in the houseが追求する、ビールをおいしく楽しむ場所づくり
神宮前3丁目にあるビアバー、in the house(イン ザ ハウス・ENJOY BEER)。昼から夜まで、ビール好きが集う原宿ローカルに根付いた店である。そこのキーマンであり名物とも言える人が奥ノ谷圭祐さんだ。メディアの取材はあまり受けないと巷の噂では聞いていたので、実はおっかない人なのかと取材前は恐縮していた。
ローカル以外お断りでそれだけ常連の多い、入りにくいお店なのでは。なんて、勝手に想像していたが結論から言えばそれは大きな勘違い。むしろその逆の店だった。記事で紹介しきれなかった魅力を深掘りしてみよう。
■in the house(ENJOY BEER)の深掘りポイント
・名物“元”短パン社長、奥ノ谷圭祐さん
in the houseの“元”短パン社長・奥ノ谷圭祐さんって何者?
・年末年始も休まず営業!?その理由
「年中無休」ストロングスタイル 全てはビール好きな人たちのために
・ビールへのこだわりと愛情
開栓日まで記載する!ビールが好きになってしまうキュレーション
・「ENJOY BEER」、コレに尽きる
in the houseの名物“元”短パン社長・奥ノ谷圭祐さんって何者?
奥ノ谷圭祐さん。一見すると見た目派手なイカついおじさま。だけどとっても優しい。
さて、意を決して向かったin the houseの取材。スケジュールの調整で、こちらから取材時期をズラしてもらった罪悪感もあってビビっていたのだが、いざ伺ってみると「おー!こんにちは!よろしくねー!」と超ウェルカム。カジュアルでフレンドリー、そして、終始軽やかな語り口でコミュニケーションを取ってくれて、いつの間にやら緊張は解けていた。
この奥ノ谷さんという方、一体何者なのか?かつてはアパレル業界に従事し、短パンファッションの隆盛とともに1年中短パンを履いて過ごしていたことから“短パン社長”として注目された人である。
しかし、クラフトビールの出会いからビールが好きで好きでたまらなくなり、なんと自らの会社で手がけていた全ての事業を一旦ストップ。そしてビール屋を原宿で開店させたという、ロマンあふれる人なのだ。
“元”短パン社長ということで、今は自分の名前で表に立って活動しているがトレードマークの短パンは健在。似合う。
アパレル出身だけに店で扱うグッズもこだわっている。ビール仲間であるビール大好き双子のラッパー“上鈴木兄弟”による「#着るBEER」こと、アパレルブランド「BEER BEER」も取り扱う。ビール好きならもちろん、ビール好きじゃなくてもつい欲しくなってしまうデザイン。
「年中無休」ストロングスタイル 全てはビール好きな人たちのために
in the houseの相棒である、平山晋さんともアパレル時代に出会って意気投合した仲。二人は文字通り年中無休で、全国各地のブルワリーへの出張以外は店を開けているという。それこそ、年末年始も店を開けていたというから驚きだ。
「好きでやっているし、原宿で昼から夜までいつでも開いてて、飲めるところって少ないじゃん」
と、奥ノ谷さんは当然のように言うが、好きだからといって簡単にできることではない。しかし、奥ノ谷さんはこの店を目指して来てくれた人が、お店がやっていなくてガッカリされる方が辛いとのこと。それほどにビールの持つ楽しさとおいしさを伝えたいというin the houseのスタンスが伝わってくる。
そのスタンスは取材に対する意識にも表れていた。取材の申し入れに対し「ローカルのメディアだから」と、ちゃんと媒体の特性を知った上で承諾してくれたのだという。
そもそも噂で聞いていた、「メディアからの取材を一切受けない」というのは正しくない。奥ノ谷さんは“短パン社長”としてWebだけではなくテレビにも出演するなどしていたため、メディアの影響力、その良し悪しも熟知している。だからこそ、とりわけマスに向けた媒体への出演には慎重なのだ。
「人がたくさん来すぎちゃって、本当に来たい人が来れなくなっちゃったらいやじゃない?」
奥ノ谷さんはあくまでオーガニックにその場所へやってきた人を大切にしたい、という思いがその言葉から伝わってきた。一方で、常連ばかりの“村”にしたくないという思いも。一見さんと常連がフラットに交われる店作りを心掛けているそうだ。
取材中、初めて来るインバウンドの人たちと、常連らしき人が同じ空間でビール片手にラップトップを開いて作業していた。これがこのお店の日常なんだろう。見ている我々も、なんて心地良い光景なのだろうと感じた。
開栓日まで記載する!ビールが好きになってしまうキュレーション
空間はもちろんだけれど、肝心のビールにも余念はない。全国各地のブルワリーへ直接赴いて仕入れてきた8種類のタップを提供し、足を運ぶたびにラインナップが変わるのもin the houseの醍醐味のひとつ。いちばんの特徴は開栓日がメニューに記載されていること。鮮度に自信がなければできない表記だ。
取材当時(9月初旬)のメニュー。開栓日はいずれも新しく、直感的にフレッシュさを感じられる
「ブルワリーの人たちにとってはプレッシャーだと言われるけどね(笑)」と、奥ノ谷さんは笑うが、それだけ鮮度が高いうちに生樽を売り切ってしまう自信と人気の裏付けでもある。生産者たちの思いとともに新鮮なビールをいちばんおいしい状態で届けたい。そんな並々ならぬビール、ひいてはブルワリーへの愛を感じる。
クラフトビールというとアルコール度数が強めのイメージがあるが、in the houseでは比較的アルコール分低めのビールも多数用意されているのも嬉しい。お酒がそんなに強くない人や、クラフトビールに馴染みがない人にも嗜んでもらいたいという配慮がそこにある。
提供するビールもなみなみとグラスギリギリまで注ぐのがこだわり。あふれんばかりのビール愛はここにも
おつまみも、友人たちが経営する会社と取引して仕入れを行う。ビールを引き立てるような相性抜群のフードを厳選し、提供してくれる。このようにビールをとことんまで楽しむ工夫や気配りが細やかに張り巡らされている。
看板に掲げた「ENJOY BEER」は伊達じゃない
一見さんも、常連も、誰もが居心地良く快適な空間でビールをおいしく楽しむ。in the houseの真髄はここにあるのだと思った。
奥ノ谷さんと相棒の平山さんはそのための環境づくりを徹底して追求し、お店を作り上げているのだ。
取材の後半で、グッズを物色する編集部員と奧ノ谷さん。
思えば、外の看板には店名ではなく「ENJOY BEER」と一言掲げられているだけ。しかし、それが全てを物語っていることに気がつくと、合点がいく。
ビールが好きすぎるばかりに、いかにおいしく、かつビールをとことん楽しむかを考え抜いた結果がin the houseに流れる居心地良い雰囲気を創っているのだろう。そしてビールを切り口に、その輪を広めていくハブとしても自然と機能していく。
「真心込めて営業中」。飲食店の店先でそんな看板を目にすることは多いが、in the houseにとっては「ENJOY BEER」こそ全てなのである。見た目は粋でいなせ、派手な伊達男。しかし、看板に掲げられた文字は伊達ではない。
魅力的な人が集まり、年中ほぼ営業。こだわりのビールとおいしいおつまみ、クールなグッズも豊富に取り揃える。そして一見さんも常連さんもウェルカムな親しみやすいスタンス。
最後の一滴までビールを楽しむためのお膳立てが徹底してされている上、さらにその魅力を奥ノ谷さんと平山さんがガイダンスしてくれる。そりゃここで飲むビールを好きになっちゃうよなあ。
カウンターを見上げれば、おそらく常連であろう交流のあるブランドのプロダクトが並ぶ。コミュニティから信頼されている証
サッと一杯飲みに立ち寄るのも良し、どっぷりと時間をかけて飲み明かすも良し。おいしいビールは楽しいし、ビールがおいしければ、楽しい。それこそがin the houseの提供する「ENJOY BEER」なホスピタリティ。
ここまで読んで、なんだか無性にビールが飲みたくなったそこのあなた。そう思ったらもうin the houseの虜になる一歩手前。ぜひ原宿の街角に乾杯しに繰り出して、グラスからあふれんばかりのビール愛を感じてみてほしい。
■in the house(イン ザ ハウス・ENJOY BEER )
住所:東京都東京都渋谷区神宮前3丁目31−20
営業時間:12:00-22:30
定休日 なし
Instagram:@inthehouse_enjoybeer
Text:Tomohisa Mochizuki
Photo:OMOHARAREAL編集部