
オモハラに新たに生まれた「空中商店街」
2023年8月1日(火)、東急プラザ 表参道原宿の5Fフロアがリニューアル。シェア型リテールコミュニティ「LOCUL(ローカル)」が誕生した。
ここ最近、個人的には東急プラザ表参道原宿から足が遠のいていたのは正直なところ。「シェア型リテールコミュニティ」としてどのようにリニューアルを遂げたのか、初日のオープニングイベントに足を運んだ。
東急プラザ表参道原宿にオープンした「LOCUL」ってどんな感じ?オープニングをレポート
東急プラザ表参道原宿の5Fがリニューアルして開業したスペース「LOCUL」。ここではさまざまなショップ、カフェ、シェアオフィス、ギャラリーからミニシアターまで、館の中にありながら小さなひとつの商店街のようなコミュニティを形成していくことを掲げている。
本稿執筆現在、8月5日(土)にオープンするカフェと「LOCUL」のインテリアデザインとディレクションを手がけたDDAA inc.(以下:DDAA)を含め15のテナントが「LOCUL」内に出店。
都内を中心にクリエイティブオフィスの企画・運営を手がける「リアルゲイト」がトータルプロディース・フロアマネジマントを行っている。
オープン前からOMOHARAREALが特に注目していたのは、DDAA・元木大輔さんが「LOCUL」のインテリアを担当していること。「Maruhiro」や「Hender Scheme」のショップ、近年では「everyone」とのコラボレーションなど気鋭ブランドのインテリアを手がけてきたインテリアデザイナーだ。
一体どのような空間になっているのか楽しみに5Fに上がると、抜いた天井にグリッド状に組まれたパイプと直線上に蛍光灯が走る、ソリッドな光景が目に飛び込んできた。
今までのフロアからすっかり垢抜けて大人っぽく変貌していた。
DDAAと様々なアーティストがコラボして制作された什器が、無機質な空間にポップなスパイスを加えている。
商品を置くこれらの什器は日割りでレンタルでき、一律のサブスク料金+レンタルする什器の個数×日数で出店料が決まるという。
特徴的なかたちのテーブルは、どれもちょうど「1平米(1㎡)」になるよう設計されていたり、棚や箱を組み合わせて使うことが可能。つまり「LOCUL」への出店が、ミニマムで箱1個、または1平米〜できるというわけ。
ちなみに立地を考えたらかなり割安に感じる値段設定。出店のハードルは低く、クオリティは高くが「Lo-Fi Culture Collective」を標榜する「LOCUL」らしさと言えるだろう。
オフィススペースもさっそく稼働を始めていた。
ベンチタイプのミーティングブースやリモートミーティングも可能な個室ブースも完備。
DDAAもアトリエ兼ギャラリーとして入居し、制作した作品がその場で見ることができるのも目玉のひとつと言えるだろう。
DDAAのアトリエ内には「LOCUL」の設計模型が。
今まで東急プラザ内で意識したことはなかったが、外の景色が印象的に視界に入ってくる。リニューアル以前と比べると、風通しと見通しが良くなった上、シェアオフィススペースでは今まで使われていなかった外スペースをバルコニーとして利用するなど、空間の使い方にも工夫がなされているのが分かる。
エスカレーターから5Fを目指すと、おそらく最初に目に入るのは花瓶に活けられた花々。これは中目黒のフラワーデザインスタジオ「MUNSELL」が手がけるフラワーショップ「PLAY」だ。
「MUNSELL」はオーダーメイドのみだが、「PLAY」は手軽に一輪から買えるフラワーショップ。ブーケもアレンジメントもオーダーして購入が可能となっている。
音楽レーベルとして東京の他、盛岡と京都に拠点を置き、ファッションやカルチャーを横断してコミュニティを創生、繋いできたローカルのプロ「JAZZY SPORT」。都内では学芸大学(目黒区・五本木)・下北沢に続き満を持して「JAZZY SPORT OMOTESANDO」としてオープンしたのも大きなトピックだ。
人気のレーベルオリジナルTシャツやスモールグッズ、レコードがずらりと並ぶ。ついつい欲しくなってしまうものばかり。「OMOTESANDO」のロゴが入るのは「LOCUL」限定のデザインだ。地方のセンスの良いプロダクトや作品、アーティストを表参道で紹介し、ローカルとローカルを繋げる試みも行っていくとのこと。
夕方からは「JAZZY SPORT」ブースでMitsu The BeatsさんのDJも行われた。
「関西の『東京ばな奈』を目指したい」と話してくれた、関西から初出店の「TASHIMART」さん。グルテンフリーのオリジナルガトーショコラ「EARLY GATEAU」と関連グッズを販売している。
まもなくオープンするオンラインサイトに先駆けて「LOCUL」で「EARLY GATEAU」を購入可能。3個入りと9個入りで「サンキュー」だったり、そもそもの名前の由来やワニをなぜモチーフにしているかといったサイドストーリーも面白い。ぜひ立ち寄って話を聞いてみてほしい。
「長屋/NAGAYA」はファッション業界に身を置く、長屋なぎささんが立ち上げた麹、甘酒/麹調味料ブランドだ。日本の伝統的な食文化の中で、長屋さんが本当に良いと思うもの、おいしいものにスポットを当て販売している。「LOCUL」に集まるさまざまな人に、良いものを日常に取り入れる提案をしながら、間口を広げたいと出店の意欲を語ってくれた。
長屋さんはさっそく向かいの「PLAY」に花瓶を持って、花を仕立ててもらったという。そんな出店者同士のやりとりにも、商店街感があふれている。
各地で映画祭などの開催・立ち上げをして地域と文化を結びつける「Cinema Caravan」主賓の志津野雷氏によるフォトギャラリー。
その隣には逗子の海辺にあるシネマカフェ「Cinema Amigo」のミニシアターも併設。初日はシアターイベントも行われた。今後も定期的に上映を行う「CINEMA DAY」があるらしい。
あらゆるジャンルの垣根が取り払われ、シームレスに隣り合う感性に自然と触れることができるのが「LOCUL」の特徴だ。例えばクリエイティブチーム「inew」によるアートギャラリーは、古着好きが偶然、素敵なアートに巡り会うことができるかもしれない可能性を秘めている。
別々のお店が点在しているのではなく、境界すらも分からないほどに交わり、さらに出店者たちからも空間自体を場を盛り上げようという気概が伝わってきた。
「何か買わないと」とか、「店員さんから声をかけられるかも」というプレッシャーは皆無。自然と興味を示したものを手に取りたくなったり目に入ったり。そんな空間作りがなされているような、確かに既存のテナントとは異なる印象だ。自由に過ごすことのできる居心地の良さも魅力だと思った。
オープン初日はフードマーケットイベントとして6F・ルーフトップテラスの「おもはらの森」にも出店ブースを設置。角打ちバー「NOMURA SHOTEN」がクラフトビールを中心としたドリンクを販売したり、他にも、道玄坂の熟成焼売とウーロン茶ハイ専門店「KAMERA」、ベトナム料理店「An-Di」、ビーガン料理専門店「FALAFEL BROTHERS」が出店していた。
初日ということで、観光客なども物珍しそうに空間に腰を落ち着けて、出店者とコミュニケーションしたりと賑わいを見せていた「LOCUL」。これからカフェ&ダイナーもスタートし、より立ち寄りやすくなるだろう。
表参道・原宿に誕生した空中商店街。感性と文化が交わり、オモハラの新たなサードプレイスとして良い循環を生み出すことができるか注目だ。
東急プラザ表参道原宿は、2024年、神宮前交差点の向かいに開業する「ハラカド」とともに「オモカド」と名称が改まる。原宿が大きく変化するタイミングの中、街を訪れる人が「LOCUL」を通じ、そこにあるモノ・ヒト・コトと出会うことによって、新しい時代の表参道・原宿ならではの体験を生み出していくことを期待したい。
■「LOCUL」
場所:東急プラザ表参道原宿 5F
住所:東京都渋谷区神宮前4丁目30−3
営業時間:11:00〜20:00
定休日:不定休(東急プラザ表参道原宿)
Instagram:locul_omohara
入居店舗・企業:(順不同)
DDAA Inc.(アトリエ・ギャラリー)
PLAY(フラワーショップ)
JAZZY SPORT OMOTESANDO(ミュージック&カルチャー)
長屋/NAGAYA(麹調味料・甘酒)
TASHIMART(スイーツ・グッズ)
EXplanning&company(カフェ・フード)
キュリアスデザイン(アパレル)
muddler(ヴィンテージアパレル)
WRECKER & DONUTS(ヴィンテージ雑貨)
CINEMA CARAVAN(フォトギャラリー)
Cinema Amigo(ミニシアター)
PERMANENTE TOKYO(コンセプトストア)
AT.1011(グリーン・プランツ)
inew(アートギャラリー)
JUJUBODY(ウェルネス)
Text & Photo:Tomohisa Mochizuki