「I’m donut ? (アイムドーナツ ?)」、「AMAM DACOTAN(アマムダコタン)」のオーナーシェフが語る、表参道・原宿と行列の理由
オモハラに店を開いた理由「すぐ空いている物件を見てしまう」
表参道交差点、山陽堂書店を左に曲がって青山通りを真っ直ぐ歩いていくと「アイムドーナツ ? 表参道」がある。そこにたどり着くまでに行列を発見するはずなので、見過ごしてしまうことはまずないだろう。取材日も多くの人が「アイムドーナツ ?」を求め、青山通り沿いに列を成していた。
2023年10月にオープンしたばかりの「アイムドーナツ ? 表参道店」。ピンク色がテーマカラーとなっており、初となる一棟型の店舗。
パステルピンクの外壁が目を引くアイコニックなオープンキッチンの裏から、平子シェフの待つ4Fに通してもらう。調理場のある2Fから上はスタッフのバックルームになっていて、4Fはミーティングや取材などに使われることが多いという。平子シェフによってセレクトされたインテリア、飾られたアートたちは「アイムドーナツ ?」の世界観を体現。その感性を語るに、あまりにも雄弁だ。
青山通りを窓から見下ろす部屋の中央。シェフと知らなければ、そうは思えないスタイリッシュな装いで座る平子シェフがいた。鮮やかなブルーの差し色が効いた身幅の大きいコートが、なんだか魔法使いを思わせる。
開口一番に渋谷、とりわけ表参道・原宿の街に出店を集中させている理由を問いてみた。
「いちばんの理由は、表参道・原宿がよく行く街で、好きだったからですね。20代前半の頃、それこそ18、19年近く前になるのかな。このエリアの飲食店で働いていたから街を良く歩いていたし、馴染みがあるんですよ」
予想はしていたが、やはりだ。しかし、ただ馴染みがあって好きなだけではない。聞けば、アマムダコタンを表参道に開店する際、立地という点に関してかなりこだわったそう。
「アマムダコタンではドーナツ*だけではなく、いろいろなパンを販売しています。だからとにかくいろいろな人に来てもらえる立地が良かった。もうひとつ、ドーナツに関しては鮮度が命。いい状態でどんどん売らないといけない。だからとにかく立地が良いところで探していて、その条件を満たす候補に表参道が入っていたんです。」
*アマムダコタン表参道でも展開メニューのひとつとしてドーナツの販売を行っている。
そんな中で出会った物件が現在の「アマムダコタン 表参道」がある場所だった。開店をきっかけに平子シェフの生活圏、行動範囲は再び表参道・原宿の街にシフトしていったそうだ。
「歩いていると、すぐ空いている物件を見てしまうんですよ。そうしているうちに周辺でも良い物件に出会うことが多くなり、現在に至ります」
街を歩きつつ、物件を常に意識している平子シェフが、良いと思う物件とはどんなものなのか。
「物件の面構え、空気感、周辺の雰囲気、自分の直感でピンと来るもの。最低限の判断条件はありますけどね。例えば(店同士が)近すぎないこと。皆さん、近いと思われてるかもしれないですけど(笑)。この街に店を出したいから探しに行く。ということはしません。本当にタイミングと出会いですね」
運命的な物件の出会いから、東京への出店を決めた平子シェフ。表参道・原宿の街ではとくに物件との出会いに恵まれたようだ。実際に出店してみて、その手応えをどう感じているのか?
「側からみると余裕そうに見えるかもしれないけれど、毎日必死というのが本当のところです。クオリティ、品質、ブランディング、攻めながらも守っていかなきゃいけないことがたくさんありますから。ありがたいことに連日お客さんに並んでいただいていることには感謝しています」
行列もまた、「アマムダコタン 表参道」と「アイムドーナツ ?」の代名詞となっている。行列を呼ぶ“生ドーナツ”のおいしさについて話を聞いてみよう。
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