日本では類を見ない彫刻作品
MAHO KUBOTA GALLERYにて、ロンドンと東京郊外の2拠点で制作し、国際的に作品を発表している宮崎啓太氏の個展「そのことの相対性」を開催中。5月28日(土)まで。
宮崎啓太氏の彫刻は、古い自動車の排気系部品を組み上げた構造体に紙やフェルトなどの柔らかい素材を組み合わせて構成されている。作品を前にした時まず目を奪われるのは、作品の骨組みとなる自動車部品の流麗な重厚感だ。既製の大量生産品をアートとして提示する“レディメイド”は、1950年代から60年代にかけセザールやチェンバレンがすでに実践しているが、宮崎氏の作品に2人の影響を見つけることは難しい。一方で、セザールらとほぼ同世代のイギリスの現代彫刻家、アンソニー・カロ、そしてその後の世代であるリチャード・ディーコンと明らかな接続を見せている。
宮崎氏の表現の根底に感じられるのは、無用の廃棄物の中に発見した「美」を、自らのルールにより組み上げて生み出された豊かな彫刻的ナラティブ。その源には、革新的なイギリス現代彫刻の先人たちの実践があると言える。宮崎氏はそのギフトを確かに受け取り、試行錯誤を繰り返していった。
かくして宮崎氏の作品は、日本の現在の彫刻に見られるいかなる傾向ともかけ離れたところで成熟し発展している。古い自動車パーツのもつ美しさ。それを組み上げることにより生まれるムーブメント。空気抵抗を少なくし、コンパクトに必要なものだけを結集させた効率性の美に、宮崎氏がゼロから作りあげる柔らかでカラフルな造形要素を纏わせた時、一旦は用途を失い廃棄された工業製品の部品に生命の息吹が宿るのだ。
本展では、ギャラリーの壁を覆うタブロー的な広がりを見せる大作と、カラフルな造形要素を組み合わせた自立式の作品、ならびに小品2点の、計4点の新作が展示されている。原宿と青山を結ぶ、大都市圏に位置する当ギャラリーで、不要な工業製品がアートとして生まれ変わった姿を静かに見つめてみよう。
■クレジット
画像2:宮崎啓太<エメラルドの表象>2022年, 車のパーツ、紙
©︎Keita Miyazaki / MAHO KUBOTA GALLERY
画像3:宮崎啓太<核の実>2022年, 車のパーツ、真鍮、エナメルペイント
©︎Keita Miyazaki / MAHO KUBOTA GALLERY
■概要
宮崎啓太個展「そのことの相対性」
開催期間:4月19日(火)〜5月28日(土)
営業時間:12:00〜19:00
開催場所:MAHO KUBOTA GALLERY
住所:東京都渋谷区神宮前2-4-7
電話番号:03-6434-7716
※お出かけの際はマスク着用の上、こまめな手洗い・手指消毒を行い、混雑する時間帯、日程を避けるなどコロナウィルス感染症対策を十分に行いましょう。
>>EDITOR’S VOICE
MAHO KUBOTA GALLERYから徒歩4分ほどの場所にあるワタリウム美術館では、5月15日(日)まで「視覚トリップ展」を開催中。約4ヶ月にわたるエキシビジョンも、残り1週間となりました。この機会に、ぜひ足をお運びください。
Text:Arisa Watanabe
INFORMATION
MAHO KUBOTA GALLERYで宮崎啓太の個展を開催 無用の廃棄物をアートに昇華
- 住所
- 東京都渋谷区神宮前2-4-7
- 電話
- 03-6434-7716
- 営業時間
- 12:00〜19:00
- 定休日
- 日曜・月曜・祝日