名付けられた青い道
"青参道”ってなに?
青山通りは知っている。表参道はもちろん。でも、“青参道”という名前は聞いたことがない、という人も多いのではないだろうか。それもそのはず。名付けられて間もないこのストリートは、青山通りと表参道をL字型につなぐ、知る人ぞ知る裏通りなのだ。
裏通りなだけあって、その入口を見つけるには少しコツがいる。なにしろ表には看板も出ていないのだから。青山通り側はKFCに出迎えられる表参道駅B2出口近くの、チョコレート店の曲がり角。表参道側はケヤキをモチーフにしたTOD’Sの隣、ピアノカラーの外観が特徴的な「KAWAIピアノ」の角が始まりで、目を凝らすと突きあたりに白いハシゴが掛けられた建物が見えるだろう。
上:青山通り側の入口は、表参道駅B2出口のすぐ裏手 下:金色のプレートが目印になる、表参道側の入口
大通り沿いに聳える華やかな大型ビルとは対照的に、一歩足を踏み入れると適度なサイズ感の建物が立ち並ぶ青参道。建築法規的に高さの制限が設けられているこのエリアは、背丈を抑える代わりにフトコロに抱える地下空間を活用していて、歩いてみると足元から賑わいを覗かせるお店がいくつもある。地面をくり抜いたような吹き抜けを持つヘアサロンや、レンガタイルの後ろにひっそりと佇む隠れ家的なアクセサリーショップ。その一方でガラス張りのインテリアショップが中二階の目線にあったりと、立体的に構成されたお店は外から眺めるだけでも何だか楽しい。
風景の一部として溶け込んでいてつい見落としてしまいそうだが、緑が多いのもこの通りの特徴の1つだろう。プランターや植栽、ところどころに植えられた樹木たちが店先を彩ることで、この路地裏特有の雰囲気がつくられているのかもしれない。注意して見てみると、「青参道」と書かれた小さな青いプレートを見つけられるのもおもしろい。
「io H.P.FRANCE」にかけられた"青参道"のプレート
ところで青参道という呼び名は、ファッションを中心にインテリアやアートを手がける「H.P.FRANCE(アッシュ・ペー・フランス)」によって広められたそうだ。名前の由来は察しのとおり、青山通りと表参道という2つの大通りをつなぐから。ただ参道という言葉を調べてみると、広義には『人通りの多いところから寺社に至る道の全て』と出てくる。明治神宮への表参道に合流するこの通りは、いつの日か本来の意味合いで“参道”と呼ばれる賑やかな道にもなり得るだろう。今はまだ名付けられて間もない青い小道だが、もしかしたらそんな思いも込めての“青参道”なのかもしれない。さて、そんな青参道が生まれる背景にはどんなストーリーがあったのだろうか?