Matt Black主催!巨匠・白髪一雄からグローバルな気鋭作家による“自由”を感じるグループ展をチェック
神宮前5丁目の「Gallery Common(ギャラリー・コモン)」でNYを拠点とするキュレーター、Matt Black(マット・ブラック)主催の抽象絵画をテーマとしたグループ展「REFLECTIONS : PERFORMANCE」が開催中。
“抽象画のグループ展”と聞くと、熱心なアートファン以外はなんだか小難しい上にお堅い感じがして近寄りがたい。そんな風に思っている人は多いかもしれない。しかし、実際は抽象画はもっとも自由に観られるアート作品とも言えるのだ。実際に足を運んだ「REFLECTIONS : PERFORMANCE」をレポートしたい!

プロンプトでは出力不可!12人の抽象表現が街を歩くような「自由」をもたらす鑑賞体験

本展の核となるのは、ギャラリー中心に展示された戦後日本を代表する抽象画家・白髪一雄の存在である。まず、NYのキュレーターであるMatt Blackが白髪一雄にフォーカスするというのも面白い視点だ。
1954年に結成された前衛アーティスト集団「具体美術協会」の中心メンバーだった白髪は、美術の常識を大きく覆した。 「精神の自由が現実の中に具体的なかたちとして現れること」という理念のもと、天井から吊るしたロープにぶら下がり、足で直接絵の具を塗り広げた。
全身を使ったその独自技法は、キャンバスに圧倒的な身体性を焼き付けている。 生のエネルギーがほとばしる痕跡を目の当たりにすると、理屈抜きで心が熱く揺さぶられるはず。
中央のウォールに展示されているのが白髪一雄の作品(Kazuo Shiraga Untitled,1961 Oil on canvas 65.2 × 91cm)。作品の持つエネルギーと筆致が凄まじかった。
会場には、そんな白髪の身体的な実践に呼応する11名の現代アーティストの作品がずらりと並ぶ。 それぞれの文化背景や経験が反映された表現は、ひとくちに“抽象画”と括ってはいるが驚くほどバラエティに富んでいる。
例えば、Commonで行われた数々の個展でもお馴染みの作家・Ichi Tashiro(イチ・タシロ)さんの作品は反復される切断や燃焼という行為を経て制作されたもの。エッジィな疾走感もある一方で旅の僧侶が無心で木彫仏を彫るような瞑想・禅に通ずる精神性と静謐さを感じる。

写真中央:Ichi Tashiro (Untitled,2025 Oil stick,oilpencil,and charring on cotton canvas and wood 162 x 130.3 × 3.5cm)
自然、神話、ストリートカルチャーまでテーマは違えど、彼らに共通しているのは「絵画を行為として捉えようとする衝動」に他ならない。
Gallery Commonに集まった多様な作品群に囲まれていると、ふと気づかされたことがあった。 抽象表現が精神的な自由を身体で表す行為とすると、それはもっとも人間らしい芸術分野なのではないか?ということだ。

今は精緻な写真すらAIが瞬時に出力してしまう時代になった。 けれど、生身の人間がキャンバスと格闘あるいは精神的に融合し、異なる文化や身体性が「個性」として具体化された熱量は、決してプロンプトでは再現できないだろう。
そして、表参道・原宿の街が多様な歴史と文化の上に成り立っているのと同じように、抽象表現も過去の前衛的な挑戦が反復され、現代に至っている。その系譜が体系化されているわけではない。にもかかわらず、その自由な表現がありとあらゆる国で実践され続けているというのが面白いところ。

その模様を見本市さながら、巨匠や新進気鋭の世界的作家作品とともに一挙に味わえるのは、素晴らしい体験であり、表参道・原宿にふさわしいグループ展だ。
身体性を伴ったアート、ということで言うと街の至るところで見かけるグラフィティとも共通点が見出せる。ファッション史に名を残す故ヴァージル・アブロー氏とも協業したことのある参加作家、パブロ・トメク(Pablo Tomek)はまさにグラフィティを背景に持つパリのアーティストだ。
写真左:Pablo Tomek Flower-fire,2026,Acrylic on canvas 140 × 200 × 2.3cm
明確に単語やモチーフが描かれていることもあれば、作者本人にしか読み解けない即興的なものまで多様なグラフィティ。いずれも“自由な精神性”を“自由”に表現しているという点で、抽象画をキャンバスの上のグラフィティとして観てみるというのも楽しみ方のひとつかもしれない。

難しい知識なんて一切いらない。 ただ目の前にある自由なエネルギーを感じるだけで、鑑賞者の心にも自由をもたらしてくれる。そんな展示だ。もし少しでもアートギャラリーや抽象画に敷居の高さを感じているなら、表参道・原宿エリアでの買い物の合間、少しだけ足を伸ばしてGallery Commonを覗いてみてほしい。
■REFLECTIONS : PERFORMANCE
会期: 2026年4月25日(土)〜5月24日(日)
開催場所:Gallery Common
住所:東京都渋谷区神宮前5-39-6 B1F
電話番号:03-6427-3827
開廊時間:12:00-19:00
休廊日:月・火曜日
■参加アーティスト:
白髪一雄 / Aaron Garber-Maikovska / Angel Otero / Anke Weyer / Ichi Tashiro / Ida Ekblad / Janaina Tschäpe / Joe Bradley / José Parlá / Marco Pariani / Pablo Tomek / Spencer Lewis
Text:Tomohisa Mochizuki
Photo:OMOHARAREAL編集部
- マネージャー
- 望月トミー智久
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