子供をあやすように笑顔にしてくれる、ピュアな愛と平和の世界に飛び込む
原宿・とんちゃん通りにある、よねちゃんこと米原康正のギャラリー 「tHE GALLERY HARAJUKU」でアーティスト・KYOTAROの個展「VILOVILO BAA」が2024年1月14日(日)まで開催中だ。
米原康正は当然ながら、KYOTAROもまた原宿に縁があるアーティストの一人。そしてKYOTAROの描く「VILOVILO」も同様だ。
2000年にKYOTAROが生み出した不思議でかわいい「VILOVILO」シリーズは、交流のある三原康裕による靴店「MY FOOT PRODUCTS(マイ フット プロダクツ)」で、およそ20年の歳月を超えて復活。展示を行った際、過去の「VILOVILO」を見ていたという、米原康正の目に留まった経緯がある。
KYOTAROと米原康正
三原康裕から米原康正への薦めもあり、以後、KYOTAROと米原康正との交流は続き、2023年の個展、合同展を経て今回の原宿での展示に至った。そんなKYOTAROの最新作を観に、オープニングレセプションに足を運んだ。
KYOTAROより、原宿にラブ&ピースを込めて。「VILOVILO BAA」をレポート
最新の「VILOVILO」シリーズはとにかくかわいくてハッピーなオーラにあふれていると米原康正も太鼓判。新年最初に原宿で観る展示としては最高だ。ギャラリーに到着すると毎度のことながら駆けつけた人で賑わっていた。
原宿らしい「VILOVILO」を描いてもらいたかったと米原康正は言う。KYOTAROもそれに応え、可愛さ満点のポップな作品が会場に並んでいた。見ているだけで癒され、幸せな気持ちになる。
当初は鉛筆画でビロビロとした質感を淡い色合いで表現していたKYOTARO。しかし、ここ数年の復活以来見ることが多くなった油彩の「VILOVILO」も、鉛筆画とは違った“ビロビロ感”を観ることができて楽しい。
今回新しい試みとしてカラーの「VILOVILO」シリーズが登場しているのは見逃せない。白と黒、モノクロで表現されていた作品に「色」が入ることで、より鮮明にその世界観が伝わってくる。素敵すぎるKYOTAROの色彩に「原宿っぽいでしょ?ハッピーな感じがするよね」と米原康正も満足気。KYOTAROへの信頼と作品への自信をのぞかせた。
ぬいぐるみの「VILOVILO」は限定生産。立体になってもビロビロとした雰囲気とふわふわ感が見事に再現されている。訪れた人の関心と興味を集めた。
さらに会場で注目を集めていたのは木片のシリーズ。木の上に「VILOVILO」が描かれたもので、使われているのは端材ではなく家具などに使われる、タモ材を加工したもの。一個売りのものと積み木として遊べるセット売りのものがあり、こちらはなんと会期中でもそのまま家に持って帰れるアート作品なのだ。
手にとってみると、断面や角も指がひっかかったりすることはない、なめらかな触り心地。丁寧に加工処理が施されているのがわかる。これなら子供にも良いと思い、購入!「VILOVILO BAA」という子供をあやすようなタイトル通り、子供にも優しい。というか、子供たちが観たらめっちゃ喜びそうだ。
手に取りやすい金額帯も魅力で、ファンシーなアイテムに落とし込むのも原宿らしさを感じる。これぞまさにポップアートの真髄。
そもそもKYOTAROは、コロナ禍で暗くなってしまった世の中に、希望をもたらすような作品は何だろうか?ということを考えた末、自身のポップアートとして位置付けていた「VILOVILO」を復活させたという。
コロナ禍の暗い影はもはや見当たらない。しかし、2024年の幕開けは「令和6年能登半島地震」を皮切りに日本航空機と海上保安庁機の羽田空港での事故など、胸の痛む事案が続き、社会全体に混沌をもたらしている。
有事の際、憎しみだったりネガティブな感情が表面化してしまいがち。無事でいられた今日に感謝しながら、ポジティブな気持ちを失ってはいけないと思うこの頃(もちろん個人や団体で、できる範囲での支援を忘れずに)。だからこそなのか、本展「VILOVILO BAA」で描かれている世界はピュアでいて美しく目に映った。
被災、事故に見舞われた方に心を寄せ、社会全体でフィジカルの支援が必要な一方、メンタルをケアする音楽や芸術、そして娯楽はどんな人にとっても必要不可欠。ここ数日でぽっかり欠けたピースを優しく埋めてくれるような展示だった。
愛溢れる一年が過ごしたいと思う人は、とんちゃん通りの米原殿「tHE GALLERY HARAJUKU」にアート詣してみてはいかがだろうか。
■KYOTARO個展「VILOVILO BAA」
開催期間:2024年1月5日(金)~1月14日(日)
住所:東京都渋谷区神宮前3丁目20-21 ベルウッド原宿1階-C
営業時間:11:00〜19:00
開催場所:tHE GALLERY HARAJUKU
Text:Tomohisa Mochizuki(OMOHARAREAL)
Photo:OMOHARAREAL編集部