知れば知るほど愛情が深まっていく
この時点で時間はAM2:30過ぎ。
やはりここも人はいなかった。真ん中のあたりに、コンビニが数件あるが、店員以外の姿は確認できず。
ここ数年、出来るだけ昼間はこの道を避けてきた。通行量も多い上に、狭い道幅の両脇にショップが連なっていることで流れが入り乱れる。歩きづらくて何年も通っていなかったのだ。
ここにきて、昼間にはない店先のゴミに目がいく。初めは嫌悪感を抱いていたが、この街は今、人目を気にせず完全に眠っていると思うと、不思議と嫌ではなくなった。
この街は今、スッピンで寝ているのだ。しかも半端ない深い眠り。
店先に出されたゴミは、昼間に生まれた老廃物であり、新陳代謝の産物とも思える。清掃車は、自浄作用の如くコンディションを整え、その間、この街はしっかりとした睡眠をとることで、人と同様に明日に備えているようだ。
竹下通りを通り抜け、原宿駅前。
ここでは、やはり街が寝ている間しかできない、言うなれば手術が行なわれていた。明日にはきっと回復しているだろう。
今までは、勝手にスッピンの恋人が寝ているという設定でこの時間を楽しんでいたが、散策しているうちに熟睡している子供の寝顔を見守る親のような気持ちになってしまった。
起きている時は、色々と主張の激しい子供がようやく寝静まり、純粋な寝顔を自分に見せる。そんな安心感や、自分だけの知る顔という感覚からオモハラに対する愛情が深まってきた。