ちょっと寄り道&お祭り感 大人の道草には価値がある
情報の多さとして、間違いなくレセプションに足を運んで得られるものは多い。それは本来の展示や商品についてを知ることはもとより、その周りに集積されているいわゆる“寄り道”的な情報にも価値がある。
LOVUS galleryで行われたアーティスト兼アニメーター、ジェロン・ブラクストン(Jeron Braxton)個展「DOPAMINE」 (2024)。レセプションでは故・Virgil Abloh手がけるLouis Vuittonと仕事をともにした経歴もある本人を囲み、和やかな雰囲気。
例えば、フードケータリングから行きたかったお店、知らなかったお店について知ることができるし、そこで会う人から違う場所、違うブランドの情報を得られることもある。ゲスト側にとっては、集まる人との情報交換やホスト側との関係値を構築する貴重な機会。レセプションを介すことで会費制の名刺交換会や異業種交流会とは違う、肩の力を抜いたコミュニケーションができるのも魅力だ。
システマチックでない分、自分で動かなきゃ何にも起きないけれど一夜限りのお祭り的なイベント性、前夜祭的な特殊な温度感が背中を押してくれるはず。
さらにそこには、共通目的や好みが近しい人たちが集まっている。ポジティブなコミュニケーションが取りやすい要因だ。 楽しむことを前提としていると、人ってモチベーションが上がるもの。しばしば、ひとつの会場で話し込んでしまうこともある。
コロナ禍を経て、人と人とが対面して交流することの重要性を再確認した今。レセプションには以前にも増して活気が満ち溢れている気がする。
クリエイティブかつ、トレンドを纏い、ファッショナブルで、先進的でアーティスティック。さまざまな業種や人が集まり、マーブル模様を描く街だからこそ、レセプションを開くことにさらなる価値が高まる。そんなエリアの象徴的な要素をグッとコンパクトに凝縮したレセプションが、同時多発的に行われているというのは、他の街ではなかなか類を見ないのではないか。
招待事前登録制で行われたプラダ青山店の田名網敬一の個展「PARAVENTI: KEIICHI TANAAMI」(2023)のレセプション。青山の街の眺望も素晴らしい、普段とは違うパーティ仕様のフロアにて。
そして大概のレセプションは、18時、19時頃からスタートし大体が21時、22時までには終わる。どんなに遅くとも終電までに終了するレセプションが多く、比較的行きやすい時間に設定されているのが特徴。始発までのオールナイトイベントほどハードルが高くないというのも、多様な人たちが集まる要因だろう。
近隣に文教地区があることで夜間、音楽イベントを行えるエリアや店舗の営業形態は限られてしまっている。そういった制限がある反面、深くない時間に商業地区で行われるレセプションはパフォーマンスを発揮する。そのためレセプションがエリアで集中して行われているケースが多く、見つけたら入れるかどうか聞いて立ち寄ってみれば何か新しい出会いがあるかもしれない。
NOAH × Stacks Bookstore オープニングレセプション(2023)ちなみに筆者の原宿最初のレセプション体験は2017年「NOAH CLUBHOUSE」グランドオープンのレセプションだった。忘れられない思い出。
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