バスキアとウォーホルのように
なぜ、二人展を行うことになったのか。きっかけはひょんなことからだった。
藤井フミヤ (以下: FF) :"Feb gallery” って名前なのに、冠になっている2月が空いちゃってさ(笑)ギャラリーから何かやった方がいいんじゃないかという話になって、 1人だとスケジュール的に無理だから、 友人のEd (TSUWAKI)くんに相談したところから始まったんだよ。
この話が始まったのは昨年11月。藤井フミヤさんは発売したばかりのアルバム「水色と空色」を引っ提げて全国ツアー中。Edさんも車で旅をしていて都内を離れていた。このときは、時間もなかったので、新作を作るのではなくすでに仕上がっている作品を互いに出品した展覧会をやるつもりだったとフミヤさんは言う。
藤井フミヤ ®升谷玲子
FF:当初は2月に開催する予定だったから、俺はめちゃくちゃ焦ってたんだけど、Edくんが 「いやいや新作描こうよ」って言ってくれた。
この申し出を受けて、フミヤさんは率直に嬉しかったと当初を振り返ってくれたが、そもそもなぜ、時間も手間もかかる新作での合作展をEdさんは提案したのだろうか。
Ed TSUWAKI ®升谷玲子
Ed TSUWAKI(以下:Ed):だって、こんな面白い機会そうそうないから。いつもやってることと違うことができるんじゃないかという楽しみの方が大きかった。バスキアとウォーホルの共同制作のようなイメージが浮かんだ。
最初のリモートミーティングですでに今回の『FFEd』の展覧会タイトルが決まったという。2人の名前を連ねた展覧会タイトルは、字面が良く、アイテムやフライヤーのデザインにも落とし込みやすそうという理由から決まった。そんな発想がファッション的かつフミヤさんとEdさんの“らしさ”が出ていて、とても面白い。
制作を進めていく上で、ゆるやかな“ルール”が成り行きで決まっていったというが、心境や手応えはどうだったのだろうか?
FF:最初は手探りで思いつくままに手を動かした感じ。最初に互いの作品を交換したとき、インスピレーションを得た手応えがあったね。答え合わせのような感覚で「あっ!こういうことね!」というひらめきがあった。
®升谷玲子
「時間がないからあんまり描けないよ」とフミヤさんは当初、Edさんに言っていたそうだが、付き合いの長いEdさんは、フミヤさんの妥協できない性格を見抜いており、精力的に作品を描いてはフミヤさんへ作品を渡し続けた。
Ed:最初は絶対に拒否してくるんだけど、フミヤくんはちゃんと仕上げてくれる。
FF:途中で、ハガキサイズのものを4枚くらい描いて渡してきてさ。「増やすんじゃないよ」と思った(笑)。
というように、仲睦まじく制作を進めて行った2人だが、その出会いはどのようなものだったのだろう?両者の邂逅は今から23年前、2000年にまでさかのぼる。互いに顔を合わせたときの様子を図録収録のインタビューで語ってくれているので、参照してほしい。
頻繁に会うことはなくても、グラデーションのように信頼関係を築いていった結果、今回の展覧会に繋がっているのは間違いない。