カフェ パロパロができるまで
パロパロは2025年7月にオープンしたばかり。旅先のような心地よい異国感が漂う店内は、その完成度に思わず目を見張る。しかし驚くべきことに、オーナーの塩田大治さんは、最初からお店を開くつもりで物件を探したわけではなかったという。
もともとこの場所には、ハムやソーセージなどを扱うシャルキュトリー店「シャルキュトリ ア トキオ(CHARCUTERIE à Tokyo)」があった。この店は、パロパロのフードメニューも監修する塩田さんと実は縁が深い。

シャルキュトリ ア トキオ当時の看板
塩田さんは渋谷のバーガーショップ「チルマティック(Chillmatic)」のオーナーシェフとしても知られ、過去にはフレンチやビストロでの修行経験を持つ。シャルキュトリ ア トキオは、塩田さんの当時の兄弟子である中山さんが営む店の卸先のひとつだった。

塩田さん(左)と兄弟子の中山さん(右)。中山さんが営むのは横浜市青葉台にある、本格ドイツ製法のハムとソーセージのお店「シュタットシンケン」
中山さんの店にたまたま立ち寄った際、シャルキュトリ ア トキオが閉店することを聞いた。その流れで塩田さんは、中山さんの紹介で不要になった什器を見に行くことに。そこで目にした空間の雰囲気と独特の魅力に、思わず心を奪われてしまったという。

シャルキュトリ ア トキオを訪れた際の一枚。パロパロはここから始まった
1人がその魅力にときめけば、当然その仲間たちも同じときめきを抱き一気に夢が広がるというもの。当初はパリの街並みではお馴染みのブッチャースタイル(塊肉をその場で捌いて売る食肉店)の肉屋がいいんじゃないか、なんて話していたそうだが(似合いすぎる!)、建物の雰囲気も踏まえ、カフェ業態はどうだろう?という構想が浮かんだ。
人手など現実的な問題で一度は断念しそうになったが、そんなタイミングで、沖縄で契約農家とともにサトウキビの栽培から行う黒糖ブランド「Grrrounds(グラウンズ)」の宮崎雄志さんと出会う。Grrroundsは沖縄の文化と歴史に根ざした黒糖を世界に広めることを目指し、宮崎さんも沖縄を拠点に活動していたが、ちょうど東京での販路拡大を考えていた。
こうして、塩田さんのChillmaticチームと宮崎さんを中心としたGrrroundsチームが手を取り合ってタッグを組み、店舗の出店実現へと漕ぎ出した。

paroparoの店長を務め、共同経営者として塩田さんとチームアップするGrrroundsの宮崎さん(左) 「Chillmaric」オーナーシェフ塩田さん(右)
もちろん、急遽浮上した出店計画のため、コストも抑える必要がある。ならば、取る手法は当然D.I.Y.!自分たちでできる部分は自分たちの手で作り上げる。それが、結果的に店舗にとって良い作用を生み出すこととなった。

さっそくD.I.Y.での店作りが始まった。塩田さんと宮崎さんを中心に仲間たちで店を作り上げていった
話を聞いていると、大人たちが子供の様に秘密基地を作る様なワクワクなノリ。そのフットワークの軽さと、実際に実現してしまう行動力こそ、彼らの魅力だと感じた。
思いがけないお店計画のため、何を誰が、どうするかの相談に始まり、みんなが持っているスキルや経験値を集めて詰め込んだのがこのパロパロというわけ。
当時の写真も提供してもらってこの編集後記を書いているが、写真に残されていたのは苦労だけでなく、なんかめちゃくちゃ楽しそうな彼らの姿だ。

メニュー開発から壁の塗装まで、できるところは全て仲間たちの手で作り上げた。楽しみながらもやる時はガッツリやるスタイル
仲間たちと秘密基地を作る感覚から、学園祭の出し物を決めて手作りしていくかのようなプロセスを経て、それぞれのスキルをまとめ、店を作り上げていく。
気心の知れた仲間だからこそ、一緒に店舗を作る楽しさも加わって、メンバーのお店への愛情は限りなく高まり、チームとしての一体感や結束もより強固になったのではないだろうか。

現場で疲れ果てる様子。その過酷さを物語る
苦労の甲斐あって、およそ1ヶ月半の準備・工事を経て、2025年7月12日にパロパロは無事オープンを迎えた。ヘリンボーンの床材はかつてのシャルキュトリ ア トキオのときのまま。磨きをかけて、空間が元から持っていた良い雰囲気を携えて、足元を支えている。

さらに一度聞いたら忘れられないこの“パロパロ”という名前にも、可愛い響きだけではない魅力あるストーリーがある。
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