コープオリンピア(東京コープ)/ 新しい贅沢。ル・コルビュジエへの挑戦
(2016/06/23)
1965年。東京五輪の翌年。オリンピック会場を見渡す立地にその名の由来を持つ、あるマンションが誕生する。コープオリンピア。原宿駅表参道口を出て正面にそびえ立つその集合住宅は、原宿に訪れたことがあるひとなら一度は目にしたことがあるだろう。数年前に目の前の歩道橋が撤去されて以来、静かに、より一層、独特な存在感を放っている。原宿駅、徒歩1分。表参道と明治通りの交差点、徒歩1分。代々木公園、徒歩1分。周囲に高層の建物はなく、日当たり良好。明治神宮と代々木体育館を一望できる絶好の眺め。一階にレストラン、各種店舗。ルーフテラスにプール。こんな嘘みたいな物件が、確かに実在したのだ。当時の分譲価格、なんと1億円(現在価格で約4億円)。「元祖億ション」とも言われるが、疑う余地はないだろう。
総工費36億円(現在価格で約144億円)。その建設規模から「東洋一」とも言われた不動産、コープオリンピア。当時販売を担当していた東京コープ㈱は、まるで高級ホテルのようなアパート『アパーテル』という画期的なコンセプトを提唱。居住者のためのフロント、洋式バス、キッチンには生ゴミを切り刻むディスポーザー、セントラル方式を採用した冷暖房。その設備のどれをとってみても、アメリカの高級ホテルそのものだった。当時の住環境の常識を覆す、まったく新しい贅沢。半世紀前とは思えない、現代的なビジョンである。
Text:Taro Kagami