“見本市”の街で繰り広げられる、ボーダーレスな社交場
こういったレセプションパーティが行われる会場はたいていどこも盛り上がっている。当然といえば当然で、レセプション自体がそのブランドや、お店の威信をかけてアクセルを踏みまくっている状態。
少々大袈裟かもしれないが、人を呼び、お披露目とおもてなしの場でスベってしまっては沽券(こけん)にかかわることになる。したがってそこには珠玉のコンテンツが用意され、お祭りのように退屈することはない。
南青山5丁目「ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン フラッグシップストア」リニューアルのレセプションパーティでは、スタッフによる万全の体制で看板商品のフラワーボックスの制作体験ができるワークショップが展開されていた。(2023)
そしてPR、アパレル、キュレーター、作家、クリエイティブにまつわる、感度の高いさまざまな人たちが表参道・原宿の街の中からはもちろん、外からも大勢が集まってくる。
レセプションにて、インフルエンサーがその場でアップサイクル体験をするARC'TERYXのワークショップは大盛況(「ARC’TERYX MUSEUM」2024)
表参道・原宿は最先端のショップ、ブランドが連なるエリアでもあるだけに、普段表参道・原宿にいない、他のエリアからも人が大勢集まるため、他エリアの人たちと交流できる希少な機会とも個人的には捉えている。
ミヤシタパーク・SAI「BOLMETEUS(ボルメテウス)」(2024)
さて、ここまで書いて、レセプションなんてインフルエンサー、メディア、関係者しか行けないんでしょ?と思う人が多いかもしれない。確かに招待制の、クローズドなレセプションもあるのも事実。お目当てのレセプションにどうしても行きたいなら、知恵を絞ったりコネを作ったりするしかない。
が、しかし、ここは一流のクリエイティブな感性が集まる“見本市”の街。意外に思うかもしれないが誰にでも門戸を開いているブランドや店舗、ギャラリーは多い。レセプションの情報をキャッチできるか、フィジカルでその場に行けるか、といった点である程度選別されているとも言えるが、その気取らなさに逆にゆとりを感じて“らしい”というか、表参道・原宿の企業、ブランド、ギャラリーの懐の深さは一味違う。
2023年までの10年間、表参道に店を構えていたBOOKMARCは体感的にはほぼ毎週と言っていいほど、レセプションを行なっていた。しかもトークイベントなど限定的な催し以外はそのほとんどがエントランスフリー。クロージングパーティにはたくさんの人が詰めかけた。(2023)
そしてレセプションはただ集まってどんちゃんやっているだけではなく、ホストとゲスト、あるいはゲスト同士の交流の場として機能している側面がある。
ホスト側にとってはおもてなしの場になるため、パーティ形式でケータリングが振る舞われたり、ドリンクやフードが大抵用意されていて、ありがたいことに無料で配布してくれることが多い。これもひとつのコミュニケーションの潤滑油というわけ。
ギャラリーなら作品やアーティストを、ショップやブランドであれば新しいプロダクト、プロジェクト、ブランディングをより深く伝えた上で、SNSなどでの情報発信をしてもらうことを目的のひとつに、双方向のコミュニケーションの場を創造しているのだ。
表参道・原宿にあるビームス系列の店舗でおそらくいちばんレセプションを行っていると思われるのはビームスT 原宿。アーティストを招聘してのアートショーが頻繁に開催されており、レセプション時は随一の盛り上がりを見せる。グループ展「CANDY CRUSH」(2024)
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