
【カフェラテを巡る旅vol.1】デザインもコーヒーも本業。デザイン事務所の硬派なカフェラテ
カフェラテは、ブラックが苦手な人のためだけに存在するわけではない。こだわりを持つコーヒー店には、むしろブラック愛好者にこそ飲んでみてほしいカフェラテが存在する。良きカフェラテに出会えば、きっと普段とは異なる角度からコーヒーを味わう楽しみに気付いてもらえるだろう。ということで、コーヒー激戦区・オモハラで、日本屈指のカフェラテを探し出してご紹介しようという連載がこの「カフェラテを巡る旅」である。
Vol.1:CHOP COFFEE
朝、小さなオフィスでまずは一杯のコーヒーを。眠気覚ましのため、モチベーションを上げるため、リラックスするため…そのひとときは多様な意味を持っている。メンバーみんなが淹れたてのコーヒーで1日を迎える、表参道のデザイン事務所。彼らのコーヒー好きが高じて始まったのが、今や客足が絶えることのない人気店「CHOP COFFEE OMOTESANDO」だ。カフェに改築した事務所の2階、オフィスにそぐわぬ硬派なギーセンの焙煎機が、小さなスペースで存在を主張している。
社長自らが焙煎するコーヒーは、常時4~5種類。ハウスブレンドからシングルオリジン、デカフェまで、研究の賜物というべき豆がカウンターに並ぶ。ドリップには通常よりもたっぷりとコーヒー豆を使用し、注ぐお湯は1滴単位でじっくり蒸らす…。可動式のチェアやミルク缶に書いたメニュー、壁にあしらわれたたさりげないロゴマーク。目に映るものはたしかにデザイン事務所のそれだが、注文してドリップを始めた時点で、この会社はデザインとコーヒーどちらが本業なのかという疑問がよぎる。そしてコーヒーを飲むと、どちらも本業だとわかる。この本気の味を求めて、コーヒーショップが立ち並ぶ大通りから離れたこの店に、毎日たくさんの人が通うのだ。
好みや気分に合わせて選んだ豆で、それはそれは丁寧に淹れられたドリップコーヒー。だが、たまには、カフェラテという選択はいかがだろうか。
浅煎りが主流の昨今、波に流されず深煎りに重きを置いている同店のコーヒーは、ミルクに合うのだ。ラテ用の豆には試行錯誤の末、ハウスブレンドにインドネシアを配合したそうだ。ミルクはあくまでコーヒーの引き立て役だといわんばかりに、インドネシアの持つ香りと深みのフォルムがくっきりと残る。そして酸味がなく、あまりの飲みやすさに驚くはずだ。
「今日はもうコーヒーを何杯も飲んでしまった」という日でも、デカフェのラテがある。デカフェの豆はブラジルを使用し、よりさっぱりと軽やかな口当たりだ。個人的に、仕事の合間の気分転換には、季節問わずアイスのラテがいい。炭酸飲料の刺激よりも、淹れたてのエスプレッソの苦味の方が頭の中まですっきりするような気がする。もちろんデカフェなのでカフェインの効果ではない。
店の一部は吹き抜けになっていて、背の高い本棚が事務所から店まで繋がっている。蔵書のページをめくるとコーヒーの匂いがするのだろうか、などと思い馳せながらいただく、文化的なカフェラテ。階下ではコーヒー好きのクリエイター達が仕事をしているはずだ。
Text:Mizuki Omotani