世界の子どもたちの笑顔を守るために、できることとは
子連れで楽しめるスポットも多い表参道・原宿エリア。子どもの笑顔を多く見ることができるこの場所で、世界の子どもたちの笑顔にも思いを馳せてみては？ 編集部員が今回訪れたのはITOCHU SDGs STUDIOで開催されている国境なき子どもたち写真展「SDGs 世界の子どもとゴールを目指そう」。
今回は、SDGsの17目標の中でも、特に子どもたちの生活に直結する「貧困をなくそう」「質の高い教育をみんなに」「働きがいも 経済成長も」に焦点を当てた写真展。11月20日の「世界子どもの日」に合わせ、世界の子どもたちが直面している現実への理解を深める目的で、カンボジア、フィリピン、バングラデシュ、パキスタン、ヨルダンの子どもたちの写真が展示されている。
こちらは主宰する「認定NPO法人国境なき子どもたち（KnK）」の活動の紹介パネル。子どもたちが将来自立して働くことができるように教育や職業訓練、メンタルケア、自己表現の機会も提供している。本当の意味での「支援」とは何か、考えさせられる。
2009年12月には、その活動に賛同する伊藤忠商事(株)の支援により、フィリピンのマニラ郊外に青少年自立支援施設「若者の家」がリニューアルオープンした。これまでも伊藤忠グループの社員たちが定期的に訪問し、クリスマスパーティが開催されたりと継続的な支援と交流が続いている関係から、今回のITOCHU SDGs STUDIOでの展示が実現したという。
会場内には、KnKが支援してきた子どもたちの過去と現在の写真が並ぶ。フィリピンのジョナサン・アベッロさんもその一人。スラム街の母子家庭で生まれた彼は、６人きょうだいの長男。子どもの頃からゴミ山で働き家族を養う生活をしていたそう。自分の子どもの頃との違いに胸が痛い。しかし、彼はKnKが運営する自立支援施設「若者の家」に住み、衣食住を提供され、心のケアを受け、教育の機会を得たことで初めて自分のために努力することができた。彼は大学を卒業し、現在はIT企業で働いているとのこと。逞しく生きてきた彼の、凛々しい立ち姿が印象的だ。
また、現在商社で働き１児の父であるカンボジアのサム・シナットさんは、父親の暴力のせいで路上生活を余儀なくされた過去が。どうやって飢えをしのいだのだろうか、どれだけ心細かっただろうか……と、想像してもしきれない。彼も15歳の時にKnKと出会い、学年遅れだった勉強も取り戻せたと言う。
この他にも８歳からストリートチルドレンとして生活していた方、犯罪に巻き込まれた方など、あらゆる困難な状況に置かれていた子どもたちの成長が紹介されている。自分が成長の過程で自然に与えられていた衣食住や教育は「当たり前」ではないという問題意識が芽生えた。
また、現在も困難な状況に置かれている子どもたちの写真や絵画の展示も。どんな状況であっても子どもたちの笑顔は世界共通。でも、彼らが置かれている背景を想像するとやりきれない。では、私たちにできることは？ と、日々の行動を考えさせられる。
会場を進むとクイズコーナーも。どれも自分の生活と比べられる内容なので、世界で起きている問題を自分ごと化してリアルに感じることができる。子どもでも理解しやすく、一緒に学べる。
KnKの活動を動画でも放映している。貧困や分断の原因が、決して自分の行動のせいではないこと、だからこそ世界中での助け合いが必要だと実感する内容だった。
さらに本展では、世界の子どもたちが置かれた問題をより深く理解するための書籍や、プロの写真家によるポストカードの販売も。
図書コーナーも設けているので、気になったトピックの書籍はその場で読むことも可能。
紛争、貧困、暴力といった大人の問題の被害者はいつだって子どもたち、という現実を痛感した展示だった。しかし、成長した彼らの笑顔は、たとえどんな状況に置かれていても、何にでもなれるという希望でもある。帰り道、外苑前の銀杏並木で手をつなぎ歩く親子の笑顔とのコントラストも印象的だった。世界中の子どもたちの笑顔を守るために私たち大人ができる支援を、できることから始めていきたい。
■概要
国境なき子どもたち写真展「SDGs 世界の子どもとゴールを目指そう」
主催：認定NPO法人国境なき子どもたち（KnK）
会期：2021年11月16日～12月26日
会場：東京都港区北青山2-3-1 Itochu Garden B1F
開館時間：11時～18時
休館日：毎週月曜日
写真協力：渋谷敦志、吉田亮人、NPO法人Dialogue for People
■オンライントークイベント
【SDGs 企業とNGOの役割ーバングラデシュの子どもたちー】
日時：2021年12月11日（土）14:30～16:00 要申込
登壇：出雲充 氏（株式会社ユーグレナ代表取締役社長）、清水匡 氏（KnK職員兼人道写真家）
司会：渡辺真理 氏（アナウンサー）
参加費：無料
主催：認定NPO法人国境なき子どもたち
協力：伊藤忠商事株式会社、株式会社ユーグレナ
※申込先：https://knkphotoexpo2021dec.peatix.com
■認定NPO法人国境なき子どもたち（KnK）とは
ストリートチルドレンや暴力や虐待の被害にあった子ども、大規模自然災害、国内騒乱で不安定な状況下にある子どもなど、世界各地で困難な状況にある青少年を支援する国際協力NGO。1997年に世界の子どもたちと「共に成長する」ことを理念に活動を開始し、現在は7の国と地域で活動中。
KnKは、東京都より認定を受けた「認定NPO法人」。寄付は、確定申告により税控除を受けることができる。皆さまの温かいご支援をお待ちしております。
KnKウェブサイト：https://knk.or.jp
Text：Emiko Hishiyama
Photo：Eri Miura
