ストリートカルチャーと明治神宮の威厳
大手広告代理店・博報堂。みなが憧れる大企業を退社し、議員を目指す道を選んだ理由について「自分が生まれ育った街への恩返しがしたかったから」と語る長谷部氏。一体どのような思い出を持っているのだろうか。
「小さい頃から、東京で流行しているストリートカルチャーが空気のように身近な存在としてありました。竹の子族やロカビリーが流行っていた小学生時代、代々木公園の付近で怖いお兄ちゃんに『クリームソーダどこ?』と聞かれ、教えたところクレープをおごってもらえたり(笑)。中学時代はDCブーム、高校時代はアメカジブーム。ドラマのロケ地が地元であるのも当然のことのように感じていました。原宿の外で自分の住所を言うと羨ましがられたので、地元に対するプライドは中学生くらいから芽生えていましたね。誇れる街であり続けてくれたことに、感謝し、恩を感じています」
「クリームソーダ」は飲み物でなく、矢沢永吉氏、舘ひろし氏らが集まっていた伝説の50'Sロックンロールショップである
さらに、オモハラの魅力について、このように続ける。
「他の大きな街と違い、風俗店やパチンコ店がないので、健全な印象なのが良いですよね。新宿・渋谷という交通のハブになる駅に挟まれているので、繁華街を必要としていないのでしょう。また、ケヤキ並木に高層ビルが建っていないところも好きです。利益を度外視して街並みを守ろうという力が働いていて、ケヤキや灯籠がそのまま保存されている。明治神宮の参道だから…とみなが意識しているわけではないでしょうが、その根源には、やはり明治神宮が放つ威厳のようなものがあるのではないかと思っています」
そう語る彼は、誰もが「東京オリンピック開催年」とだけ捉えている2020年に対し、こんな見方もしている。
「2020年は明治神宮誕生から100周年でもあるんですよ。明治神宮の森って、100年前に人工的に作られたものだって知っていました? 永遠に残るように、針葉樹と広葉樹を交互に植えて…と大正の英知を集結させて、”自然の森”を目指して献木によって作られた。そして当時、”自然の森”となるのは100年後だと考えられていたんです。2020年は明治神宮の歴史、表参道の味わい深さを再認識してもらう良い機会になると思っています」
冬至の日に明治神宮から日の出を見たとき、太陽の通り道となるよう表参道は設計されている
ストリートカルチャーと明治神宮の威厳。一見相反するようにも思える2つの魅力について語る長谷部氏だが、彼は今、両者のバランスを崩すことなく、この街に”恩返し”を始めている。