普段のお買い物が未来を変える
いつも表参道で美味しく食べている食事。その食材はどう作られたか知っている? 食材の背景を知り、選び方を工夫することが、持続可能な未来につながるかも。編集部員が今回訪れたのはITOCHU SDGs STUDIOで開催されている「選ぶ、食べる、サステナブル展」。
本展は、農林水産省、環境省、消費者庁が連携し、2030年のSDGs達成を目指し立ち上げた「あふの環2030プロジェクト~食と農林水産業のサステナビリティを考える~」活動の一貫。9月18日(土)から28日(火)までのサステナウィークに合わせて開催される、「見た目重視から持続性重視のおかいものを通してSDGsを考えること」をテーマにした体験型イベントだ。
たしかに、普段の買い物ではつい見た目が良い食材や安い食材に手が伸びてしまいがち。それがどう問題なのか、まずは本展を通して学ぶことからスタートできる。
内部には食材サンプルが並び、おしゃれなマルシェのような作り。さながらオーガニックスーパーに来たような感覚になる。
ここでは、自分の買い物がどれくらいサステナブルなのかシミュレーション診断が実施されている。お弁当作りを想定し、おかずとなる鮭、ほうれん草、卵、りんごの食材サンプルを2択から選びカゴに入れていく。すると最後に「サステナブル度」が点数でわかる仕組みとなっている。
展示に先駆け、9月17日にはオンラインイベントで料理愛好家・平野レミさんと、料理家・和田明日香さんがお買い物体験に挑戦。和田さんは「普段からどこの誰がどう育てているかを理解してから食材を購入している」とのことだが、それでも判断に迷う様子。
例えば、こちらの鮭。見た目も賞味期限も同じ。ただ一点、片方には「ascマーク」が付いている。実はこれ「サステナブルシーフード」のマーク。海の生態系や資源の持続性に配慮された方法で漁獲・生産されている養殖水産物である証。ということで、サステナブルの視点での正解はascマーク付きの鮭。
また、特に難しいのがリンゴの二択。一方はつやがあり満遍なく赤みを帯びている。もう一方は全体的に色が薄くてまだら。あなたなら普段どちらを選ぶ? どちらがサステナブルな選択かは、ぜひ会場で確かめてみてほしい。
ちなみに、編集部員が選んだのはこれらの食材。
食材の後ろに赤いシールが付いているものが正解という仕組み。最後にシールを何枚集められたかで、サステナブル度の結果が分かる。
編集部員は4点中3点。かわいらしいイラスト付きのシートで「お買い物ハカセ」の称号がもらえた。もうワンランクお買い物上手になるための具体的なアドバイスが記載されているのも、すぐにアクションにつなげやすい。
結果発表の先には、食材の選び方の詳しい解説パネルも用意されている。例えばこちらの卵の解説。卵の黄身の色は、ニワトリが食べた飼料によって変わるそう。写真上の色が薄い卵には「国産飼料100%」の記載があり、国産の「米」を飼料にしているため黄色が薄い。一方は輸入の「トウモロコシ」を飼料にしているため黄色が濃い。現状、こちらが日本の主流になっている。
しかし、ある日トウモロコシに輸入制限がかかり、卵の供給ができなくなってしまう可能性もゼロではない。そうならないよう、近年、国産エサを使う取り組みが進んでいる。消費者としても、国産飼料を使った卵を買うのが未来につながる選択。このように、立ち止まって考えてみると気が付けることも多い。
そして、展示で選んだサステナブルな食材を使用した特別なお弁当も渋谷東急フードショー内「YUKIYAMESHI」で販売中。「サステナウィーク弁当」として、料理家・寺井幸也さんが監修し、9月18日(土)から28日(火)の期間中に1日限定10食で販売されている。シンプルな味付けにこだわり、素材本来の味を感じられる美味しい一品となっている。
オンラインイベントでは寺井さんも交えたトークショーも行われ、本展で変わった食材への意識を、普段のお買い物にどう活かすべきか、ちょっとしたコツを教えてくれた。寺井さんは「いつものスーパーでも旬のものを買うこと。それだけでもビニールハウス栽培を避け、環境負荷を下げることにつながる」とのこと。
数多くのレシピを考案する平野さんも「食材にいらない部位はない。食材の背景を知り、安心できれば皮や骨まで余すことなく使える」と、アドバイス。
食材を選ぶ際に見た目や価格だけでなく、環境への影響に想いをはせることは最初の一歩かもしれない。展示の帰り、いつものスーパーで食材の品質表示までチェックし、産地や飼料の視点で購入してみた。これからも「かしこい選択」を続けていきたい。
■概要
選ぶ、食べる、サステナブル展
主催:あふの環プロジェクト事務局(農林水産省 協力:消費者庁、環境省)
日時:2021年9月18日~10月10日
営業時間:11時~18時
場所:ITOCHU SDGs STUDIO
住所:東京都港区北青山2-3-1 Itochu Garden B1F
休館日:毎週月曜日
※月曜日が休日の場合、翌営業日が休館となります。
※事前予約不要
※平野レミさん、和田明日香さん、寺井幸也さんのオンライントークイベントの動画は、農林水産省公式YouTubeにて配信予定です。
Text:Emiko Hishiyama
Photo:Eri Miura