ユニークな名前の由来
つい口にしたくなる“パロパロ”という名前。じつはこの名前にまつわる遊び心あふれるストーリーも店舗の魅力に一役買っている。
パリやニューヨーク、おしゃれな街の一角にありそうな雰囲気なのに、店名だけどこかアジアを感じさせる。実際にはタガログ語(フィリピンの公用語)で「蝶々(ちょうちょ)」を意味する言葉なのだ。

カフェパロパロの内照式看板を取り付け時の写真。店長の宮崎さんの表情から達成感が見てとれる
軽やかでいい名前、と思う一方、実はスラング(現地で使われる俗語)ではちょっと違った意味を持つ。フィリピンのクラブなどでは「蝶々のようにあちこちの花に手を出す」ことから転じて「浮気者」を指す言葉なんだとか。
夜の街では店の客やボーイフレンドに「パロパロ(浮気)しないでね」なんて釘を差すように使われるそうだ。なぜ夜のお店にふさわしそうな色っぽい名前にしたのか。それには理由がある。

メンバー揃ってのミーティング風景
響きが良いのはもちろんそうだが、ディレクションやPRを務めるチームメンバーの父親が、かつてこの外苑西通り沿い(西麻布周辺)で「パロパロ」という名前のバーを営業していたのだという。メンバーも父親のそんな過去を、お店作りに携わってから知ったのだそうだ。
全くの偶然であるが、自分の父親が同じような場所で店をやっていたつながりが面白いと、最終的にはパロパロを採用した。
一旦は別の名前で進んでいたそうだが、カフェがエリアに数多くある中で、花の蜜を吸うように、この店に立ち寄ってほしいという思いを込め、ユニークな店名が使われることとなった。

着工前のパロパロと特注の設えによる一枚板の棚が入り、完成直近の様子
ちなみに、当初は「Ropes(ロープス)」という、色々な縁のつながりを結ぶという意味をかけた名前で出店を進めていたそうだ。
Ropesあらため、café paro paroが訪れる人の縁を繋ぎ、街の社交場として語り継がれるカフェになるといいなと、そのポテンシャルに期待している。

エスプレッソマシンも入り、パロパロが本格始動 ユニークな店名が入ったカップは店舗で販売もしている
仲間たちと力を合わせての過酷ながらも楽しげな出店準備期間、そして名前にまつわる魅力的なエピソード。順風満帆な素敵要素が揃いまくっているパロパロだが、当然ながら失敗もあるのが世の常というもの。最後にそんな愛嬌のある失敗談を紹介したい。
12,000キロを旅したランプ
パロパロは店内のインテリアも素敵。一点一点、自分たちでヴィンテージ・アンティークのインテリアショップを巡って買い集めてきたものだ。

棚を吟味する塩田さん
中でも注目してほしいのが、店の中央に提げられた照明。あまり見たことのない形で、ランプ部分には蝶のような画が描かれている。まさにパロパロにふさわしいランプ!ということで、見つけた瞬間に即座に買ったお気に入りの逸品。
なんとメンバーが設置中、ふいに落として割ってしまったそうだ。それも修復が不可能なほど、粉々に。ヴィンテージのモノだけに代替えも効かず、メンバーは一様に肩を落とした。
もちろん故意ではないのでまさに悲劇としか言いようがない。

寸法もバッチリで購入、いざ設置。というところで起きた悲劇。木端微塵である
しかし、メンバーは諦めきれず、世界中のインテリアサイト、オークションサイトを探し回って、ヨーロッパはチェコにて全く同じ現物を発見!しかし、発送はチェコ国内に限るということだった。
諦めきれない!と、出品者に事情を説明したが断固として国外発送はできないの一点張りだったそうだ。

メールのやりとりの画面。複雑なチェコ語にもめげず交渉したという
Instagramで助けを求めたところ、なんと、ちょうどチェコ語ができる友人がチェコを旅行で訪れており、代わりにランプを受け取って日本まで持ってきてくれたそうだ。
もはや奇跡とも言える、チェコ〜東京間12,000キロに及ぶ縁の旅を経てパロパロへとやってきた希少なランプ。店舗を訪れた際はそんなストーリーを思い浮かべながら眺めてみてほしい。

チェコから東京まで12,000キロ、海を越えて渡ってきたランプが無事設置 店内を明るく照らす
このように、パロパロは、誰か1人が作り上げたお店ではなく、さまざまな人たちの縁が巡り、力を合わせて作ったお店なのだ。そんな裏話を聞いて、パロパロを好きにならずにいられるだろうか?
取材の日は連休明けド平日、午前11時。にも関わらず、満席状態である。海外からのカップル客、insta用に撮影をしている女子2人組、カフェ好きそうなカメラを携えたカップルが店内だけでなく軒先で写真を撮りあっていたりと賑わう。

小1時間、撮影のために客足が落ち着くのを待てど、次々にお客さんが入ってくる。ここに至るまでのストーリーを聞くまでは「すごい人気だなー」と感心するだけだったが、さまざまな人の手と縁によって作り上げたエピソードを知ると、その賑わいを心から喜び、応援したい気持ちになった。
もちろん世界観や雰囲気、提供されるドリンクやフードのおいしさも含め、完成度は高い。それだけでも十分満足していただけるお店である。“好き”を集めて、作りたいものを具現化したお店なのだから抜かりはない。今もなお、メンバー各自がそれぞれの腕を振るい、自分たちの自慢のお店を成長させ続けている最中と言えるだろう。
空間と出会って生まれた夢が形となり、その魅力がまたその場所に人を惹きつける。蝶が蜜を見つけるように、黒糖の甘い香りとコーヒーの香りに誘われて、“パロパロ”しに訪れてみてほしい。きっとその心地よさが、気持ちを軽やかにしてくれるはずだ。

■café paro paro
住所:東京都渋谷区神宮前二丁目6-6 秀和外苑レジデンス 104
営業時間:8:00〜19:00
定休日:不定休
Instagram:@cafeparoparo
Text:Tomohisa Mochizuki
Photo:café paro paro/OMOHARAREAL編集部






























