「ダンス」に見るポップ・カルチャーのエネルギーとオピーのユーモア
ジュリアン・オピー(Julian Opie)が最新の個展を神宮前2丁目のMAHO KUBOTA GALLERYで開催中。ジュリアン・オピーと言えば、欧米、アジア諸国の大きな美術館で個展が開催される、現代美術の巨匠のひとり。一度はその作品を目にしたことがある人も多いはずだ。初めて生で作品を観たのは2018年、原宿のキャットストリートにあるThe Massで、藤原ヒロシ氏のキュレーションで開催された企画展『PORTRAIT』だった。
アニメのようにポップかつデフォルメされた人物の作品は、ミニマルでありながら、人物の特徴や仕草を的確に捉え、活き活きしていることに驚いた。その時のインパクトから、ジュリアン・オピーの作品は非常に原宿的というか、作品を見ると原宿を思い浮かべる作家の1人となっている。
今回、本人も来日中でギャラリーを訪れるとのことで、この希少な機会を逃す手はない。さっそくオープニングレセプションに足を運んだ。
Focus:ここがみどころ!ジュリアン・オピー at MAHO KUBOTA GALLERY
・TikTokのシャッフルダンスをモチーフにした最新作
・ドローイング作品だけじゃない!動くオピーに夢中
・ジュリアン・オピー本人も登場。紳士で大らかな振る舞いがクール
外苑西通りと交わる、神宮前3丁目の交差点を2丁目側に渡ったビルの裏手にMAHO KUBOTA GALLERYはある。国内外、気鋭の作家を紹介する名ギャラリーだ。今回はかねてからギャラリーとも親交のあるジュリアン・オピーの最新個展とあって、オープニングレセプションにはたくさんの人が訪れていた。賑やかな雰囲気の中、MAHO KUBOTA GALLERYの空間にドローイング作品と、LEDディスプレイで映し出される動く作品が並ぶ。
ジュリアン・オピーが今回着目したのはTikTokのシャッフルダンス。これまでもオピーは鋭い洞察で、ポップカルチャーを巧みに取り込み、“人”にフォーカスしてアート作品を描いてきた(実は風景画も描いていたりして、それも素敵なんだけれど)。80年代初頭のデビューからアニッシュ・カプーアやキース・ヘリングといったアーティストと作品が並べられ、注目されてきたオピーが、TikTokをモチーフに作品を制作するとは驚きもあったが、オピー的でもあると納得。やむことのないオピーの人への好奇心と探求には頭が下がる。
ダンスの動きは作品によってそれぞれ違う。ピクトグラムで描かれた、連続するドローイング作品にフロウ(流れ)を感じつつ、 隣り合うLEDの作品はヌルヌルと陽気に踊り続ける。表情は見えなくとも服や動きの違いによって人間のような生々しさが浮かび上がってくる。あなたは、記号化された踊る人たちに、何を想像するだろう?その想像の余白がこの展示の面白さだ。オープニングレセプションの様子はスワイプしてフォトロールをチェックしてほしい。
写真で振り返る、ジュリアン・オピー at MAHO KUBOTA GALLERY
オピー本人もレセプションに登場。ギャラリーを訪れたコレクターやファンたちとも和やかに交流し、サインや写真撮影に応えていた。
躍動するオピー作品の中、開催されたオープニングレセプションの雰囲気も終始楽しげだった。
それぞれダンスの違う部分を切り取ったドローイング作品。ピクトグラムでミニマルに描かれていながらも、人物を想像させる描写が魅力的。
LEDディスプレイの作品。動くオピー作品を目にするのは初めてだったので新鮮!ピクセルで映像を映し出すLEDディスプレイと、ピクトグラムのオピー作品の相性が良いことは言わずもがなだ。
写真をお願いすると、「LEDの近くだと明るいから干渉しちゃうかもよ」と気遣ってくれたり、「どうですか?」と写真を見せると「君が良ければそれでかまわないさ」と笑顔。紳士的に寛大に対応をしてくれた。ジュリアン・オピー、作品も人も魅力的すぎる。
MAHO KUBOTA GALLERYでの展示は11月26日(土)まで。併せて行われている渋谷パルコギャラリーでの展示は、ヘッドセットを装着して楽しむことができるVR作品を展開しているとのこと。仮想現実だからこそ可能なスケールでオピー作品が見られるそうなので、こちらも、見てみたい。
■ジュリアン・オピー 個展
開催期間:2022年10月21日(金)〜11月26日(土)
営業時間:12:00~19:00
開催場所:MAHO KUBOTA GALLERY
住所:東京都渋谷区神宮前2-4-7
電話番号:03-6434-7716
Text:Tomohisa Mochizuki
Photo:OMOHARAREAL編集部