余白とグレーが新鮮な「LUV」
かねてよりOMOHARAREALでも注目してきたペインターのLYさん。過去にはロングインタビューや展示などを行ったことがあるが、今や世界中にファンやコレクターがいる大人気のアーティストだ。そのキャラクターを見ればピンとくる人も多いはず。当時から、LYさんの描くキャラクターは表参道・原宿のショップの壁やウィンドウにたびたび出現し、街のアイコンのひとつとして親しまれていた。
そんなLYさんが過去最大規模の個展「This is LUV」をミヤシタパークのギャラリーSAIで開催。世界観をキープしつつ、より洗練された新作を惜しげもなく披露してくれている。ひとつの集大成であり、今後もさらに飛躍していくであろうLYさんの個展を写真とともに振り返りつつ、記事としてアーカイブしておきたい。
Focus:ここが見どころ!ペインター・LY「This Is LUV」をレポート
・白と黒、そしてグレーの濃淡で魅せる作品が新鮮。
・絵画を飛び出した、大型の立体作品も展示!
・レセプションでは、“黒”のイメージのLYさんが“白”で登場
コントラストの効いた、白と黒のパキッとした初期作品と比較すると、よりグレーと余白が多く取り入れられているように思う。新作の数々は濃いグレーから薄いグレーまでグラデーションのように淡く、柔らかい作品の雰囲気が新鮮で、久しぶりに作品を観た人はその印象の違いに驚く人も多いのではないだろうか。グレーの濃淡の中に描かれる人の形をした黒いキャラクター「LUV」もどこか優しそうに鑑賞者に映る。
LYさんは「LUV」を通じて、誰しもの心の中にある“尊ぶ存在”を描いているのだという。日常の中で孤独を感じながらも、あたたかな人の愛しさに触れ、また一歩を踏み出す。まっすぐと見据える視線からは、明日からも生き抜いていく強い意志を感じ、白くて広々としたSAIの空間を自由に躍動していた。手には花やスケートボードを持った「LUV」に親しみや共感を感じずにはいられない。
絵画作品だけでなく、今回は立体の作品もお披露目。平面とはまた違った迫力と雰囲気を楽しめた。オランダを拠点とするアートプラットフォーム・Avant Arte を通して制作した大型ブロンズ作品はLYさんと「LUV」の世界を大きく拡張したと言える。原宿の街、例えばキャットストリートに「LUV」のブロンズが置いてあったら楽しそうだなと妄想してしまった。
黒い服を着ているイメージのLYさんは「みんなそう思っているだろうと思って」と、レセプションでは白い服を着ていた。LYさんを探していても、なかなか見つからないはずだ。そんな遊び心も作品の愛らしさに通じるところがあって、LYさんと「LUV」は確かにリンクしているのだと思った。
写真で振り返る、ペインター・LYさんによる「This is LUV」at ミヤシタパーク SAI
フラワーベースをモチーフにした作品も会場のいくつかで観られた。花を活けた姿を想像するとかわいすぎる。
SAIの立地を活かした吹き抜け部分の窓には大きな「LUV」がのぞく。屋内ながらミューラルアートとしての迫力を感じる。
SAIの開放的な空間でさまざまな「LUV」を観ることができる。展覧会は「Landscape」、「Portrait」、「Cityscape」、「Blooms」の4つのテーマで描かれたキャンバス作品を中心に構成。そのシュールな表情、といっても視線だけだが不思議とどれもイキイキとした生命力を感じた。
おや?髪の毛がある「LUV」とは珍しい。こちらは“自身を代弁する存在”である「LUV」と、“自身の娘”という、二人の存在を描いた「My LUV」。新境地にふさわしい存在感を放っていた。
膝を抱えてたたずむ「LUV」にあなたは何を感じるだろうか?
こちらは入り口を入ってすぐにある、最大のブロンズ作品。つい寄り添いたくなるが、展示作品には触れないように。「This is LUV」は2022年10月16日(日)まで。
■LY 個展「This is LUV」
開催期間:9月23日(金)〜10月16日(日)
営業時間:11:00〜20:00
開催場所:SAI
住所:東京都渋谷区神宮前 6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
電話番号:03-6712-5706
※お出かけの際はマスク着用の上、こまめな手洗い・手指消毒を行い、混雑する時間帯、日程を避けるなどコロナウィルス感染症対策を十分に行いましょう。
Text:Tomohisa Mochizuki
Photo:OMOHARAREAL編集部