慎ましやかな喜びの数々
Blum & Poeにて、ニューヨークを拠点とする作家、マーチ・エイヴリーによる個展「The family」を、7月16日(土)〜 9月10日(土)の期間で開催中。
マーチは50年以上にわたるキャリアにおいて、母サリー、 息子ショーン、孫娘デライラなど、親しい家族や友人と過ごした日常の風景を捉えてきた。抽象画や具象的モチーフ、情緒的な色彩を融合させたマーチの画風は、そうした人々との関係性に温かい眼差しを向け、ありふれた日常の中にある優美さを浮かび上がらせている。
本展では、油彩画と水彩画による作品群を紹介。注目作品は、マリーゴールド色のセーターとタンジェリン色のスカートを身につけ、ターコイズブルーの背景にもたれかかる女性のポートレート「QuietPleasure」(1970)。本作は、今回の展示作品群に登場する人々の空気感をよく表していると言える。他には、母親が赤ちゃんを胸に抱き授乳するシーンや、ふんわりとしたバスロ ーブと履物を身につけた男が一杯のコーヒーを楽しむ「GardenBreakfast」(2007) のように、エイブリーのモデルたちは、人生の些細な出来事の中にそこはかとなく漂い、安息の中にいるように見える。「ReadingAloud」(1972) と「DailyNews」(1976)でも、本を読む人たちの、静かで居心地の良い様子が見て取れる。
そばにいる人々をスケッチしたり、写真を撮ることで、慎ましやかな喜びの瞬間を日々の中に見出そうとしてきた。今も止まない世界の喧騒に対して、ともすれば容易に忘れ去られてしまう畏敬の念や驚き、尊敬といった極めてリアルな生の側面を、マーチの作品は呼び起こしてくれるのである。
今回が日本初開催となる、マーチ・エイヴリーの個展。原宿駅前のBlum & Poeで、こんな時代に見失いがちな、ありふれた日常の幸せを見つめてみよう。
■キャプション
画像1:「Quiet Pleasure」 1970 年 Oil on canvas
107 x 127 x 1.9 centimeters Photo: Josh Schaedel
画像2:「The Family」 1970年 Oil on canvas
92.1 x 126.7 x 2.2 centimeters Photo: Josh Schaedel
画像3:「Karla and Nicholas」 1960 年 Oil on canvas
71.4 x 106.7 x 2.2 centimeters Photo: Josh Schaedel
画像4〜8:「The Family」Blum & Poe(東京)での展示風景画像、2022 年
© March Avery, Courtesy of the artist and Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo
Photo: SAIKI
■概要
マーチ・エイヴリー個展「The family」
開催期間:7月16日(土)〜 9月10日(土)
営業時間:12:00〜18:00
開催場所:Blum & Poe
住所:東京都渋谷区神宮前1-14-34神宮の森5F
※お出かけの際はマスク着用の上、こまめな手洗い・手指消毒を行い、混雑する時間帯、日程を避けるなどコロナウィルス感染症対策を十分に行いましょう。
>>EDITOR’S VOICE
Blum & Poe近くのラフォーレ原宿では、7月20日(水)まで浴衣のPOP UP SHOPを開催中。王道から個性派まで、ファッショナブルな浴衣が勢揃いです。とっておきの一着を見つけに行きましょう。
Text:Arisa Watanabe
INFORMATION
Blum & PoeにてNY拠点の作家・マーチ・エイヴリーによる個展「The family」を日本初開催
- 住所
- 東京都渋谷区神宮前1-14-34 神宮の森5F
- 営業時間
- 12:00〜18:00
- 定休日
- 火〜土曜(祝日は閉廊)
