山田は止めても成す男
「TATTOO STUDIO YAMADA」オーナーは彫り師の山田 蓮。スタジオメンバーと運営するYouTubeチャンネル「OMOSSY CHANNEL / オモシーチャンネル」も反響を呼んでいる気鋭のタトゥーアーティストだ。
2017年にカナダへタトゥー修行のワーキングホリデーへ。2018年に帰国した彼は下北沢の定食屋の間借り、神泉でのスタジオ立ち上げを経て、2021年にキャットストリート裏手の神宮前6丁目にやってきた。まずは引っ越してきた時のことを振り返ってもらおう。
山田:あれよあれよと仲間が増えて、もうスペースが全然足りない。だから新しいスタジオを探していたんです。でもタトゥーという職業柄、なかなか貸してくれるテナントが見つかりませんでした。『都内ならどこでもいい/作業に必要なスペース/バイク用のガレージがある』という条件で、結局1年ほど探して今の場所を見つけました。
家賃は希望していた家賃の3倍以上。しかし「ここを逃したら他はないだろうし、すぐつぶれてもいいからスタジオを作ろう」と移転に踏み切ったという。このエリアでは長いこと空いていた場所だけに「ついに新しい人たちが入ってきた」という周囲の期待感も大きかったはずだ。
過去には塗装屋をしながら、週に1回お客さんに彫れるかどうかという時代もあった。彫り師を志したのは山田が20歳だった2015年。21歳で本格的に彫り師として活動を始めていることから、2016年のことだろう。そして飛躍の鍵となったのが2017年〜2018年のカナダ滞在中、日本と海外のタトゥーカルチャーのギャップを埋めようと始めたYouTuberとしての活動だ。
山田が彫り師だけでなく農業やアパレル事業などのために立ち上げた「株式会社TOKYO HEART」の代表取締役・細山亮哉(BUNA)はYouTubeチャンネルを始める前の彼から電話を受けている。
細山:1年の留学予定なのに10カ月目くらいで「日本に帰って彫り師とYouTubeをやる」と。当時はまだ日本において彫り師でありながらYouTuberという人は知る限りいなかったので、僕も最初は「なぜ?」と意図がわかりませんでした(笑)。その真意はこういう取材に語っているのを見て知っていくんですけど、まあ、止めたとて言ったらやる男なので。
宣言した通り、2018年に帰国してから即カメラを買って動画を撮って、YouTubeにアップし始めた。「OMOSSY CHANNEL」を立ち上げて登録したのが2019年のことです。それから動画をコンスタントに上げていって、だんだんと軌道に乗っていくのを見て、蓮がやりたかったことを伝えられているなと実感しました。
現在の店長・内藤栄希(EIKI)もYouTubeで動画を観て山田の存在を知ったひとりである。それからInstagramの募集を見て、彫り師としての経験ゼロながらもスタジオの門を叩いた。採用面接は自分ひとり対フルメンバーによる緊張感のただよう雰囲気だったという。
内藤:圧迫面接でした(笑)。蓮さんは全然話さないし、途中でタバコを吸い始める。でも最終的には受かって、今は先輩方の背中を追わせてもらいつつ、一緒に戦わせてもらっている感じです。
その面接をオーナー自身はあまり記憶していないと言うが、聞けば経験からくる直感にフックする人材をチェックしていた。
山田:経緯などの基本的な面接は他の人に任せて、僕は何となく「良さそう」と感じる人を選ぼうと思っていたんです。だから観察する役回りに徹しました(笑)。栄希に関しても何か僕に引っ掛かる部分があって採用したんです。自分のスタイルやセンスはもちろんですが、彫り師といえども社会人という軸もないとやっていけません。その点で彼は接客もしっかりできるし、ある程度のところで店長を任せました。