18日生まれ。中国蘭州市出身 東京造形大学大学卒業。私の研究は、布、糸などの繊維素材の異なる美しさ、質感をグラフィカルに組み合わせ、視覚のみならず様々な刺激を人に与えることができる作品の制作を目的としている。
受賞経歴
2019年8月「The 13th Creative China Design Completion 」服装デザイン分野三等賞 受賞 /北京中外視覚芸術院・中国創意同盟・中外設計研究院·「中国創意設計年鑑」编委会
2019 年11月「中国創意設計年鑑2018ー2019」収録/北京中外視覚芸術院・中国創意同盟・中 外設計研究院·「中国創意設計年鑑」编委会
2020年1月「ZOKEI展」ZOKEI賞 受賞/東京造形大学
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作家:川本 健太さん
「悔しいがこういう形で見てもらえて嬉しい」
【作品解説】
「connect」
皆さんは色を身につけるとき何を考えますか?自己表現、ただ単にその色が好きだから、はたまたこの色を身につけていると落ち着くからなど様々な理由があると思います。私は、色はよくも悪くもとても主張が強いものだと思います。その主張の強さにときに私は時々、窮屈さを感じていました。ランドセルやトイレなど、様々な事柄を色で分別し幼い頃から植え付けられた、色の印象というのはとても強いものだと思います。その一方で、色には人と人とを繋げる力もあると感じています。小学生の時、私は水色のランドセルを買ってもらいました。それは周りから見ると少し浮いていたけれど、それがきっかけで会話が始まり、それまで知らなかった人との間に『つながり』が生まれたように感じました。
そこで色が与える『印象』と『つながり』の二つの点に着目しました。染めの技法を使い、自分の中で生まれる色と色が複雑に混ざり合いながらできた色を使うことで、まだ世の中に出ていない分別されることのない色を目指しました。そこには色と色がぶつかり合いながら徐々に混ざり合うものもあれば、グラデーションのように溶け合うように混ざり合う色もあります。
そうして製作した生地を一枚一枚ランダムな場所でカットしスカーフにしました。スカーフは年齢、性別などあらゆる壁をすり抜けて誰でも身につけることができるからです。そしてそのスカーフを一枚ずつバラバラに再構築してつなげていき、色を身につけることで人と人が繋がっていっ てほしいという思いを込めて制作しました。
【イベント中止に対する想い】
とても悔しかったです。ですがこうした形で多くの方に見ていただくことができてとても嬉しいです。
【今後の目標】
作品を自分の中で完結せず、多くの方に触れていただけるようにしていきたいです。
川本 健太
東京造形大学造形学部デザイン学科テキスタイルデザイン専攻領域 卒業。同大学大学院デザイン研究領域在学中。
Instagram:@kawa_moto_
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作家:加藤緑さん
「多くの時間と努力が詰まった作品達を見てほしい」
【作品解説】
「記憶の花瓶」 インドの伝統織物ジャムダニ織は、花瓶という意味があり、花を美しく飾り映す。主に幾何学的、植物的、そして花柄のデザインが使われる。それに従い、花に対するイメージや記憶をデザインに起こし、ピクセル化した花を一列ずつ丁寧に数え、小さい板ひをいくつも同時に扱い織り込む。 最も単純な織物組織”平織り”をベースとした織物と単純な緯糸の入れ方で、複雑なデザインが生まれ、細かい程綺麗な曲線ができ、どんな形でも織ることが可能だ。
【イベント中止に対する想い】
この度は、みんなの努力や成長が詰まった作品を直接見て頂けず大変虚しく残念だ。たくさんの時間をかけ、努力して手を施した素晴らしい作品達をこれを機に是非見ていただきたい。そしてイベント中止が相次ぎ、途方に暮れていた中、このような場を設けていただけたことを心から感謝したい。またいつか別の機会で披露できればと考えている。そしてこちらを見ている全ての方、どうかお体を大切に。一日でも早く平和な生活に戻ることを望んで。
【今後の目標】
「一つ一つ大事に取り組み、何事も途中で諦めず最後までやり遂げることで味わえる大きな達成感は何物にも代えがたい」。地道に織り上げ、感じたことだ。今までの学生生活を振り返り、長期間に渡る作品制作は、自分にとって本当にかけがえのない経験で根性や努力、忍耐、情熱、柔軟性などを学び、熟していく中で苦が快感に変わった。今後も前向きに楽しく活動していきたい。展示はもちろん、時間や機材が揃えば制作するだろう。
加藤緑
1997年生まれ。神奈川県出身。2020年 東京造形大学造形学部デザイン学科テキスタイルデザイン専攻領域 卒業。 同年 内野株式会社 入社。主にタオルの企画・デザイナーとして活動中。 教授からの紹介で、インドの伝統織物ジャムダニ織を知る。透けた美しい布、色糸の入り方、職 人の繊細な手作業の素晴らしさに感動し、私も同じように制作したいと考え、今回の作品"記憶の 花瓶"に至る。仕事の合間を縫い今後も展示・制作活動を予定。
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作家:吉岡陽子さん
「悲しさをバネにスパイラルでの展示を目指す」
【作品の解説】
柄は、リピートすることによって物語性を生み出す事ができます。絵本の中の世界のような可愛らしい物語を柄にしました。
『なんかようかい?』:妖怪同士でちょっかいを出し合っている柄です。
『いたずら』:森の動物達が葉っぱに隠れながらいたずらしている柄です。
『ピザ工場』:いつも食べているピザはこのように作られているかも?
『愛す国』:みんなでアイスクリームを作っています。
『food chain』:食物連鎖を柄にしました。
【イベント中止に対する想い】
先輩たちが毎年展示する度に「ここで展示できるのかぁ」と、ずっと憧れていた青山のスパイラルでの展示が中止になってしまいとても悲しいです。ですが仕方がない事なので、この悲しさをバネに、またいつかスパイラルで展示できるように頑張っていこうと思います。
【今後の目標】
将来は個人のテキスタイルデザイナーになりたいです。可愛らしい柄のデザインが好きなので、そ の柄を生かした雑貨などをデザインしたいです。その為に企業のデザイナーとして仕事をして学び たいと思います。
吉岡陽子
1997年生まれ。神奈川県横浜市出身。 東京造形大学造形学部デザイン学科テキスタイル専攻領域 卒業 卒業後の進路 デザイナー。
Instagram:@440ka_textile
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作家:安部広暉さん
「作品自体を気に入っていた分とても残念」
【作品解説】
羊毛フェルトと鉱物の二つのテーマで作品を作りました。鉱物は小学生から中学生まで興味を持っていたもので、自由研究にするほど興味を持っていました。そして羊毛フェルトは中学生から今も夢中になっているものです。昔、夢中になっていたものから今につながる積み重ねられていく時間という意味で「時間の蓄積」というタイトルです。
【イベント中止に対する想い】
最後の制作は約一年間時間を使い、作品自体を気に入っていた分とても残念に思いました。 状況からみても仕方がないことだが少しやり切れない気持ちです。
【今後の目標】
社会人になったら学生の時のように作品を作ったりする機会は少なくなってしまいます。しかし、元々手芸は趣味でやってきたことで今でも好きなことです。そこで終わりにするのではなく 自分の好きなものはこれからも続けていきたいです。
安部広暉
1997年11月7日生まれ 東京都出身 東京造形大学造形学部デザイン学科テキスタイル専攻領域 卒業 手芸専門店勤務
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作家:松本 夏海
「良いことも悪いことも、すべて貴重な経験」
【作品解説】
機織りの産地を巡る最中、大量の絹糸が処分されていく様子を目の当たりにした。ゴミのかたまりが幾つも並ぶその光景はどこか日常的で、些細なもののように見えてしまった。 自分に出来ることはこれらの糸を使って作品をつくり、デザインによって価値を変化させるこ と。そして絹糸をつくる際に犠牲となってしまうお蚕さんの魂を尊び、冥福を祈る為、この作品 を制作するに至った。
【イベント中止に対する想い】
学外での卒業展が中止となり、自分の中で区切りを付けるのにやや時間がかかりました。今まで出来ていたことが制限され、不自由だと思うこともあります。ただ、ぽっかり空いた時間の中で 今まで片付けられなかったものを整理したり、実家の庭に来る雀を眺めたり、新しい発見が沢山ある毎日が楽しいと思えるようになってきました。良いことも悪いことも、すべて貴重な経験になっています。
【今後の目標】
今後は縫製の仕事やアトリエのお手伝いをしながら、健康的にものづくりを続けたいです。
松本 夏海
東京造形大学造形学部デザイン学科テキスタイル専攻領域 卒業 第70回丹後織物求評会 日本人繊織物工業組合連合会理事長賞 受賞。
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本卒業制作展が開催される舞台であった複合文化施設・スパイラル
「悔しい」「やりきれない」という思いと一生懸命折り合いをつけ、前を向こうと努力している若きアーティストたち。本人たちから寄せられたコメントは心を打たれるものばかりで、本展が中止となったことを、編集部としても改めてとても残念に思いました。しかし、この記事を通して、作品の魅力や彼・彼女らの想いが、少しでも多くの方に届き、未来に繋がりますように。
Text:Ayaka Minoda