作る人、使う人、すべての人と人が手を取り合う「持続可能なモノづくり」
今あなたが着ているその服が、どんな工場でつくられたか知っている? それを知ることが、持続可能な社会をつくることに繋がるかも。編集部員が今回訪れたのはITOCHU SDGs STUDIOで開催されている「CRAHUG つくるにふれる。くらすはつづく。展」。
日本のモノづくり支援を目的として、全国のファクトリーブランドに加え、生産者や工場オリジナル商品を開発し国内外に直販する新規事業「CRAHUG(クラハグ)」。CRAFTSMAN(職人)とHUG(ふれあう)を組み合わせた言葉で、日本各地の工場と共に持続可能なモノづくりを考え、想いやりある暮らしをグローバルに発信するプロジェクトだ。
本展では、SDGsに焦点を絞り、過去と未来、作る人と使う人を繋ぐ「モノづくり」の在り方を考えるきっかけを提供している。
入り口の大きなタペストリーには「環境に優しいものとは? 循環していくものとは? 地域が活きるものとは?」という問いかけが。「CRAHUG」がモノづくりをする際に重視している視点だ。これは同時に、消費者がモノを購入する際に重視すべき点でもある。
初日の9/1(水)には、タレント・長濱ねるさんが来場。「CRAHUG」発起人であるクリエイティブディレクターの梶原加奈子さん案内の元、会場内を巡り、持続可能なモノづくりについて学んだ。
内部には多数のタペストリーが設置されており、「CRAHUG」参加ブランド生産者のこだわりや、製作プロセスを知ることができる。生産者の「顔」が見えることで、普段何気なく使用している日用品にも、一つ一つストーリーがあることに気が付かされる。
この日、長濱さんが着用していたのは、香川県さぬき市の有限会社川北縫製が手掛ける「SANUA」というブランドのワンピース。瀬戸内海で取れる塩で布を清め、自然から抽出した植物染料で染めることで再現できる、エネルギーに満ちた深みのある色が特徴的だ。小さな工場ながら、自然に対するこだわりが強く、職人技が光る。
さらに、展示スペース中央のテーブルにはテーマごとに「CRAHUG」ブランド製品が並ぶ。展示商品の一部は「ONWARD CROSSET」内で購入できるのも嬉しい。
「創作の工夫」と題されたエリアには、鮮やかな靴下が。「COQ」というこちらのブランドは、奈良県・野富株式会社が製作したリサイクル糸を使用した靴下。通常は工場で廃棄されてしまう糸を使用したアップサイクル製品だ。
「CRAHUG」ブランド製品に総じて言えることだが、どれも高いデザイン性を兼ね備えている。たとえ消費者がデザインだけで製品を選んだとしても、未来へ貢献できるというのは、ブランドの目指すべき姿かもしれない。
オーガニックや無添加素材のコスメが並ぶ「自然と共存」エリアには、華やかな商品が並ぶ。
例えば、鹿児島県肝属郡南大隅町で作られた地産コスメ「BOTANICATION」は、植物エキスの抽出などの原料作りから製造まで一貫して自社生産にこだわっている。それだけでなく、廃校の一部を製造工場としてリノベーションしたという背景も面白い。自然由来100%製品あるため、工場近くの海洋汚染の心配もなく、地域活性化につながっている。肌にも地球にも優しいコスメだ。
奥のスペースでは、梶原加奈子さんをはじめとする「CRAHUG」メンバーによる、未来の暮らしとモノづくりをテーマにしたインタビュー動画も放映中。地方の工場が直面する厳しい現状や、「CRAHUG」の想いを知ることができる。人と人とのつながりを大切にし、「もの」「こと」の生産へと繋げる姿勢から、循環型社会の根幹は「思いやり」であるというメッセージを感じる。
また、残布を使用したワークショップも常時開催中。日本中の工場から集められた色とりどりの布。本来ならば捨てられてしまうというのは、やはりもったいなく感じる。
好きな布を選び、ボンドで貼り付け、世界に一つだけの一輪挿しと小物入れを作ることができる。簡単な作業なので、小さな子供にもオススメだ。長濱さんも実際にオリジナルの一輪挿しを製作。展示を通して、「モノを購入する時に、なぜこの価格なのか、どう作られたのか想像することが大切。その想像が及べば、自ずと選ぶ商品が変ってくるはず。その第一歩として『CRAHUG展』で、生産者の顔やストーリーを知ることができるのは、誰にとっても消費行動を変えるきっかけになるはず」と、振り返った。
本展を通じて、日本には素晴らしい職人がいて、真似できない技術があると知ることができる。この知識があれば、今日の買い物からモノを選ぶ視点がアップデートされるだろう。持続可能なモノづくりのための第一歩を、自然に踏み出せる展示だった。
■概要
CRAHUG つくるにふれる。くらすはつづく。展
日時:2021年9月1日(水)~12日(日)
営業時間:午前11時~午後6時
場所:ITOCHU SDGs STUDIO
住所:東京都港区北青山2-3-1 Itochu Garden B1F
休館日:毎週月曜日
※事前予約不要
※YouTube上で展示内容が見られるオンライン配信もしています。
Text:Emiko Hishiyama
Photo:Eri Miura